リッスン・トゥ・ハー

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壺ビールに手を入れてホップをつかみ取ろうとする猿

2010-02-04 | リッスン・トゥ・ハー
好きなだけ持ち帰ればいいよ私は飲まないからね、でもビール瓶とか鍋とか適当なものがないもんで、その壺に入れて持ち帰って欲しい。壺は口が大きく開いていて、いかにもビールがこぼれそうだった。持ち運ぶための壺ではなくて、壺として飾るとか、壺にほんの少し花を添える程度の壺、それに入れろと言う。なんと根性の曲がった女なのだと思った。しかしそこで引いたらまんまと言いくるめられたことになる、だから意地でもそれにビールを入れて持ち帰るのだ。ビールを注いでみた。ビールは樽に入っていて、その樽を持ち上げてちょっと傾けて注ぐわけだが、これが予想以上にこぼれる扱いにくいので驚いた。壺に注がれるどころか、その下のフローリングの床にすーっと広がっていくビール。それでも半分以上こぼしながらなんとか入った分をかついで、一歩歩くたびにちゃぷんちゃぷんとこぼれまくりのブルース。

ZAZEN BOYS 4/ZAZEN BOYS

2010-02-04 | 若者的図鑑


ラップではないですね。これは。ラップ風だけど、ラップではなくて、念仏なんでしょうね。座禅だけに。

ナンバーガール解散からほどなくして結成されたバンドですが、癖強いなあ。
ナンバーガールの魂は継続して受け継がれていますね。

中心人物の向井さんの気分次第、の部分が強く、しかし存在感のある人です。
あのさえない風貌で、イヤ見方によってはどうとでもとれるんですが、パネルで道ゆく人に見せて、抱きたいと思うかどうか調査してみたらきっとランキングは下の方でしょう。しかし、映像で見せたらまたぐっと違ってくるんでしょうが。
歌う時の叫ぶ時の格好の良さったらないですよ。まあそれは置いといて本能寺で待ってるそうです。

まあ、このフレーズ芸ともいうべき、繰り返す言葉。

サウンド面では、削ぎ落とされて無駄がないですね。
最低限の音で自分たちの伝えたい音楽を確実に届けることができる、だから重ねられる音がへっていったのじゃないかな。
理想に近づいている。

まだまだうるさいですが、突き詰めて行く途中。行ってしまえば、朗読しだすかもしれません。
それすらおかしいものでなく、鋭く突き刺さるのでしょうからたいへん困る。

向井さんのボーカルはいつからか、とても艶が出てきて、怪しく、性的。

野間宏 1991年1月2日 その1(日本死人名辞典)

2010-02-04 | 若者的字引
「戦いでした。
 その人生は何のために生きてきたのか、明確にはわかりません。
 いや、はっきりとひとつに決めることはできません。それは戦争でした」
 もう余り時間が残っていない。はっきりわかります。
 声が届かないかもしれない。しかし、よく聞いてほしい。
 これは私の肉声であり、伝えたいことのすべてです」

会場は静まり返って久しい、宏の体は震えていた。つばを飲み込む音さえ聞こえそうだった。
小さく震えているが、それはこの広い講堂の後部座席からは確認できなかった。
だが、その丸まった背中は、かすれた声が、やたら宙をあおいでいる手が、彼はもう長くないと思わせた。

「私は気づいた。戒名の必要性、その意味、それはほんとうに深い仕組みがあった。
 人々は戒名を、例えば、牛唾飲込丸焼タレ付之助という戒名があるとしましょう。
 それを見て、聞いて、口ずさんでみて、はじめてそういう人物がいたのだと知る。
 生前のその人のあれこれは棚に上げておいて、戒名がすべてを物語り始める。
 もちろん、1年や2年では、まだ故人を知る人が多い、戒名だけで判断などしない。
 しかし、いざ、200年もたってご覧なさい、誰も知らない誰も知りたくない。
 だったら、戒名がその人なんだからそれで判断したら良いじゃないか、となりましょう」

会場の照明が落とされる。
ざわざわとうるさい、人々は暗闇の中で不安になり、隣近所とささやきあう。
宏の立つ演台ももちろん照明が落とされ、そこに存在していることは確実であろうが、それすらおぼろげ。