亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金 史上最高値圏で静かなる滞留

2024年03月12日 20時38分02秒 | 金市場

先週末から昨日週明けと3日間を使う作業があり、昨夜は更新を見送りということに。土日は外部からのコンタクトがないので、好きなようにメリハリ付けながら集中して作業できるので、中断されることもなくむしろやりやすい。

 

その先週末のNY金はついに2200ドルを突破。一時2203.00ドルまで買われた。

報じられたように2月の米雇用統計は強弱入り交じる内容だった。前月分の雇用者数の下方修正が大きかったことが減速を意識させ、一時は過熱とも表現されていた米労働市場に軟化の兆しと受け取られた。前日の米上院金融委員会でのパウエル連邦準備理事会(FRB)議長による、インフレ目標2%へ低下に対する確信が持てるのは「そう遠くない時点」との発言も伏線になっていたこともあり、米長期金利とともに主要通貨に対しドルも下落。金市場では目先筋の買いが続いた。

 

この日は2200ドル近辺の売りをよくこなし、2185.50ドルで終了。 先週はここにきてのNY金の最高値更新について、買いの主体がモメンタム系ファンドと書いた。実際に先週末米CFTC(商品先物取引員会)が発表したデータでは、2月27日時点での短期筋ファンド(マネーマネジャー)のポジションは重量換算にして前週の211トンから407トンまでネットの買い建て(ロング)は196トンもの増加となっていた。 一種の投機的攻勢が高まっているといえるが、先週末8日にかけての上値追いした流れを見ると、この傾向は今週に入っても続いていると思われる。

 

先週も似たようなことを書いたが、NYコメックス中心限月(2024年4月物)の取組は32万9204枚(1枚=100オンス)だったが、8日の出来高は35万5570枚とそれを上回っていた。つまり8日までの上昇分の利益確定売りが出ているとするならば、それを消化する買いが入っていることになる。回転が利いているという風に書いた。

RSIでは過熱だとか何だとか、テクニカル面で過熱を指摘する声は2100ドルを超えたころから高まっている。それら弱気は無視されたかたちになっている。展開はまさに「もうはまだなり」となっている。値上がりの継続や上昇率などだけでは判断できない、「相場の質」が足元の展開を作っているのではと思っている。ファンドには、まだ余力がありそうだ。

結局、週明け11日の相場も小幅に続伸した。NYコメックスの通常取引は3.10ドル高の2188.60ドルで終了。8連騰となり終値ベースでの史上最高値更新は7営業日連続となる。8営業日続伸は手元の資料では2020年7月の10連騰以来のこと。

 

いずれにしても記録的な上昇が続いている。しかし、この値動きほどには過熱感を感じない。

それは高値更新が、イベント含みの突発高によりもたらされていないことによる。

金相場のパターンとしては、何か事件事故の発生や、意外性の高い(サプライズ)指標の発表で急騰を演じるものの、騰勢は短期で失われ時に急落というパターンが繰り返されてきた。足元の値動きは、いわばイベントレスにもかかわらず3月1日は41ドル高、開けて4日は30.6ドル高と一気に水準を切り上げたが、その後は売りをこなしながら、小動きといえる。

11日などなんと!米国関連で主要な経済指標の発表もなく、手掛かり不足のなかで2185~2190ドルのわずか5ドルの範囲に取引が収まるという、史上最高値圏としては非常に珍しい展開となっている。40年近く金市場を見ているが、初めてではないか。

 

FRBによる利下げ転換という、金融マクロ環境の変化を映した相場につき、そもそも地味な環境と言えばそれまでだが、今夜の2月米CPI(消費者物価指数)で値動き(ボラ)は大きくなるのだろうか。

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