壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『10年後に食える仕事食えない仕事』(渡邉正裕)

2012年03月13日 | よむ

『10年後に食える仕事食えない仕事』(渡邉正裕著)を読みました。タイトル通り、10年後に、どのような仕事が有望かをリサーチした本です。

分析上、条件は2つあります。1つは、これから人口減少するとはいえ、日本は1億人という巨大市場がある。グローバル化が喧伝されても(それは何らかの意図を持って何かを煽りたい勢力の虚言であり)、日本で食っていくことはできる。これも立派な道で、かつ有望な選択肢だ、ということ。

もう1つは、とはいえ、金、情報、モノ、人は国境を越えて行き来し、求職上のライバルは世界人口、つまり70億人もいる、ということです。

この前提から、仕事を四つに分類します。

1)日本人の特性を生かせるが、誰でもできる仕事(ジャパンプレミアム)
2)日本人の特性を生かせ、かつ特定の人しかできない仕事(グローカル)
3)日本人の特性など関係なし、とにかく実力(無国籍ジャングル)
4)日本人の特性など関係なし、誰でもできる仕事(重力の世界)

例えば、こんな仕事が該当します。
1)高額商品(住宅など)の営業、日本料理人、美容師など
2)医師、弁護士、編集者、人事のプロ、マーケターなど
3)トレーダー、ファンドマネージャー、基礎研究者など
4)プログラマ、タクシー運転手、コールセンター要員など

「超優秀な中国人が3年で日本語をマスターして朝日新聞の記者になったとして、日本でスクープを取れるだろうか」(以上引用)→取材源となる政治家や官僚は日本人なので、日本人記者にはシンパシーを感じても、中国人には感じないので、スクープは取れない。よって、日本人プレミアムで、2)の仕事。

「超優秀なインド人が(略)住宅メーカーの営業マンになったとして、日本市場で活躍できるだろうか」(以上引用)→顧客は日本で家を建てようとしている日本人で、信頼できる営業マンに頼みたいと考えている。いくらインド人の彼が誠実としても、頼む側は躊躇するだろう。よって、1)の仕事。

「(飛行機に乗る際)航空会社のパイロットが日本人かインド人かを気にする乗客はいない。顧客が求めるのは、安全運行と機内サービスに対する適性料金だ」(引用引用)→よって、パイロットは3)の仕事。ただし、格安航空会社の登場など、4)の仕事との境界線上にまで落ちている。

このような調子で、バンバン分析していきます。小気味いいですね。また、就業者数を調べると、次のようになるそうです。

1)ジャパンプレミアム 16・3%
2)グローカル     5・5%
3)無国籍ジャングル  3・0%
4)重力の世界     72.5%

重力の世界というのは、日本人の特性を生かせず、かつ誰でもできる仕事。賃金相場は、限りなく世界平均へと(重力に引っ張られるように)落ちていく、ということです。その仕事をしている人の人口が、72・5%もあるのです!

インドネシアから介護福祉士見習いが、日本に来ています。サービス受給者に行ったアンケート調査によると、おおむね満足できる状態。「103人中101人が『普通』以上だと答えた」(引用)そうです。つまり介護の仕事は、(大方の予想と異なり)日本人メリットを生かせない仕事だ、ということです。

「外国人が何万人という単位で入ってきた分、日本人の雇用が奪われることになる。日本人の雇用は製造業の海外移転などで減った分、介護や看護などニーズが増える分野で吸収しない限り、全体の失業率は上ってしまう。つまり、本来なら国策として若手を介護や看護の世界に誘導し、送り込まなければならない」(引用)

数年前、介護職の手当てを2万円引き上げる政策が採られました。僕は数週間前のこのブログで、「5万円でも引き上げるべきだった」と述べました。まさに、溜飲が下がる思いです。

いずれにせよ、72・5%の人が、賃金大幅下落の危機にさらされている、求職活動する人は、こうした面を意識し、職業選びを、という提言の書です。

求職活動する人だけでなく、政策立案者にも、ぜひ読んでもらいたいです。


『新聞ジャーナリズムの「正義」を問う』(黒藪哲哉著)

2012年03月13日 | よむ

『新聞ジャーナリズムの「正義」を問う』(黒藪哲哉著)を読みました。最近、押し紙問題について知り、驚き、もっと深く知りたいと思い、同書を手にしました。

同書の内容は、(1)押し紙、(2)新聞育英制度で働く若者の過労死、(3)新聞販売店の組合である日本新聞販売協会の不正経理、政治献金疑惑、(4)新聞に詳しい有山輝雄・成城大学教授へのインタビューです。

同書からは、(1)だけでなく、(2)や(3)についても知ることができました。驚きの数々です。著者の黒藪氏は、(3)につき、協会関係者に質問状を送っていますが、関係者はこれに答えない。なぜでしょうか。ますます疑惑が深まります。

諸悪の根源は、再販制度に守られた、系列店の販売網制度ということでしょう。(3)は再販制度維持のため、協会が政治献金をしてた、という読みです。

(2)に関して。上村修一君、18歳。過労死。当時、「世界最年少の過労死」と騒がれたそうです(ただし新聞は報じず、雑誌が報じたようです)。仕事と学業の両立に苦しみました。死因は小脳出血。夕刊配達から販売所に戻り、チラシ折込みをしている最中に嘔吐。そのまま病院に運ばれたそうです。

新聞奨学生制度は、先に学費相当額を貸し付ける。後々、給料から返金していくというものです。仕事を途中で止めると、一括返済しないとならないなど、無茶な条件があるとか。東京都下では、新聞配達員の4割が、奨学生だそうです。戸配制度は、こうした確実に使える安価な労働力によって成り立っている面もあるのですね。

もちろん、ものごとには正負両面ある。奨学制度は、学生が経済的に自立して学べる制度でもあります。しかし、心身とも、仕事と学業を両立させるのは、万人に可能ではありません。初志は良くとも、途中で方向転換する人もいるはず。彼らに対し、一括返済など求めず、簡単に辞められるようにすべきでしょう。

出版は1998年です。もう15年ほど前。現在は、こうした新聞の諸問題は解決されているのでしょうか。またインターネット時代に、経営的に苦戦が続くなか、新聞社は編集方針も経営面も、どう建て直していくのか? 興味は尽きません。


恵比寿から大塚、新富町、市ヶ谷

2012年03月13日 | あるく

今朝は、都内を自転車で移動しました。自宅を出て、恵比寿、北新宿、大塚、新富町、そして市ヶ谷です。若干寒かったですが、天気は快晴で、気分よいサイクリングでした。

新宿7丁目の戸建て住宅街に迷い込みました。入り組んだ住宅街で、道が細く、坂や階段が多い。季節も場所も違いますが、「朝顔につるべとられてもらい水」の世界でした。副都心近くにこんなのどかな住宅街があるとは、驚きでした。

都内を自転車移動すると、坂が多く、かつて江戸は入江だったということが実感できますね。

大塚では、播磨坂という道で、桜祭りを案内する看板が出ていました。また、新富町から市ヶ谷へは、日比谷から皇居を逆時計回りに走りました。桜田門、三宅坂、半蔵門、九段坂上です。この辺り桜の名所。もう半月もすると、どっと人が繰り出してくるでしょう。

「あるくみるきく」読者の皆さまにとっても、素晴らしい春の訪れをお祈りしています。

●注:カテゴリー「あるく」は、文字通り「歩く」でなく、「出かける」というニュアンス。サイクリングを加えます。