ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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創作オペラ『天使のおくりもの』

2012-04-15 21:30:17 | コンサートのご案内&ご報告
さて、一回分、日記がとんじゃいましたが。4月7日の、氷川荘でのコンサートの話、続きです。
第二部。いよいよオペラの始まり~。

オペラは『天使のおくりもの』。

こちらの方も、私が台本を書きまして、劇中から使う音楽はクラシックから引っ張ってきました。
アレンジはピアニストの田中さんがやってくれました。

クラシックをハードル高くなく聴いてもらえるように。クラシックと気付かなくても、楽しんでもらえるように。
クラシックに馴染みのない方やお子さんたちに飽きずに聴いてもらえるように、何とか考えた方法です。こういった創作オペラは、歌をやっていく上で、私が続けていきたい活動です。

さてさて、『天使のおくりもの』の、登場人物は、女の子の天使と、男の子の悪魔。
内容はコミカルにして、アドリブの連続にしてギャグを入れつつ、でも最後はバラの騎士の音楽を使うので、一応ペースは真面目な感じ。
あ、天使と悪魔は、私の早変わりです。一人二役ね。

あらすじはといいますと。

イタズラ好きの悪魔が、いつものようにイタズラをたくらんでいます。
ところが、悪魔のしかけたびっくり箱のイタズラにひっかかってしまった、女の子の天使に悪魔は一目ぼれ。
悪魔はあの手この手で、天使にプレゼントしたり、何とか気に入られようとしますが、うまくいかない。

けれど、折れてしまった天使の大切な杖を、何という事なく悪魔が直してあげたことで、天使は大喜び。天使からハートの形のペンダントをもらって、話は終わります。


そんな創作オペラの当日の話、写真をまじえてレポートしますね。

まずはイタズラ好きの悪魔の登場。

『忘れもの』と書いた袋にびっくり箱をしかけ、誰かがひっかかるのを待っていますが…

(使用曲)『ヘンゼルとグレーテル』より「ラ・ラ・ラ・ラ…」



そこにやってきたのは女の子の天使。天使の杖で歌いながらやってきます。
(使用曲)『ヘンゼルとグレーテル』より「私は小さな露の精」



しかし、それと知らずに悪魔のイタズラにひっかかり、びっくり箱を開けてしまって…

「ぅきゃあああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!」

…というところまで。
ここまで進めるのが、もーう、大変でしたねえ…(遠い目)
何が大変かと言いますとね。

普段、自分たちだけで練習しているときは、たとえばこの、天使がびっくり箱をあける場面は、普通にびっくり箱を開ければよかったんですけど。

本番当日は。お子様たちが。
私演じる天使がびっくり箱を開けようとすると、

お子様たち→「開けちゃダメダメダメ!!」
「悪魔だよ!悪魔だよ!!悪魔がやったんだよおぉぉぅぅぅ!」
「あけちゃダメ――――っっっ!」


…先に進めない…orz
気を取り直しつつ、

「悪魔?何それ!そんなの知らないわぁ!」
などと、天使の役のまま、かわいく言って、話を進めようとすれば

お子様たち→「あのねあのね!悪魔がびっくり箱を入れたんだよ―――!!」

…オウフ…(´∀`;)

そうか、子供はこういう風にオチをすべて言ってしまうのね。
…かつて研修所でも、デビューの時も本当に指導して頂いて、お世話になった演出のN村K一先生。こういう時はどうしたら良いんでしょうか…(´∀`;)アハン

ま、適当にアドリブでつなげましたけれどもね。
コミカルな内容で、自分で作った台本でよかった…きっちりした台本で、シリアスな内容だったらアドリブも入れにくいし、どうなったことやら…

ま、そんな風に私自身もペースもつかみ、話は進んでいきます。



悪魔は自分の大事な宝物をいくつも入れて、一目ぼれしてしまった、女の子の天使へのプレゼントにします。

(使用曲)『後宮からの誘拐』より「何という喜びが」


というところが。もう、めちゃくちゃ大変でした…

天使に喜んでもらうため、悪魔が自分の宝物をプレゼントしようと、いそいそと用意しているんですが。悪魔の宝物はヘビにカエル、そしてガイコツ。
それを見ていたお子様たち、そんなものをプレゼントしたら、天使が驚くと思ったんでしょうかねえ。

お子様→「そんなんじゃだめだよぅ!(´д`)」とか、
何とかそのプレゼントを阻止しようとしはじめ、必死になり。そして、私に小道具のカゴまでかぶせてくるし(笑)

…悪魔、困っちゃうぜぇ(´∀`;)

挙句に、お子さんの1人が、プレゼントの中身がカエル、ヘビ、ガイコツでは、あまりに天使がかわいそうだと思ったのか。何とか、良いプレゼントをあげようとしたらしく。
自分の服を、プレゼントの袋に一緒に入れてくれました(笑)

…かわいすぎるやろ~…(笑)



まあ、文章で書いてると大した事ないように見えますが。この時舞台は大変な大騒ぎ。私、超必死。
ですが、お客様の大人たちは、子供たちの様子を見て、お腹を抱えて涙流して笑っていたそうな…(笑)

そんなこんなで悪魔退場。
しかし、私が舞台裏で早変わりして、天使がやって来て、プレゼントの袋を見つけると、子供たちは大絶叫。

「だめえぇぇぇぇぇぇえええええ!」
「ガイコツ入ってるよぉぉおぉぉおお!!」
「その袋、開けちゃだめえぇぇぇぇええええ!!」


…かわいい(笑)

結局、開けちゃうわけですけどね、プレゼント。

天使がはしゃいで開けたプレゼントの中身は、ガイコツ。




「いやあぁぁぁぁぁぁっっっっ ガイコツ―――――っっっ」

結局、天使はこれも、プレゼントとの名を騙ったイタズラだと思い、ぷんぷん怒って帰ってしまう訳ですが。
「あ~あ…と言わんばかりの雰囲気の子供たち…
すると、悪魔登場。
天使が自分のプレゼントを気に入ってくれなかった事に対してふてくされていたら、絶妙のタイミングでお子様からツッコミが。

お子様→「相手の気持ち考えないからだよっっ(`д´)」
思わず、本当に悪魔の気持ちになってしまい。

「だって…だって、俺の一番の宝物、あげたんだぜえぇぇぇ!!」
と、アドリブで、本気でセリフを返してしまいました。
…口をついて台詞が思わずでてくる、というのは初めての経験だったかもしれない。


この後、大切な杖をなくした天使が、泣きながら杖を探せば

(使用曲)『フィガロの結婚』より「なくしてしまった、どうしよう」

前奏の段階で、
お子様たち→「あっち!杖、あっちにあるよー!!杖、あっちあっち!」 の、大合唱…
…天使、困っちゃうん(´∀`;)
演出のN村K一先生、こういう時のアドリブはどうしたら以下略。



結局、杖が折れているのを見つけた天使は、ショックのあまり、泣きだしていなくなってしまいます。その様子を見た悪魔が、折れた杖を直してあげようと、ガムテープを使おうとすると、

お子様→「それ、色が違って変になっちゃうから、やめた方が良いよ!Σ (゜д゜)ノシ」
と、的確なアドバイスも。…確かに杖がピンクで、ガムテープが普通の茶色だしね…(´∀`;)
…的確だけど、次のストーリーの都合があるから、華麗にスルー



それで、悪魔が何とか直した杖を天使が見つけて大喜び。そのお礼に、自分のお気に入りのハートのペンダントを置いていきます。
「どうか、杖を直してくれた優しい人が受け取ってくれますように…」
と、天使は祈りを込めながら。


そして天使がいなくなった後、悪魔がそっとやってきて、ペンダントをもらっていなくなる…
(使用曲)『バラの騎士』より「まるで夢のよう」

それで終わり。です。

今回のこのミニオペラ、いらしてた大人の関係者のお客様は、もうお子さんたちの反応を観てるのが面白かったそうです(笑)
私も見たかったもんですが、私はもはや子供たちが相手役、といった状態だったので、様子を見るどころではなかったですね~。

子猿軍団にとりかこまれて、もう必死(笑)
いやー、まっすぐに立って、きちんとアリアを歌う事は教えてもらいましたが、飛びかかってくる子どもたちをあしらい、サングラスを外そうとするのを防ぎつつ、且つ崩れないようにアリアを歌うレッスンは習ったことなかったわ~(笑)

でも、あんなに楽しかった事ってなかったなー。
もう夢中になってくれて、子供たちがまるで共演者、いわば相手役でした。
彼らの反応に返しつつ、ストーリーが崩壊しない程度にアドリブを入れて修正しながら、先に進めていく…いやはや、勉強になりました。


さて、
『天使のおくりもの』
使用曲はこちら。

フンパーディンク 『ヘンゼルとグレーテル』より
「ラ・ラ・ラ・ラ…」
「私は露の精」


モーツァルト 『後宮からの誘拐』より
「何という喜びが」

モーツァルト『フィガロの結婚』より
「なくしてしまった、どうしよう」

R・シュトラウス『ばらの騎士』より
「まるで夢のよう」

グリーグ『ペール・ギュント』より
「山の魔王の宮殿にて」(※ピアノ独奏)

でした!



さて、いきなりですが、裏話。
はっきり言って、悪魔、私がやってるので怖くはないですが、あまり可愛くはないです(笑)

「俺様は悪魔だぜぇ!エッヘン!」
…という、少年ぽい、かわいい感じではなく。
子供っぽくはあるのですが、どこかけっこうドスの利いた感じ…何故なら、私は地声が宝塚並みに低いので、男役の悪魔は何の違和感なく、台詞ができてしまうという…

ちなみに天使の時は、コロラトゥーラのポジションで、きゃぴきゃぴした高音の声でしゃべってますので、まるで別人のように甲高い女の子の声に聞こえます。なので kein problem。←…でも実はこっちのが大変なんだな~(´∀`;)

まあだから、早変わりさえこなしてしまえば、結構二役はなんとかなってしまえるので。何かトラブルが起きても、ギャグのアドリブで切り抜けられるし。
このオペラの問題は、早変わりだけでした。どんなにがんばっても30秒はかかるのでね…

衣装以外にも、カツラ、靴に、サングラスや角…と、1秒を争う、早変わりの時にはなかなか小道具が多いんですよね。

結局、私が裏で早変わりしている間、お客に待っている違和感を感じさせないように、私は台詞をしゃべる事にし。
そしてピアニストの田中さんに、それぞれのテーマ(天使は「露の精のアリア」、悪魔は「山の魔王の宮殿にて」)を、アレンジしながら弾いてもらう事で何とか解決。

いやー、田中さんは、こういうちょっとしたアレンジもさっさとやってくれるんですが、普通の演技の時も、物を出す時やちょっとした時に、ピアノで実にさまざまな効果音をつけてくれて。
そのおかげで私の動きや感情が、本当に効果的になるんですよ!アドリブ大会だったのにありがとうでした(´∀`)
特に最後、このオペラのメイン曲である「バラの騎士」は、かなり長い曲なので、相当短くしなくてはならず。
しかもわかりやすく伝えつつ、でも、「ここの和声は、絶対欲しいよね…」という自分たちの我儘もあり。
それを相談しながら、アレンジはほとんど彼が作り上げてくれました。

しかも、すんごい上手いの!!!

私が慣れていない曲なので、レッスンつけてもらっていたら、ピアノ伴奏なのにまるでオーケストラのように、涙が出てくるほど綺麗に弾いてくれて。もう超感動…
話を聞いたら、バラ騎士は大変にお好きだそうで…納得。

おかげで、完全に稽古中に脱線してしまい(笑)全然関係ない、銀バラの献呈の場面とかやっちゃって遊んでましたがな~(´∀`)
歌いたいな!バラ騎士!!演じるよりも、まず歌いたい!!

それにしても、やはり私たち歌い手はピアニストの協力なしには、歌う事が出来ません。
特にこういったアドリブ大会(笑)や、またクラシックの大切なことを抑えつつ、アレンジも考えつつ弾いてくれる田中さんにはいつも感謝!影でレッスンもつけてくれるし。

…なのにピアニストって、演奏終了後の挨拶は、いつも隅っこで、歌手の後なんですよね~…
ですので、歌手のコンサートに行かれる方は、ちょっと機会があったら、ピアニストさんにも目を向けて下さると本当に嬉しい。
私たちはいかにピアニストに支えられ、共に演奏しているか。感じて下さると本当に嬉しいです!


さて。以下、ちょっと真面目な話。

今回、コンサートとしては、先方にも満足していただけたようですし、一時間半という時間の間、お子様たちも飽きずに見てくれて、喜んでくれたようです。トータルの出来としても、上手くいったと思っています。

それでも。
私は本当にまだ三文役者というか、三文歌い手(そんな言葉あるのか?)で。
こんな私に喜んでくれる子供たちが、かわいいやら、少し哀しくもあります。

世の中には、もっともっと、素晴らしいエンターテイメントや音楽があふれている。どうか、もっとそれを観てほしい。
私なんかで喜ばないで。本当に素晴らしいものって、こんなものじゃないんです。
見ただけで身体が震えるような。
時間が止まって、永遠に感じるようなものが、素晴らしいエンターテイメントなんです。

まだ小さい、5歳や7歳くらいのあなたたちは、もっともっと、知る権利も、楽しむ権利も持っている。
私はもう32、どれだけ歌い手として成長できるのかは分からないけれど、少しでも必ず、必ず、上達して、今回より次回、次回より、その次、必ず、もっと良いものを届けられるように、本当に頑張っていくから。

どうかいっぱい、素敵なものに触れていってね。子供たちに伝えたいことです。
そして、それは自分が、大人のお客様にも持たなくてはいけない気持ちで。
もっともっと良い物を。
必ず、
「あの人のコンサートは、行って良かったね」
と、思ってもらえるようなエンターテイナーになりたい。
それは、楽しい時間をお届けするという意味でも。上質なクラシックをお届けするという意味でも。

どちらも、あまりに遠いですけれど、目標はいつだって高くもちたいです。でなければ、その前で止まってしまうから。

いつだって楽しい時間を。
私たちはそれをクラシックで届けられる。
少しだけ、少しだけ見せ方を変えれば、クラシックはいつだって素晴らしいものです。
子供たちだってわかってくれました。飽きずにきいてくれました。
クラシックは決してつまらないものなんかじゃありません。

いつか、また他の歌い手さんと一緒に別の創作オペラを出来たらいいのに。
野望ですね(笑)



おまけ。


悪魔、身体も柔らかいのさー。
(終わった後、速攻で子供がマネしていた…いや、お行儀よくないから、マネしない方が…)





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