壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『司法記者』(由良秀之著)読後記

2012年12月05日 | よむ

『司法記者』(由良秀之著)を読みました。新聞社の司法記者、理想を抱いて特捜部に異動してきた検事らを主人公とした小説です。著者は、元検事で、今は弁護士。

カギカッコ(独白)で説明が過ぎるきらいを、やや感じましたが、全体の構成や細部の描写がリアル。検察内部の問題、上意下腹の絶対性、検察でも特に特捜部の体質、記者クラブ制度と発表報道の問題が分かりやすく伝わってきました。

殺人事件と動機では、新聞社内の体質が伝わってきました。取材源の秘匿は、友人知人だけでなく、同僚上司に対しても、秘匿すべきものなんですね。

以下、ネタバレかも。小説では、元国交大臣へのゼネコンからの1000万円献金疑惑があります。これは、社内で政界工作を担当していた者が使い込みをし、実際は政治家に渡っていない。検察は、その点を認識していながら、裏取りをせず、「政治家に渡った」という筋読みにこだわり、それに沿った供述ばかり(強引に)集める。

最後、最高検のナンバーツーが、「内部告発をした者がいるはずです。由々しき問題です」といったのを受け、検事総長が「そういう者が出てきたことは、歓迎するべきことだ」と答えます。主人公の検事も、検察をやめず、内部から改革しようとします。家庭も円満に戻った。ハッピーエンドです。

リアルの世界にはエンドがありませんが、ハッピーに行きたいものです。検察の問題、新聞社の問題(要は組織の問題)に興味のある方は、ぜひ。




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