『10年後に食える仕事食えない仕事』(渡邉正裕著)を読みました。タイトル通り、10年後に、どのような仕事が有望かをリサーチした本です。
分析上、条件は2つあります。1つは、これから人口減少するとはいえ、日本は1億人という巨大市場がある。グローバル化が喧伝されても(それは何らかの意図を持って何かを煽りたい勢力の虚言であり)、日本で食っていくことはできる。これも立派な道で、かつ有望な選択肢だ、ということ。
もう1つは、とはいえ、金、情報、モノ、人は国境を越えて行き来し、求職上のライバルは世界人口、つまり70億人もいる、ということです。
この前提から、仕事を四つに分類します。
1)日本人の特性を生かせるが、誰でもできる仕事(ジャパンプレミアム)
2)日本人の特性を生かせ、かつ特定の人しかできない仕事(グローカル)
3)日本人の特性など関係なし、とにかく実力(無国籍ジャングル)
4)日本人の特性など関係なし、誰でもできる仕事(重力の世界)
例えば、こんな仕事が該当します。
1)高額商品(住宅など)の営業、日本料理人、美容師など
2)医師、弁護士、編集者、人事のプロ、マーケターなど
3)トレーダー、ファンドマネージャー、基礎研究者など
4)プログラマ、タクシー運転手、コールセンター要員など
「超優秀な中国人が3年で日本語をマスターして朝日新聞の記者になったとして、日本でスクープを取れるだろうか」(以上引用)→取材源となる政治家や官僚は日本人なので、日本人記者にはシンパシーを感じても、中国人には感じないので、スクープは取れない。よって、日本人プレミアムで、2)の仕事。
「超優秀なインド人が(略)住宅メーカーの営業マンになったとして、日本市場で活躍できるだろうか」(以上引用)→顧客は日本で家を建てようとしている日本人で、信頼できる営業マンに頼みたいと考えている。いくらインド人の彼が誠実としても、頼む側は躊躇するだろう。よって、1)の仕事。
「(飛行機に乗る際)航空会社のパイロットが日本人かインド人かを気にする乗客はいない。顧客が求めるのは、安全運行と機内サービスに対する適性料金だ」(引用引用)→よって、パイロットは3)の仕事。ただし、格安航空会社の登場など、4)の仕事との境界線上にまで落ちている。
このような調子で、バンバン分析していきます。小気味いいですね。また、就業者数を調べると、次のようになるそうです。
1)ジャパンプレミアム 16・3%
2)グローカル 5・5%
3)無国籍ジャングル 3・0%
4)重力の世界 72.5%
重力の世界というのは、日本人の特性を生かせず、かつ誰でもできる仕事。賃金相場は、限りなく世界平均へと(重力に引っ張られるように)落ちていく、ということです。その仕事をしている人の人口が、72・5%もあるのです!
インドネシアから介護福祉士見習いが、日本に来ています。サービス受給者に行ったアンケート調査によると、おおむね満足できる状態。「103人中101人が『普通』以上だと答えた」(引用)そうです。つまり介護の仕事は、(大方の予想と異なり)日本人メリットを生かせない仕事だ、ということです。
「外国人が何万人という単位で入ってきた分、日本人の雇用が奪われることになる。日本人の雇用は製造業の海外移転などで減った分、介護や看護などニーズが増える分野で吸収しない限り、全体の失業率は上ってしまう。つまり、本来なら国策として若手を介護や看護の世界に誘導し、送り込まなければならない」(引用)
数年前、介護職の手当てを2万円引き上げる政策が採られました。僕は数週間前のこのブログで、「5万円でも引き上げるべきだった」と述べました。まさに、溜飲が下がる思いです。
いずれにせよ、72・5%の人が、賃金大幅下落の危機にさらされている、求職活動する人は、こうした面を意識し、職業選びを、という提言の書です。
求職活動する人だけでなく、政策立案者にも、ぜひ読んでもらいたいです。