亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

中東情勢過度の警戒緩和でNY金急落

2024年10月09日 17時04分32秒 | 金市場

10月8日のNY金は3営業日続落した。通常取引は前日比30.60ドル安の2635.40ドルで終了。約2週間ぶりに2650ドル割れで取引を終了した。

先週の米雇用統計の結果を受け、11月連邦公開市場委員会(FOMC)での連続大幅利下げを前提に組まれていたポジションの巻き戻し(手じまい売り)に加え、中東情勢を巡る過度な警戒が緩和され売り優勢の流れとなった。

 

主要な経済指標の発表がなかった8日の金市場は、NY時間早朝まで前日の終値(2666.0ドル)をやや下回る水準を横ばいで推移した。ただし、通常取引入る少し前から売りが膨らんだ。

レバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラのナンバー2であるナイム・カセム師が8日、レバノンの停戦に向けた取り組みを支持すると述べたと、ロイター通信がベイルート発で報じたのが売りを誘発した。一方、イスラエルのネタニヤフ首相はテレビ演説で、「後継指導者を含む数千人のテロリストを排除した。ヒズボラは過去数年で最も弱くなっている」と述べたと伝わった。

 

もともと9月に一時2700ドル突破まで駆け上がった相場を主導したのが、CTA(商品投資顧問)と呼ばれる短期筋のファンドの買い攻勢だったが、中東をめぐる過度の警戒感が緩んだことで、売り戻しに転じたものとみられる。2660ドル近辺からそのまま一時2623.40ドルまで急落状態になったが、まさにCTAがらみの下げといえる。

いったん生まれた流れに乗る運用手法を取ることから、上下双方ともに値動きが加速する傾向がある。

一連の売りが一巡した後も、断続的な売りが続いたのが8日の特徴で、下げ局面で買いが入っていた前日までの展開とは異なるものとなった。その後の反発力も限定的で2635.40ドルで終了。その後の時間外取引も2640.70ドルで終了。節目の2650ドルを回復することはなかった。このところ上昇を続けていた原油相場も同じ動きで、米国産原油WTIもNY時間に下げ足を速めた。

 

 一昨日7日の最後に、FRB利下げ見通しの修正を迫られたわりに底堅さを維持するNY金の背景を、「中東情勢の方向感が見通せないことによるが、イランはこの局面でイスラエルとの全面戦争は望んでおらず、イスラエルも同じと思われる」と書いたが、昨日の流れはそれに沿ったもの。

もっとも相手がヒズボラであって、イスラエル本土の防空網は米軍がサポートしていることと、戦力の違いがこうした結果につながっている。

イラン国内では、ここまでの国内経済の状況に一般の不満も高まっていることから、本格的な戦争も難しくなっていると思われる。

ただし、7日は次のようにも書いた。「地政学的要因は何か偶発的な出来事で流れが変わるし、また変えようとする向きもいるので予測が難しい」。

 

本日は9月FOMC議事要旨が公開される。日本時間では明朝3時だが8日にウィリアムズNY連銀総裁ほかが話したように年内は0.25%の利下げをあと2回続けるというのが基本方針であることに変われはない。

 

 

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