一顆明珠~住職の記録~

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驚異の仏教ボランティア―台湾の社会参画仏教「慈済会」

2010年12月02日 | 


台湾の仏教界において、いや台湾社会全体において、特異な存在感と、圧倒的な影響力を持つボランティア団体、「慈済会」の活動について紹介されている。

慈悲喜捨、菩薩行の実践という仏教精神に根ざしつつも、一宗教という枠組みを超えて、世界中ダイナミックに展開されるボランティア救済活動。
證厳法師というカリスマ的仏教指導者を中心としながらも、驚くことに会員は必ずしも仏教徒である必要はないという。
なんと慈済会の在家幹部であっても、個人の信仰する宗教はキリスト教でもイスラム教でも問題ないのだ。
それは慈済会が他者救済の一点にこそ、普遍的な真理を見ているからにほかならない。

現在、慈済会の会員は400万人と言われているが、それが本当なら台湾人のまさに約6人に1人が会員ということになる。もともと宗教に対して尊崇の念を抱いている台湾の人々に、その活動はまさに燎原の火のごとく広がっているようだ。台湾政府でさえ、その貢献に一目も二目もおいているという、いや、それどころか慈済の福祉活動の予算は政府のそれを遥かに凌いでいるとのこと。
また、こうした慈済の活動は、物質的な面に限らず、台湾人の精神面、倫理規範にも大きな影響力を及ぼしているように感じられてならない。会員の真摯な菩薩行は、非会員の一般人にも確実に慈悲の種を植える。その結果、慈済活動の展開において台湾人全体の倫理の底上げがなされているのではないだろうか。

慈済では、教えとしての仏教ですら、他者救済、理想的世界のための方便(ツール)に過ぎないのかもしれない。極論すれば慈済において「宗教」という枠組はなんでもいいのだ。「他者を自分のごとくに愛し救う」、そこに人間世界の普遍的な価値、究極の真理を見すえている。そういう意味で、きわめてプラグマティックであると同時に、宗教を超えた地球スケールの可能性を秘めているといっても過言ではないのだ。

しかし、やはり一方でその活動に法華経の精神が浸透しているのも事実だ。
一人ひとりが「地湧の菩薩」という自覚に基づき、本気で仏国土を作らんとしている団体、それが慈済である。

それは、ひとつの宗教的な奇跡と言ってもいいだろう。

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