壁際椿事の「あるくみるきく」

東京都内在住の50代男性。宜しくお願いします。

『日本の聖域』を読んだ、その2

2010年07月26日 | 読書(文芸、フィクションほか)
追伸。「日本のサンクチュアリ」の執筆陣は、基本的に「匿名」ですが、前書きには「創刊時の主要執筆人の一人、筑紫哲也氏は~~」と書かれています。

1)月刊誌「選択」の創刊は30年以上前で、単行本『日本の聖域』は最近の同雑誌の連載をまとめたもののため、収録の記事の執筆者が筑紫さんであると考えられないため。
2)筑紫さんはすでに故人であるため。

以上2点の理由から、執筆者名を明かしているのだと思います。


『日本の聖域』を読んだ

2010年07月26日 | 読書(文芸、フィクションほか)
一塊の牛肉がミンチ肉にされ、それが他の肉と混ぜ合わされ、合い挽きのミンチ肉になったうえで、ハンバーグやコロッケ、肉まんなどに使われているイメージだ(以上引用)。

もし、腐った肉が一片でも混じっていたら……。ギョーザ事件でないですが、食べる気になりませんね。腹をこわしてしまいます。この表現は、サブプライムローンが組み込まれた証券化商品について、比ゆしている言葉。『日本の聖域』(「選択」編集部、新潮社)を読みました。

「選択」は、1975(昭和50)年創刊の月刊総合雑誌。会員制の読者を対象に定期購読のみ。雑誌を作る者は通常、多くの読者を得たいと思うものですが、「三万人のための情報誌」をキャッチフレーズにスタートしています。創刊時の主要執筆人の一人、筑紫哲也氏は、「糖衣にまぶされ、俗説に支配された水増し情報が溢れているなかで、『選択』はしっぽまでぎっしりアンコが入っている鯛焼きのような雑誌です」と評しているとか。

この雑誌の「日本のサンクチュアリ」というタイトルの連載をまとめたのが、『日本の聖域』です。各界の第一人者やジャーナリストが、「知りえてはいるが、なかなか表に出せない暗部を、『匿名』で書いた記事」です。以下、目次より(一部)。

諮問機関委員 「肩書きコレクター」の玩具
「人工透析ビジネス」の内幕 患者は病院で作られる
パチンコ業界 警察利権としての三十兆円産業
日本最大の機関投資家「農林中金」 サブプライム汚染どこまで
学生のいない学校「国連大学」 外務省の裏金作りの道具に
都立松沢病院 荒廃する「精神科の総本山」
無きに等しい「検視制度」 見逃される殺人事件
厚労省「医系技官」 医療荒廃の罪深き元凶
日本相撲協会 何から何までカネカネカネ
企業監査役 海外投資家から不信の目
NHK 指導者不在のメディア帝国

中でも驚いたのは、人工透析ビジネス。まだ治る可能性のある患者も、総合病院は低い検査数字で、透析適用と判断するとか。

総合病院は、「はい、クレアチニンの値が6でしたから、そろそろ透析の準備をしてくださいね」と判断。やがて、カテーテルをつなぐシャンク手術を実施。そして、患者の住む近くの透析専門医院を紹介するという仕組みです。小規模な病院である地域の病院は、総合病院の腎臓内科の教授への付け届けもすごいそうです。

透析は、保険が利くので、患者の負担は月1万円だけど、正味の病院の収入は40万円ほどで、保険から得られる。患者も医者の診断は信じるほかなく、また「月1万円程度とハードルが低いので、「健康には代えられない」という思いも働く。

専門家の間ではさまざまな意見があるのに、クレアチニンが「8」以上だと透析を適用すると機械的に処理する医者もいるとか。まさに「病院で患者は作られる」。

『日本の聖域』は、この人工透析以外にも、目次に記した団体の利権構造にズバリ、メスを入れています。実名で書かれてもいます。これらが事実とすれば、本当に恐ろしい限りです。ますます大切な一票を有効に投じなければ、と思いました。