壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『日本のルールは間違いだらけ』

2011年12月27日 | よむ

『日本のルールは間違いだらけ』(たくきよしみつ著)を読みました。

この手のタイトルは自虐的で、あまり好きでない。どんな国にも間違ったルールはあるでしょ、ことさら日本を強調せずともいいのでは、と考えるからです。が、読み進むにつれ、ルールを作る者に対する怒りが、沸々とわいてきました。

多々あるのですが、一つだけ。JR西日本の宝塚線脱線事故。あの原因は、車輪の幅が1067mmという狭軌にある!というのです。

日本の鉄道は、車輪の幅が、1067mm、1372mm、1435mmの3種類の軌道(レール)があるそうです。JR西日本は、並行して走る阪急電車との乗客の争奪戦で、幅の広い車両を導入する。狭い軌道に、幅広の車両。それで猛スピードでカーブを曲がろうとすると、どうなるか? 小学生でも分かります。

原子力もそうですが、危険因子をコントロールするという発想でなく、そもそも危険因子は近づけないという発想ができないものでしょうか。

同書は、車軸の幅(ルール)が決まった歴史的経緯をたどり、3つも基準があることの「間違いだらけ」な点を明らかにしていきます。

著者は、小説やデジタル文化論などをものする文筆家。鉄道の軌道のほか、日本語のルール(筆順や常用漢字など)、交通ルール(世界の常識は左ハンドルなのになぜ日本は右ハンドルか)、性風俗のルール(猥褻の基準を司法が判断する愚)などをバッサバッサと切り捨てていきます。痛快です。ぜひ。

■以下はおまけ■
●先日、「ベストセラーは商業主義の成功の結果だ」という趣旨のことを書きました。これに関連して、同書から引用します。ファイル共有ソフト、Winnyについて論じた後、著者は続けます。
「人気作家が無名作家の作品を盗んで発表した場合、著作権を管理し、守るべき立場の企業(出版社やレコード会社など)が、自らの利益を守るために無名作家の主張を圧殺する側に回ったという例は過去にいくつもある。著作権法が力の論理で働いてはならない。
ソフト企業には、ビジネスの効率を追いかけるのではなく、文化を創り出すのだという志を持ってほしいものだ。
一方、作品を消費するユーザーには、メガヒット商品として与えられたものだけで満足することの(心の)貧しさ、しかもそれを不法に消費することの虚しさを知ってほしい。」(マルカッコ引用者)

●たくきよしみつさんは、漢字では鐸木能光さん。福島県の山中に居を構え、3・11後のいまも原発から30km圏内に暮らされています。最新刊は『裸のフクシマ』。以下はその「まえがき」より。

「フクシマは、ヒロシマ・ナガサキ以上に有名になってしまった。
日本には現在18か所55基(もんじゅを含む)の原子力発電所があるが、発電所名に県名をそのまま使っているのは福島と島根しかない。この名称の付け方が、すでに福島県の「セキュリティの甘さ」を物語っている。
浜岡原発が静岡県に、玄海原発が佐賀県にあることを知らない日本人は結構いる。チェルノブイリがウクライナにあることを知らない日本人も多い。もしも、福島第一原子力発電所が、他の原発同様に「大熊双葉原発」という名前だったら、今、福島県の人たちが抱えている苦痛は、ほんの少しだが軽減されていたかもしれない。(後略)」

鋭い発想だと思います。会津は、中通りは、いまほど風評被害に苦しまなくて済んだということです。『裸のフクシマ』も必ずや読もう。


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