日中越境EC雑感

2008年に上海でたおばおに店を作るところから始めて、早もうすぐ10年。余りの変化に驚きの連続

中国IT産業振興計画の狙い

2009-03-28 | 中国企業の動向
 日本総合研究所の肖宇生さんという方が、中国のIT系に関してコラムを持っていらっしゃいます。在日中国人の方だけに、中国企業に付いては多少楽観主義(中国の中国人自体があまりにも楽観的ですが)ではありますが比較的的確に捉えているところがあります。

 今回の記事では、政府の60兆円におよぶ景気対策のなかで、情報通信分野に対する産業振興計画について触れていらっしゃいました。

・電子製品の売上高ベースの成長率は2008年1月の17%が10月には1.9%まで急低下した。半導体に至っては2007年の24.3%増が08年10-12月期にはここ10年来で初となるマイナスに陥った。

・中国の情報通信産業が市況に大きく左右される原因は、全般的に市場開拓を重視するあまり技術開発が疎かになったことによるコア・コンピタンスの欠如にある。

・産業振興計画は、目先の景気対策よりも産業構造の高度化に重点を置こうとする中国政府の意向が色濃くにじんでおり、「コア・ハイエンド・基礎」というスローガンを掲げ、業界全般の開発力底上げにつなげようとしている。それに伴い産業再編や淘汰も厭わないスタンスだ

・産業構造の高度化に向けて、重点的に投資していく6大プロジェクトも決まった。
 それは(1)大規模集積回路の高度化、(2)新型ディスプレーの強化及びブラウン管からの完全脱却などによるカラーテレビのモデルチェンジ、(3)3G(TD-SCDMA)の産業チェーンの整備、(4)デジタルテレビの普及、(5)コンピューター産業と次世代インターネットの応用、(6)ソフト産業の育成――の6つであり、今後3年間で6000億元(約9兆円)をこれらの重点分野に投資していく。

・今回の計画で特に抜擢されたといえるのは新型ディスプレーだ。今まで部品産業の一つに過ぎなかった新型ディスプレーは3G 通信などの国家戦略プロジェクトと肩を並べることになる。これも莫大な市場をバックにデジタル化しつつある家電市場で、政府が主導権を握ろうとする意思表明だ。

・中国の情報通信企業には、華為技術や中興通信などのように独自の開発力を蓄積し、世界のメジャーと堂々と渡り合うようになった例もある。しかし、多くはコア技術を持たず、コア部品を輸入に頼っている。つまり、安い労働力を活用し完成品レベルで日米欧などの多国籍企業と競合することもある加工型だった。

・産業チェーンの観点でみると、中国企業と海外メジャーの間には、ある種の垂直分業が成り立っていたといえる。しかし、売り上げ規模は大きくなっても、利益はコア技術を持つ外資系企業に流出する構造のため、中国企業は長い間、「図体は大きいが強くない」という企業体質に悩まされた。今回の振興計画でコア技術の開発を奨励するのも、その構造を変革するところに根本的な目的がある。

・垂直分業の構図を崩しても、何十年という技術蓄積がある日米欧先進国にすぐ追いつくことなど想像できないが、中国の“馬力”を考えると意外と遠くない将来に中国情報通信産業が外資系企業と真っ向から競合する日は来るかもしれない。

・半導体産業などで韓国や台湾企業に資本力や経営スピードで逆転されてきた日本企業にとっては、新たに中国企業というライバルが登場することになる。韓国や台湾と違うのは、中国が巨大な国内市場を持っているというところだ。いずれにして日本企業の中国戦略、ひいては世界戦略に影響を与えていくことになるだろう。

・中国は本格的な改革開放を進めて30年あまりが経つが、その経済成長は凄まじく08年の国民の1人当たりGDPは3000米ドルに達し、一般的な意味での「中進国」になったと。しかし、今回の情報通信産業の構造改革は今までよりさらにハードルが高くなる。

 もちろん、それは先進国を目指す以上、避けて通れない道だが経験不足が否めない。実際、中国はここ20年、半導体産業を育てようといろいろと方策を採ってきたが、未だに成功とはいえない状況が続いている。

 今までローコストを十二分に活用し市場の拡大によって発展してきた中国はある程度、「ハードパワー」を備えていると思われる。しかしこの先はまさに「ソフトパワー」なしでは成し遂げられないことばかりだ。

 そのソフトパワーはもちろん、合理的な発展戦略とその戦略に基づいた国と企業の一心同体の実行力、そして知財保護をはじめとする法律の整備など諸々を含んでいる。中国政府の「見える手」と世界市場の「見えざる手」の駆け引きが今まで以上に激しくなるなかで、中国企業はいかにその間隙を縫って活路を切り開くか。その結果次第では、今までにない企業成長のあり方を世界に示せるかもしれない。

⇒中国人としての期待もこめたコメントになっていますが、中国経済及び中国企業の実力に関して、かなり的確なコメントだと思います。中国国内で欧米帰りの方がいろいろと記事を書いていますけど、かなり積極的なものが多く、幾つかの中国企業は世界ブランドだと評価しているものがあるのですが、有る程度先進国で通用している企業は、余り一般では有名ではないですが肖さんが上記で述べている華為技術くらいのものであり、また華為も国際水準からするとその知的所有権の侵害に付いてはアメリカからは多くの非難を浴びています。

 最近中国人の英語の討論サイト経由でいくつか面白い記事を見つけたので、今後ご紹介しようと思いますが、中国企業の海外戦略に関して今後何処の市場を狙うかという点では、大半が新興国市場に優先順位を於いています。又、既に労務費の上昇に合わせ人民元高の為、中国の大手企業が海外でのローコスト生産を検討しているという段階にいたっています。

 韓国企業が先進国市場は日本と欧米に占められている事からインドや中国に進出していったのと同じ構図になるのだろうと思います。そして、現代、三星、LGも半導体メモリーや液晶の分野では日本を凌駕してきていますが、台湾はあくまでもまだファウンドリー(製造のアウトソーシング)産業の発展にとどまっています。

 さて、韓国と台湾は1980年代から急激に発展していますから、その基点を中国の場合1990年代後半か2000年として15-20年遅れ、まずは日本より先にこの2国を目標にすることになるでしょうけど、どこまで達成できるかですね。確かに国内市場が今現在でも日本並みの規模と大きいため、韓国、台湾より優位では有ります。しかし、韓国、台湾は自らの国内市場の小ささから海外展開を必死で行ってきました。

 国内市場の大きさから中国企業のプライオリティは未だに国内市場におかれています。海外進出の目的は、海外でブランドを作り国内市場で競合に優位に立つというもので、日本や韓国、台湾が歩いた路とは大きく異なる考えに基づいています。そういう点で政府の促進策がどこまで機能するのか?個人的な感覚として、日本を含む外資系企業が中国市場で戦うには非常に苦労を強いられます。しかし、有る程度頭脳が明晰でコネクションを持っている中国人は、中国国内で小金持ちになることはさほど難しいとは思えないと感じる時がままあります。有る意味競争環境が先進国市場に比べて弱い。一方競争になると全てが価格競争になって、ラットレースの結果利益を稼げなくなって潰れるという、極めて単純な構造と思われます。

 国内企業でさえ知財の保護が弱い為に、研究開発に対するインセンティブは今のままでは決して強くならないでしょう。果たして、世界のアセンブリー基地から脱却できるか?お金を投資しただけでは克服できない、非常に厳しい路が今後予想されます。


http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMITbp000024032009
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 中国大企業の業績 | トップ | チベット農奴解放50周年 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

中国企業の動向」カテゴリの最新記事