ソプラノ歌手 中川美和のブログ

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パパパ

2019-09-20 01:32:03 | 歌のこと
今、10月12日のサロンコンサートの稽古で演奏する、「パパパ」を練習してます。
「魔笛」のアレです。

実はすごく好きなパパパ。今回改めて稽古してて、良い曲だなぁ~……と、思うのです。

私、モーツァルトが作曲技術の粋を極めて、至高の美しさを突き詰めて作った愛の二重唱は、「後宮からの誘拐」のベルモンテとコンスタンツェの二重唱だと思うんですが。(しかもこれは、言葉もものすごーく美しい。綺麗すぎてヤバい。)

ベルモンテとコンスタンツェの二重唱
歌は2分50秒あたりから。でもその前も綺麗なのよ~

で、これと同じくらい凄い愛の二重唱は、「パパパ」だと思っています。

後宮のあの重唱を、モーツァルトは26歳だかそこらで書いて、どこにいくんだ……
と思ってしまうんですが。彼が晩年に到達したのが「パパパ」っていう。
半分は「Pa、パ」しか言ってないで、こんなにも喜びと愛と優しさに満ちた音楽ってないでしょう。

モーツァルトと、三部作の台本作家ダポンテとの出会いは、運命としか思えないような部分があると思うんですよね。
ダポンテは台本作家でしたが、本人的には詩人としてのプライドがあったようで。やはり、詩人ならではの言葉のチョイスには凄まじいものを感じざるを得ません。

モーツァルトは天才ダポンテと出会った事で、「言葉」というものへの感覚がどんどん変わっていったんだと、私は思います。
「フィガロの結婚」で天使の音楽を書き、「ドン・ジョヴァンニ」で地獄を書き、「コジ・ファントゥッテ」で人間を書いて。
これら三部作で様々なものを描き、様々な愛の音楽を書いて。最後は「パパパ」なんだなぁ、て思うんです。

いや、「魔笛」と同時期に書かれた「ティトの慈悲」とかをディスってんじゃないですよ……あれも充分素晴らしいんですが。
ただ、「パパパ」の凄さたるや。

ダポンテとの三部作の後、モーツァルトにとって最後のオペラとなった「魔笛」の台本を書いたシカネーダーは、はっきり言って、台本作家としては平凡な人だったと思います。ダポンテとは比べ物にならない。

けれど、彼と組んだからこそ描けたものがある。
むしろ、彼とでなければ「パパパ」は書けなかったでしょう。

平凡な言葉、単純な言葉。
「パパパ」は、そこにこそ命があるんじゃないかな、と思わせてくれます。
だって、世の中の人間のほとんどは、平凡で、普通で、パパゲーノのように怠け者で、臆病で、欲望に負けるでしょう?
そんな弱い人間にも、ちゃんとハッピーエンドを用意してくれた。
だからこそ、この「パパパ」の平凡な言葉につけられた単純な音楽の素晴らしさ、かけがえのなさに、泣きそうになってしまう。

パパパの二重唱
「パパパ」は40秒位からかな。

そんな「パパパ」も演奏します!
サロンコンサートの詳細は、こちらをクリック




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