壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『負けんな、ヤルキキャンプ』(光安純著)

2012年04月02日 | よむ

『負けんな、ヤルキキャンプ』を読みました。著者は、光安純(30歳)。ニューヨークで日系テレビ番組制作会社に勤めていましたが退職。ふらふらしている最中に、3・11の地震が起き、帰国。日本のテレビ番組制作会社に潜り込みます。

ところが「4月9日、石巻でテレビカメラを回していたオレを待っていたのは、給水車に並ぶ人々の、撮るなという、刺すような視線だった。ビビッた。こんな目をされて、カメラを向け続ける勇気はなかった。まずは取材クルーではなく、ボランティアとして現地に入ろう。」(引用)同書は、こんな経緯で始まった光安氏のボランティア奮戦記です。

震災直後に250ccバイクを飛ばし、東京から陸前高田にボランティアに入っていた旧友、タクヤ。光安氏は、彼を頼り陸前高田へ急行します。そこで「復興の湯」という急造の風呂で、湯沸しや清掃などの仕事をします。

3・11のボランティアは、NPO、自治体、企業など団体単位が多かった。もちろん個人ボランティアもいますが、仕事の割り振りが難しいなどの難点もあり、素人が個人でひょっこり行くのは、逆に足手まといという雰囲気もありました。ヤルキキャンプは、そんな風に逆らい、たまたま陸前高田に集まった、地元被災者も含む個人ボランティア・チームの名称です。

避難所で暮らしていた被災者が仮設住宅に移り始めると、復興の湯は閉じられます。そこでヤルキキャンプは、今後も入れ替わり立ち代り出入りするボランティアが寝泊りできる家を作る、という仕事を始めます。資材は埼玉県の、社長が提供してくれます。重機は、愛知県の住職が手配してくれます。さまざまな人の協力を得て、素人集団が家を作っていく。その様子も本書の主内容です。

実は、わたしは、昨年5月中旬、石巻に1週間滞在し、泥掻きのボランティアしました。毎日、早朝に日和山に登った。ある日、頂上の広場でキャンプをしているバイクの青年に会った。それが、タクヤさんでした。陸前高田で1カ月ほどボランティアをした帰途だといいます。個人で、凄い行動力だなぁ、若いのに立派だと思いました。帰京後、しばらくして彼からメールで紹介されたのが、ヤルキキャンプのホームページであり、同書でした。タクヤさんは一時帰宅を挟み、また陸前高田入りしています。同書を手にしたのは、こんな事情があったのです。

●以下、印象に残ったところ(興味深いところ、笑えたところなど)の引用です。
(全国から支援物資が送られてくる。被災者に配布するのも仕事だ。)物資は避難所の住環境を圧迫し、どこに行っても「うちも引き取れません」。冬服は一シーズン経てばまた必要になるけど、保管する場所もない。(中略)「この古着、いくらなんでも古すぎるよな。トラ柄の使用済みパンツは、いらないだろう」「冬服だけはどうにか引取先を探して、使えない古着は捨てるしかなきょな」「たらいまわしの負の連鎖は、もう断ち切ろうぜ」。好意の物資だとはわかっていたが、どうしてももらい手のない古着を、オレたちはドラム缶で燃やした。

オレ達の(作っている)ハウスには、お会いしたことも話をしたこともない方からも、ブログを通じて寄付金をいただいている。お金や物資だけではない。名古屋や兵庫、埼玉、奈良、大阪から、応援に来てくれる人も増えた。(そんな人たちに)「結局、支援って金じゃないっすか」。あえて問いかけると、実際的な活動をしている人ほど、否定しない。どんなボランティアも、コストがかかることを理解しているからだ。

(ボランティアで、流された家のガレキ撤去をしていると)「ボランティアでここまでやってくれるんだべか。親兄弟でもこんなに手伝ってけんねーよ。嬉しいなぁ。いまから酒盛りすんべ」。おっちゃんは本当にビールを買ってきた。「いやぁ、オレたち車なんで」「大丈夫だ」「だめですってば」「じゃあ泊まってけー」。いやいや、この状況でどこに泊まるのよー。

撤去に行った先で、「高田で嫁もらえ。うちのはどうだ」と声を掛けられた。「オレ、この町に残るのは無理なんで、子どもを作るだけでもいいですかねー」。おっさんは何の躊躇もなく、答えた。「子どもだけでいーよ」。いーのかよ!(中略)オレたちヤルキキャンプは半分、地元へのエンタテインメントになっていた。

(ボランティア中にケガをして)平日に眼科の再診に行ったら「受付は9時までです」と断られた。朝の9時で受付終了? 何時からやってんの? 「6時半です」。すげぇな、被災地の現地時間。

以上。肉体的にも精神的にも大変なボランティアだけど、ただ大変なだけでない、何か温かいものが伝わってきますね。長くなり、失礼しました。ボランティアに興味のある方は、ぜひ。


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