亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

200ドル駆け上がったNY金

2022年12月02日 20時57分17秒 | 金市場

「200日移動平均線が現在1804ドル前後としたが、どのようにアプローチするか。12月FOMCをきっかけに突破するとみていたが、どうなるか」と、昨夜の更新で最後に書いたが、その後NY金は、日本時間の22時過ぎ、つまりNYコメックスの通常取引入り少し前の時間(現地午前8時過ぎ)に1800ドル台に乗せ、そのまま目立った抵抗もなく200日線を突破すると2時間後には1817ドルまで上昇となった。

その後は1810ドル超を維持して横ばいで推移し1815.20ドルで通常取引は終了。その後の時間外も横ばいで1817.40ドルで終了。57.50ドル高ということに。8月12日以来、3カ月半ぶりの高値ということに。

ただし、NY金を押し上げたのはドル指数(DXY)の急落につき、指数における通貨の構成比率が日本円は2番目に高いものの13.6%に過ぎない。円建て価格に対するドル円の下落(つまり円高)の影響大きく、国内JPX金価格はNY金の大幅上昇を消して、ほとんど前日比変わらず、むしろ若干値下がりということになった。

 

ここまでを振りかえるとNY金は、わずか1カ月で200ドルほど駆け上がったことになる。

 

NY金は11月の連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれた11月2~3日に向けて水準を切り下げ3日の取引時間中の安値1618.30ドル、当日の通常取引終値(清算値)1630.90ドルが年初来安値となっていた。いずれも2020年4月以来、約2年半ぶりの低水準だった。

 

その時点までドル指数(DXY)の上昇が売り手掛かりとなっていたことに加え、米長期金利(10年債利回り)も4%を超え一時2007年11月以来15年ぶりの水準に達したことで、ファンドの売り建て(ショート、空売り)が機械的に(コンピューター・プログラム)積み増しされ、安値に達していた。先物市場ではショートは買戻しで清算されるため、将来の買い圧力が溜まっていたことを意味する。

 

その売りポジションが、3日のFOMCにて次回の会合では利上げ幅の縮小の可能性があることが示され、さらに翌4日の10月の米雇用統計にて賃金上昇(平均時給)が前年比4.7%上昇と、伸び率が5%を下回ったことを手掛かりにドルが下落に転じたことで、買い手じまいされることになった。 雇用統計発表日11月4日のNY金は45.70ドル高と大幅反発で終了(終値1676.60ドル)。

 

この日が、空売り(ショート)の買戻しによるNY金反転相場のスタート地点で、同時にドル指数の下落への転機となった。

 

次の節目は、11月10日に発表された米10月の消費者物価指数(CPI)が予想(前年比8%)を大きく下回り7.7%になったことだった。

 

インフレのピークアウトが意識され、金市場では買戻しが加速しこの日1日で40ドル高の1753.70ドルで終了。その後も買戻しは続き一時1790ドル台まで上昇、先物市場でのショートカバーラリー(買戻しによる上昇)は、米CFTC(商品先物取引員会)のデータから判断して、先週の米感謝祭前の段階で一巡したとみられた。市場では12月のFOMCが接近する中で、FRB高官の個々の発言内容に反応する状態が続いたが、焦点は30日のパウエル議長の講演内容に当てられていた。

 

この日議長は、景気への過剰な影響を回避する目的で利上げを減速する姿勢を強く示したことを受け、翌12月1日のNY時間に米長期金利が一時3.507%と9月下旬以来の水準に低下し、ドルの売り戻しも加速。ドル指数はこの日、一時104.662と8月11日以来の安値を付け、200日移動平均線を下回り、下落トレンド入りを示唆する展開となった。

 

1日のNY金はこの中で買い先行の流れが続き心理的な節目の価格1800ドルを突破。 冒頭のように200日移動平均線を目立った抵抗なく突破した。ここまでの展開とCFTC(米商品先物取引委員会)のデータからみて、12月1日の急騰はショートカバー(買戻し)ではなく新規の買い(フレッシュ・ロング)が主導したものとみられる。

 

本日は2時間後に注目の11月の雇用統計の発表を控える。雇用者(NFP)増加数や失業率よりもむしろインフレ関連で平均時給の伸びが注目される。すでにドル円が急落し133円台に入っているが、引き続き急な値動きには注意したい。

 

本日は日本時間の早朝に、米投資会社ブラックストーンが手掛ける非上場の比較的規模の大きい不動産投信の解約制限のニュースが飛び込んできたが、嫌な感じというか、身構えさせる要素のあるニュースと思った。ほころびの予兆の可能性もあり経過を見守りたい。。

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