壁際椿事の「あるくみるきく」

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『政治家の殺し方』(中田宏著)

2012年05月15日 | よむ

政治か殺すにゃ刃物はいらぬ、噂の一つも流せばいい。『政治家の殺し方』(中田宏著)を読みました。

著者は、前横浜市長。2002年に、市の財政再建を掲げ、多選を批判し、衆院議員から転身し立候補。4選を目指した高秀秀信氏を破り、市長に当選します。

「中田の愛人と名乗る女性が全国ニュースに登場」「3000万円の慰謝料を請求された不倫騒動」……。市長として辣腕を振るい始めた頃、『週刊現代』の報道が始まります。これら報道は、内容がスキャンダラスなものだったので、皆さまも記憶されているのではないでしょうか。

改革を推し進めると、既得権益を持っている側から抵抗される。同書には、主に3つの利権団体が記されています。建設業界、公務員団体(組合)、風俗産業(暴力団)です。この辺は、なんとなく分かりますね。

同書には、自らの実績がいくつか記されています。建設業界では、指名競争入札から一般競争入札に切り替えた。公務員団体では、2期の在任中に公務員数を人口1000人当たり8人から5人へ減らした。風俗関係では、日ノ出地区にあった250店の売春店舗を撲滅した……。(この辺は自画自賛なので、別のソースに当たる必要がありますね)

公務員は、退職前日に昇給していたとか。兵隊が死んだら二階級特進するみたいなもんで、定年退職祝いの、いわば形式的なもの。いえいえ、在任最後の給料は年金計算の基礎となるから、年金は積もり積もって……、となるわけです。中田氏は、そうした悪しき慣例にメスを入れた。

市役所生え抜きでなく、国政からの転身です。落下傘。当選しても、なかなか部下たる市役所職員に慕われないでしょう。全部を敵に回すと、仕事がしづらい。でも、少なからぬ改革派の職員もいます。これを味方につければいい。

中田氏は巧みな言い方をします。「若造の私が市長である間に、今までやりたくてもできなかった改革をやっちゃいましょう」。つまり、自分をダシに使ってください、と言っているのです。したたかですね。こうしたやり方で、改革を進めていたわけです。

与党から首相が出る国政と違い、二元代表制の地方自治体では、首長vsオール与党の構図になりやすい。大選挙区は、どうしようもない候補が当選する可能性がある。議員は、議会内での発言で議会外で責任を問われない、という免責特権がある。議会内では責任を問われるわけだが、オール与党だから批判の舌鋒は鈍る。よって、議員は言いたい放題。「愛人が……」とか「不倫が……」という質問をする。

これを、スキャンダル好きのマスコミが報じる。含むところある議員が、それらしい証拠(写真やメール文)を添えてマスコミに流すこともある。

本書では、市会議員のA氏とC氏とイニシャル表記になっています。誰でしょうか? 気になります。

冒頭の慰謝料を請求された事件など、裁判はすべて中田氏が勝ったそうです。愛人は訴えたはいいが、出廷しなかったとか。裁判に勝というが負けようが関係ない。中田の人気を落とせれば、それでいい、というワケです。

政治とは、血を流さない戦争である。戦争とは、血を流す政治である、といいます。何でもありの権力合戦。なかなか恐ろしいものです。政治に興味のある方は、ぜひ。



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