山盛りの塩茹でトビンニャをいただいた。
奄美の北部では、「トビンニャ」と呼ばれるこの貝の本名は「マガキ貝」。奄美の言葉で「ニャ」は貝だから、これは「飛び貝」ということだ。実際、この爪で?ヒョイヒョイ海中を飛んで歩くらしい。
奄美南部では「テラダ」とか「テラジャ」などと言われているそうだし、高知では「チャンバラ貝」。でも私も薩摩隼人の夫も、奄美に来るまでこの貝のことは知らなかった...。
この貝は、こうして爪のようなのがヒョイと出ていて、これをそろりとひっぱれば、ニューと中身が全部出てくる。爪楊枝も何もいらない。
そして、ただ塩茹でしてあるだけで、とてもおいしい!クセもなくて、子供達もパクパク...。
酢味噌やマヨネーズ醤油でもおいしいと聞いていたので、試そうと思っていたのだが、テーブルに出したとたんに皆の手が伸びて、どんどん減っていく。またもや、酢味噌などは試せなかったが、おいしかった~!
実は、このトビンニャ、先日てふてふさんのところで催された島唄の『唄遊び』に家族でお邪魔して、そのお土産にいただいたもの。
『唄遊び』というのは、大勢が集まって島唄を唄いあう宴会と言ったらよいのだろうか。
昔は、家々でよく行われていたそうだが、今は滅多に聞かない。もちろん郷土料理のお店などに行けば、今でもいつでも体験できるようだが、普通の家での唄遊びに行くということは、私たちのような名瀬に住む転勤族には皆無といっても過言ではないだろう。
(唄遊びについてはこちらのコラムに詳しい。と、いっても厳密なルールがあるものでもなんでもないのだが。楽しく島唄を唄う会、ですよね?島のみなさん!)
もう、これが本当に素晴らしい会で...唄遊びの楽しさに加えて、そこに集まったてふてふさん縁(ゆかり)の方とのお話もまた楽しくて!
「トビンニャはねー、湯がき方が難しいのよ~」
皆さん口々におっしゃる。
「この爪が、ちょろって出てくるように湯がくのは、なかなか難しいのよ!」
「ここのはとっても上手に湯がいてあるけど、難しいのよ...」
「トビンニャ、湯がくの難しいのよー」
この夜、何回聞いただろうか。
なるほど、生きたままの貝を湯がき、貝さんが、「アッチィ~ こりゃたまらん...む~」と爪をちょっと出したあたりでご臨終いただくベストなタイミングがあるのだろうか。
「どうやって湯がくのですか?」
- もちろん皆さんに聞きましたとも、ワタクシ。
「塩で湯がくのよ、塩で!」
塩で湯がく、ということは他の貝とも共通に思えるし、なんとなく想像がついた。しかし、その配分とか塩を入れるタイミングとか、湯がく時間とか、何か皆さんが「難しい」とおっしゃるポイントがあるに違いない。
続けて詳しく聞こうとすると、必ずと言っていいほど誰かの唄が始まり、話が途切れる。
次の方に聞いても、
「こう、塩でね、塩で湯がくのよ。」
「塩でゆがくんだけどねー。」
「塩でねー。」
帰宅後ネットで検索もしてみたし、蔵満先生の『奄美食紀行』でトビンニャの項も再読してみたが、湯がき方は載っていなかった。
(蔵満先生によれば、バター炒めもいけるそうだ!)
どなたか...。
塩でどのように湯がくのか、どうぞご伝授いただけないでしょうか。