4月中旬から1カ月余りの調整局面を経て、NY金の立ち直りの早さが注目されている。
先週末のNY金は反発した。週末17日の通常取引は前日比31.90ドル高の2417.40ドルで終了。終値ベースで4月19日に付けていたこれまでの高値(2413.80ドル)を上回り、過去最高値を更新。一時2427.40ドルまで買われ、4月12日に付けた取引時間中の過去最高値(2448.80ドル)を視野に入れることになった。
週間ベースでは前週末比42.40ドル、1.79%高で続伸となった。
週明け20日のアジア時間のNY金は前週末の時間外取引の終値(2419.80ドル)をやや上回る2422.20ドルでスタート。日本時間の午前10時前には前週末の高値だった2427.40ドルを上抜けるとそのまま一気に2440ドル台に乗せるところまで駆け上がった。
この水準では当然売り物が控えるが、もともと4月12日に過去最高値2448.80ドルを付けた際に、中東情勢に反応し急伸した際の高値だったことから、いわゆる“しこり玉”はなく、その後あっさり更新し一時2454.20ドルまで付けている。
その時間帯に大阪取引所の先物価格(JPX金)は1万2283円まで付けている(念のため書いておくと、この価格は税抜き価格)。 現在は日本時間の17時だが、ここまでのNY金の高値はこの2454.20ドルで現時点までの過去最高値となっている。
急伸してつけた4月の高値は、当時イランが報復措置でイスラエルに対し空爆を実施するとの米CBSニュースの報道に反応したものだった。 本日の上昇も手掛かり材料としてイラン大統領のヘリコプター事故を指摘する向きもいるが不明。
先週末の上昇にて、当日の金ETFの最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高が5.18トン増と、まとまった買いが見られた。
3月15日の14.98トン以来の規模だが、ポイントは価格水準が大きく異なること。当時のNY金の終値は2161.50ドルだった。17日は終値ベースで過去最高の2417.40ドルで、250ドルほど上の水準での大量買いが意味するものは何か。
金市場での欧米機関投資家は、FRBの金融政策の方向性の不透明さから、本格参入を見合わせるどころか、ここまでETF(上場投信)を介して金(ゴールド)の売り(益出し売り)に回って来た。アジアその他の個人中心の金ETF買いは、欧米の機関投資家の売りにより消され、22年第1四半期から24年第1四半期まで8期連続の売り越しが続いて来た。この間の累計は739.3トンに上る。
かつて欧米マネーが金ETFから流出すると下げ相場に転じていたが、今回はその売りを新興国中央銀行と個人投資家による草の根的な現物買いにすべて吸収されている。
この欧米機関投資家の売り一方のスタンスに変化が見られ、買いに入った可能性があることから、流れはおもしろくなってきた。