リッスン・トゥ・ハー

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刺身の上にタンポポを乗せる仕事

2010-02-24 | リッスン・トゥ・ハー
刺身につきものはタンポポ。それがなければ刺身とは言えない。高級料亭でだされる刺身にも当然ついているはずだ。高級料亭など行ける余地がないため、確認はできていないが、タンポポのない刺身があるわけがない。刺身とタンポポは一見難の関係もないように見えて、密接なつながりを持つ。ここで、タンポポを乗せることによる味覚的な変化について言及する。そうしないと、タカ派のみなさまから結局企業の差し金でしょ、などと心外なことで反論されるのがオチだからだ。タンポポを乗せることにより明らかに味は変化する。好転する。タンポポにより、ただのマグロは高級クロマグロに変化し、ただのイカは高級イカめしに変化する。胴体の中に飯が生み出されるほど変化するのである。手品でもなんでもない事実である。タンポポを刺身に乗せることは現代社会において必須であり、それがなければ刺身などと言う料理はないも同然なのだ。つまり、タンポポを刺身に乗せなければならない。それを誰がするのか。名人である。乗せる名人がすいっと乗せる。簡単に乗せているように見えるが、アバラいってます。あれはアバラいきましたよ、と小鉄さん。名人の熱い息づかいでマグロは暖まり、湯気を上げる。ふわふわ。マグロもまんざらでもなし。

わいせつ

2010-02-24 | リッスン・トゥ・ハー
おっす、オラ、わいせつ。露出の多いお姉さんの女の部分を優しくなでるのが仕事。お姉さんは嫌な顔をするけれど、時々駅員のところに連れて行かれるけれど、全然めげない楽天家。オラに会ったらぜひ女の部分を差し出してくれ。いいかい女の部分だ、おめえが例えば男でも関係ねえ、女の部分を差し出してくれ。誰でも持っている女の部分、その時だけは男の部分をいっこも見せずに。オラがどんな女の部分でもやさしくなでてやるからな。男とか女とか関係ない。誰でも男、女、その二面性があって場面場面によって使い分けている。女だから、男だから、馬鹿じゃないのか、オラは女の部分を愛するだけだ。いたってシンプルに。性別なんてカテゴリー捨てちまえばいいと思う。お前自身、オラ自身、それだけでいいじゃないか。オラは立派な思想家じゃねえし、著名人でもねえし、ただのわいせつだけど、それぐらいはいわせてくれ。みんなもっとその人その人を見ようよ。性別なんて超えてしまおうよ。オラに女の部分を見せておくれよ。痴漢、あかん。

北緯43度42分 東経07度23分(365日空の旅)

2010-02-24 | 若者的字引
(モナコ モンテカルロ会議センターの屋上テラス)

モナコの空を飛んでいる。1月4日。幾何学模様のタイルが全面に貼付けてあり、屋上テラスは奇妙な空間となる。歩いているふたりの男女、半袖の白いティーシャーツと七部丈パンツの女性と、紺のジャケットにチノパンをあわせた男性、ふたりは仲睦まじく赤いタイルから緑、青へ向かって歩いている。君たちはどこにむかっているのだ、そんなにも摘みあがった鮮やかなブロックをあせひとつかかずに、考えられない角度で談笑しながら登り、重力の変化がおこって、自由自在なのかい。迷い込んだら、もう戻ることはできない迷宮、悪魔は右から左から上から下から、魂を奪うためにやってきては甘い言葉をかける。聡明な君たちはきっとその甘い言葉にのることなく、逆に悪魔をその迷宮に閉じ込めてしまうのだろう。私はといえば、空を飛んでいて、その迷宮をいとも簡単に横断しようとしている。なにか悪魔に申し訳ないような気になり、ふたりのちょうど頭上で神を罵ったのだ。

le parquet de Lille ouvre

2010-02-23 | リッスン・トゥ・ハー
ひとりで帰る。夕方の風は冷たい。買い物に急ぐ主婦の自転車、がさつに追い抜かしていく生活感。飛行機雲は消える。光が漏れる和菓子屋のディスプレイに映る向かいの屋根。煙突からぽっぽと煙がのぼる。下着を売る店、マネキンが着た下着が透けていてセクシー。きらびやかな下着の数々を横に、通り過ぎていく。手を大きく振って歩幅を上げて歩く速度を上げる。風を切れば、前をいく高校生の集団はけたたましく笑いあい、肩を叩き合い、卑猥なジョークを口にしながら。道に広がり、自動車や自転車がよけていることに気づいていない。あるいは気づいていてなお虚勢を張っているのか、定かではないが、若さを持て余して生きている。雑踏に俺はダッフルコートを捨て、冬に紛れた。

南緯18度45分、東経22度45分(365日空の旅)

2010-02-22 | 若者的字引
(ボツワナ オカヴァンゴ川の三角州で沼に浮かぶボート)

ボツワナの空を飛んでいる。1月3日。人が二人が乗っているちいさく細長い船、たくさんの藁を積み込み、後方の男が立ち上がり舵を漕ぐ。前方に座る女は進行方向を見て、小さな花を手に持つ。それを見て、ふっと息を吐く。流れていた花をすくいあげてくれた男の不器用な笑顔を思い出してみる。まんざらでもない気持ちになる。こんな気持ち、どれぐらいぶりだろうか久しく感じていない気がする。男と一緒になって、藁を刈り取り積み上げ、船で運ぶ毎日にあって、ときめきというものはまるで感じない。そもそも、親の決めた結婚であり、嫁ぐその日に初めて顔を見た男だった。ときめきなど最初からなかった。毎日が過ぎていくと自分が年を取らないような気になる。同じことの繰り返しで、発展がない。それを受け入れるしかないわけだからいろんなことを考える必要などない。無駄なことだ。でも。空は晴れ渡っている。太陽が強い。藁は黄金に輝いている。女はひとつうなづく。まっすぐ前方を見て、手を、その花を離してしまう。

お嫁さんは宇宙飛行士

2010-02-22 | リッスン・トゥ・ハー
「直子さんは小学校からの夢をまっすぐに追い、叶えたの。息子にしてみれば不平たらたらかもしれないけどね。それも認めなきゃだわ、今の時代、単身赴任だって山ほどあるんだから。あたしは応援するから。誰が反対したっていつだって応援してあげるのがあたしの役目だから。あたしもねえ、こんなこと言うつもりはなかったんだけど、あたしもねえ若い頃はバスガイドになりたかったんだから、でも両親の反対と、夫の反対、ご近所さんの反対もあり、あたしはバスガイドになれなかったんだから。悔しい思いしたんだから、直子さんにそんな思いしてほしくないじゃない。あたしと違って直子さんは自分てモンをしっかり持ってるから、たとえ誰もが反対したってきっと宇宙に行くんでしょうけど。それを思うとちょっとうらやましいわその性格が。息子もその間の飯はどうするんだよ、なんか言っちゃってね、馬鹿者、と罵ってやったわよ、自分で作りなさいと。まああたしも行ける時は言って作ってやりますけど。孫もいることですしね。とにかく直子さんには宇宙に行ってもらって、月の石をお土産にもってかえってもらうんです!月の石万博で見たかったのに見れなかったんだから、あたしは死ぬまでに絶対見たいの。え?月には行かない?そんなもんそのへんにうかんでるんでしょうに。宇宙なんだから、宇宙、舐めたらあかんで坊や。」

南緯39度25分、西経71度57分(365日空の旅)

2010-02-22 | 若者的字引
(チリ 雪に覆われたビヤリカ火山山頂)

チリの空を飛んでいる。1月2日。スキー客の姿が見える。とんだ命知らずである。しかしスキーコースとしては申し分ない。地球が完璧に用意してくれたパウダースノーの感触、エッジを効かせてターンする際の音すら可愛らしい。そのスキー場としての質の高さはわかるが、あくまでもビヤリカは火山である。今は静まっているとはいえ死んでいるわけではなく、過去にも何度か噴火し、死者を出しているし、近い将来において噴火する可能性は極めて高いとの報告もある。にもかかわらず、彼らはスキーをするためにやってくる。見上げた道楽根性ではないか。私は敬意すら感じる。おそらく恋人同士のスキー客であろう二人が、ゴーグルを外し、熱い口づけを交わしてる。この極寒の地で、風吹きすさぶ山頂で、さぞ燃え上がることであろう。心なしかふたりの足下、万年雪は溶け、黒い土、火山の肌、春の兆しが見える。

EXILE/オーディション/男性/3万人/女性/3人

2010-02-21 | リッスン・トゥ・ハー
オーディション会場は険しい山の上で、自力で登らなければならない。峠道を登っていると、様々なトラップが仕掛けられている。ひとつ間違えれば重傷、死も視野に入れておいた方がいい。毒矢が飛んでくるし、まさかりを振り上げた金太郎みたいな奴は襲ってくるし、ローションまみれの急な坂道もある。それをすべて超えていく知恵と、体力と、運が必要だ。なにしろEXILE、現在日本におけるダンスユニットの頂点に立つ男達である、当然万に一つのEXILEのメンバーに慣れるかもしれない可能性に欠けて希望者は殺到する。EXILEなのだから給料も期待して損はない。中年サラリーマンの1.5倍程度は確実だ。月収にして30万ほどは間違いない。だから職にあぶれたものたちもついでに殺到した。その第一次審査ともいえそうな峠道の厳しい試練を乗り越えて会場にたどり着いたものは、会場に入るため行列に加わる。その並んでいる間も油断してはいけない。EXILEのあまり知らない後ろの方で踊っている人がやってきて、目を光らせている。妙な行動をするものは羽交い締めにし、EXILEの前の方で踊っている人を呼び、その肉体をもてあそぶ。地獄のような、あるものにとっては天国のような風景であった。会場に入る、まったくの暗闇である。光はもう何も入ってこない。その暗闇の中で、一体何をすればいいのか。わからないまま人ごみに混ざる。ぶつかり、ぶつかり、怒号が飛び交う。いけません、EXILEは平和を愛するダンスユニットですという声、見ると、女にスポットライトが当たり、空中に浮遊する、衣装はワンダーランドから着たピーターパン。女は言う。このオーディションはEXILE中心人物、前の中心で歌って踊る人がかけている、メガネの三木の提供でお送りします。

缶たたき Clap-Cans(妖精辞典)

2010-02-21 | 若者的字引
「ランカシャーに住むこのボーギーは、怖い妖精の中ではいちばんおとなしい。E.M.ライト夫人の著書「田舎言葉とフォークロア」の中に出てくる。目に見えず、手で触れられず、缶をたたくような不気味な音が怖いだけである」

缶たたきか?おい、缶たたきなんだろ?知ってるぞ、俺は知ってるぞ。缶たたき。オマエはおとなしくて臆病で、変な乙を出すだけで姿をあらわしゃしない。よわっちい妖精さ。俺を見ろよ、この屈強な肉体、オマエを一握りでつぶしてしまうよ。流れ出る汗が気持ちいいよ。鍛えるって楽しいよ、缶たたき。そうさ、一緒に鍛えようじゃないか。オマエもほんとは鍛えたいんだろう?缶をたたくだけじゃなく、サンドバッグをたたきたいんだろ。ストレート、フック、ボディブロー、アッパーカットでぶちのめしたいんだろ。出てこいよ、みんな待ってるぞ。教室が出にくいなら、保健室でいい。保健室の先生も待ってるぞ。優しい笑顔で待ってるぞ。いいか、信じろ、俺たちは決してオマエを見捨てない。誰一人見捨てるものはない。待っている。だからゆっくり出てこい缶たたき、いや、西田。

断崖絶壁を登るヤギが凄い

2010-02-21 | リッスン・トゥ・ハー
アナタはもう見たか!山羊がとんでもない断崖絶壁をいとも簡単に登っていく姿を。ロッククライマーさながら、脚に岩を握る力もないくせに、ほんの少しの出っ張りを見つけてそこに脚を乗せ、上体のバランスを取りながら体重移動をする、それを繰り返し瞬く間に10mほど登っている。日本の軟弱な小学生には到底真似できない芸当だ。軟弱な日本の大人でも不可能。まずこの映像を見てもらいたい。

(山羊が崖を登る映像/ユーチューブ等で確認ください)

さあ、いかがでしたでしょうか。上映中に会場中から悲鳴のような歓声が幾度となく上がっていました。それほどの衝撃。まさに山羊は我々が考え、それをはるかに上回る運動能力を持っている。あの純朴そうな目は、我々を欺いて、裏でほくそ笑んでいるのである。私はここに山羊の危険性を指摘したい。今のうちに、醜く大いなる野望を抱きはじめたのがほんの一部の山羊であるうちに手を打たねば我々の生きるすべはないと断言したい。驚くなかれ、山羊の大いなる野望とは、月への進出である。私は独自の調査で山羊のある会合の様子を隠し撮りした映像を手に入れた。ご覧いただくことにしよう。

(山羊が会議室で話し合う映像(翻訳:戸田奈津子)/ユーチューブ等で確認ください)

山羊の声を日本語に吹き替えておいたので、非常にわかりやすかったと思います。ご覧いただいた通り、しわがれた声の若い山羊が「月に行って基地を作りそこで侵略計画の拠点とし、全宇宙を制覇しましょう」と話していたし、もう一匹の山羊は「いや、まず月に行って基地を作り、地球を侵略しなければ、全宇宙など制覇できない。まずは地球だ」と話していた。さらにもう一匹の山羊は「月に行ったら基地を作り、人造山羊を作りましょう。それを地球や宇宙へ派遣するのだ」と話していた。共通することはいずれも月に行って基地を作る、ということであり、そこから恐ろしい侵略がはじまる。だからこそ、まだ計画段階にある今、山羊にこちらから総攻撃をかけて絶滅させる。それが地球、いや全宇宙の平和を守る最善の策なのである。さいしょの映像のとおり、山羊がその気になればなんでもできる。核兵器など噛み砕いてしまうことだろう。月にも容易くいってしまうことだろう。あんなにも急な崖を簡単に登れるのだから、月へも登っていけるはずだ。世界には富士山よりも高い山があるんでしょう。それは天まで続いているんでしょう。月へも経由していることでしょう。早く、山羊への総攻撃を、全員がひとつになり、山羊への総攻撃をはじめるべきです。我々同士がいがみ合っている場合ですか。手を取り、山羊を襲うのです。

(半年後、山羊絶滅。山羊にノーベル平和賞授与。上の主張をしたある羊は行方不明)