壁際椿事の「あるくみるきく」

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『硫黄島に死す』(城山三郎著)読後記

2013年01月07日 | よむ

正月休暇は、かなり読書三昧でした。

『硫黄島に死す』(城山三郎著)

「硫黄島に死す」は、太平洋戦争前のロサンゼルス五輪の馬術競技で、金メダルを取った西竹一が主人公。ダンディな人で、男爵だから「バロン西」と呼ばれていたそうです。騎馬兵の彼ですが、時代とともに馬は戦車に置き換わっていきます。

オリンピックの10数年後。太平洋戦争は終局。首都の守備隊として、西は硫黄島に赴任する。そこで最後、ピストル自殺するんです。悲しい話です。

タイトルの小編のほか、所収は「基地はるかなり」「草原の敵」「青春の記念の土地」「軍艦旗はためく丘に」「着陸復航せよ」「断崖」。「硫黄島に死す」を含めて前5編は太平洋戦争がテーマ。「着陸復興せよ」は、その10数年後の、草創期の航空自衛隊がテーマです。

どれも、味わい深く、淡々とはしていますが、著者の強い反戦思想が伝わってきました。著者は海軍特別幹部練習生として終戦を迎えています。

「あわあわ生きることは、所詮、無心な小島くらいに許されることであった。人生ははるかにきびしく、欲望も知恵も狡さも必要であった。人生を呑んでかかるような生き方でなくてはと、おくればせながら(主人公の白沢は)思った。」(「基地はるかなり」より)

勝負に勝って試合に負ける。そんな人生を重ねてきた自分には、白沢の感慨がひしひしと浸みてきます。もっとも、「試合に負けて勝負に勝つ」と前後を逆にすると、プラスイメージになりますが。

「あわあわと」は、どんな擬態語でしょうか。新明解にも広辞苑にも載っていませんでした。



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