(ニューカレドニア 2002年のヴォーのハート)
ニューカレドニアの空を飛んでいる。1月1日。突然現れたのは巨大なハートであった。水の上、緑色の植物で溢れている。同じ種類どうし、ある程度かたまって成長するため、形作られる。いくつかの形の中で、はっきりととがった部分に、ふたつついた山、桃尻のような形のハートは、ずでんとそこにあった。海が近く、おそらく水には海水も混ざっている。そのバランスに形の違う植物が群生し、あるいは風が吹けばとたんに流れてしまうのかもしれない。今一瞬の奇跡的な出来事かもしれない。私はそのハートの上空を旋回し、ある人の顔を思い浮かべた。それは家族には悪いが、愛しの妻の顔ではなく、愛しの子どもの顔でもなく、かつて愛し合った女性。どうしてかその女性の顔がふっと浮かんできたのだ。昼間であったが、風が強く、少し肌寒いほどで、風をもろに受ける頬が痛く、私は思わずカメラを持つ手で顔を覆って目を閉じる。本当は飛行中に視野を塞ぐことは厳禁なのだが。そうするとさらにはっきりとあの女性の顔が脳裏に浮かび上がって困った。緑色の巨大なハートは何かしら強い力を私にあたえた。遠い記憶を呼び覚ましてくれたハートに私は投げキッスを落としたのだ。
ニューカレドニアの空を飛んでいる。1月1日。突然現れたのは巨大なハートであった。水の上、緑色の植物で溢れている。同じ種類どうし、ある程度かたまって成長するため、形作られる。いくつかの形の中で、はっきりととがった部分に、ふたつついた山、桃尻のような形のハートは、ずでんとそこにあった。海が近く、おそらく水には海水も混ざっている。そのバランスに形の違う植物が群生し、あるいは風が吹けばとたんに流れてしまうのかもしれない。今一瞬の奇跡的な出来事かもしれない。私はそのハートの上空を旋回し、ある人の顔を思い浮かべた。それは家族には悪いが、愛しの妻の顔ではなく、愛しの子どもの顔でもなく、かつて愛し合った女性。どうしてかその女性の顔がふっと浮かんできたのだ。昼間であったが、風が強く、少し肌寒いほどで、風をもろに受ける頬が痛く、私は思わずカメラを持つ手で顔を覆って目を閉じる。本当は飛行中に視野を塞ぐことは厳禁なのだが。そうするとさらにはっきりとあの女性の顔が脳裏に浮かび上がって困った。緑色の巨大なハートは何かしら強い力を私にあたえた。遠い記憶を呼び覚ましてくれたハートに私は投げキッスを落としたのだ。