一顆明珠~住職の記録~

尽十方世界一顆明珠。日々これ修行です。いち住職の気ままなブログ。ときどき真面目です。

「晏子」・・・美しく生きるということ

2006年08月24日 | 
晏子〈第1巻〉

新潮社

このアイテムの詳細を見る


数年前に姉の友達の勧めで読んだ本です。

全4巻というボリューム。

中国歴史小説と言って尻込みすることなかれ。

どなたでも一気に読めること請け合いです。

古代中国、春秋戦国時代末期。

権謀術数が蠢く乱世において、斉の国で活躍した、二人の「晏子」、晏弱、晏嬰父子の人生を描きます。

前半は、勇猛果敢な将軍、清廉の鑑、父 晏弱の物語。

後半は、「礼」を法とし天命に生きる宰相、子 晏嬰の物語です。

二人の生き方の類稀なる美しさに圧倒されます。

その美しさは、私たちのような凡人には時として狂気にさえ映る。

どんなことがあっても揺るがない生き方。

ひたすら自己の信念に殉じる生き方。

それは彼らにとって天命、天の声にほかならないのでしょう。

コスモス(全宇宙)の声に耳を澄ませ、自己が有する最大限の力を尽くせば、かような生き方が現れるのかもしれません。

いや、彼らにとっては、「ただ天(コスモス)の声に従って生きている」だけなのかもしれません。

古代の闇に覆われた歴史上の人物に光を当て、見事な人間像を描き出す著者の手腕には脱帽です。

著者の他の作品では、「太公望」を読みました。

こちらも良書ですが、「晏子」の方が上です。


しかし、晏子が活躍した時代に、日本は縄文時代・・・。

ちょっと、なんだかなぁ(悔しい)という感じです。

ま、黄河文明の発達に太刀打ちできないのは当たり前ですね。

文明はともかく、日本が精神性で中国に追いつくのは、やはり聖徳太子が出現してからだと思います。

それにしても、現代人は、飛躍的に高度な文明を築き上げましたが、その精神は反比例的に急速に退化しているように思われてなりません。

現代の中国にも日本にも、二人の晏子のような「仁」は皆無に近い。


エゴイスティックで狡猾な中国の政治家たちにも読んで欲しい一冊です。

そして、信長気取りのあの方、Kさんにも・・・



※当ブログはアフィリエイト登録はしていません。

※↓よかったら一日ワンクリックして応援してください!

にほんブログ村 哲学ブログへ

応援ありがとうございました!

最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
晏嬰について (風月)
2006-08-25 13:25:17
今、自分の研究のゲラを読み始めたら、すぐに晏嬰につての語注を付けていたので、たまたまりょうさんのブログをちらっと読んだ後でしたので、驚きました。



平仲という字だったそうで、一汁一菜の質素な食事「晏嬰脱粟」と一枚の狐の裘を30年間着用したという「晏嬰之狐」の注釈を私が付けた頁があり、りょうさんの記事を改めて読み直しました。



この小説も読みたいですが、積ん読本が増えました。りょうさんの解説で楽しんでおきます。
返信する
おもしろい (ぜん)
2006-08-25 21:00:05
数年前に読みました。

内容は、忘れてしまいましたが(汗)

ログを読みながら復習します



宮城谷さんの中国ものはおもしろいですね。

ファンです。
返信する
シンクロニシティ? (りょう)
2006-08-25 21:25:54
>風月さん

風月さん、こんばんは。

それは思い切りユングの主張する「シンクロニシティ(共時性)」ってやつかもしれませんね。。。私と風月さんの心の波長のようなものがシンクロしたのかもしれません。

なるほど、晏嬰にはそのようなエピソードがあるのですね・・・。本書にも書いてあったような・・・。とにかく、中国人ってやることが極端ですよね。。。ある意味スケールがでかいとも言えますが。

この小説は非常におもしろいです。機会があったらお読みになってみてください。

返信する
ぜんさんも・・・ (りょう)
2006-08-25 21:32:55
>ぜんさん

ぜんさん、こんばんは。

ぜんさんも宮城谷氏の作品がお好きなんですね。

私は、これと「太公望」を読みました。いずれも読み応えたっぷりですが、とてもおもしろかったです。

いやはや、実は私もほとんどストーリーを忘れてまして、アマゾンの書評を読んで記憶をよみがえらせました



中国古代の歴史上の人物に、これほどまでの親近感とロマンを感じさせるのは、宮城谷氏ならではかと思います。

小説家ってすごいですね・・・
返信する

コメントを投稿