モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

平ヶ倉稜線を行く。(1)イワテシオガマ編。(2019年8月26日)

2020年08月28日 | 乳頭・千沼ヶ原

本記事は自ホームページの旧記事をブログ用にリメイクしたものである。

8月26日は朝いちで鞍掛山に登って、オオナンバンギセルを見た(こちら)後、
9時半頃から平ヶ倉コースを歩いて、千沼ヶ原にも行ってみた。

写真は早朝、鞍掛山に登る直前、網張温泉付近の牧野から千沼ヶ原の方角を見たものだが、撮影していたらベコが近づいて来た。

網張温泉付近の牧野から千沼ヶ原の方角を望む。



登山道は平ヶ倉沼から稜線を通って走っている。
この稜線、名無しのようなので、仮に平ヶ倉(読みは「たいがくら」)稜線としておく。

手持ちのガイド地図を見たら、コースタイムは約三時間とあった。
非合法マップで見ると、こんな感じ。



早朝、鞍掛山で会った地元の方に聞いたら、このコースはクマさんが多いので注意して下さいとのこと。

何故こんなマイナーで物騒なコースを今頃の時期に歩くのか。
facebook友人によると、この稜線には珍草イワテシオガマが生えており、
また別筋の情報では北東北では珍しいミヤマコゴメグサもあるとのこと。

どちらも花はちょうど今頃がベストの時期のようだ。

平ヶ倉沼の登山口から歩き出したら、いきなりアケボノシュスランの群生に遭遇。

地味なランだが、出会うのは二十年ぶりだろうか。まだ蕾ばかりだったが、数が多く、沼の上の方まで点々と生えていた。


アケボノシュスラン                                                                                   平ヶ倉沼の手前で送電線を潜る。
 


歩き初めはブナ林だが、すぐに薄暗い杉の植林地に変わる。

この日はワタシ以外誰も居ないようなので、クマ除けのホイッスルを鳴らしっぱなしだった。
杉林が終わり、送電線の下を潜り、またブナ林に入ったら平ヶ倉沼(たいがくらぬま)にほどなく到着。




平ヶ倉沼



この日の平ヶ倉沼は風があるせいか、波が荒く、神秘的な雰囲気とは言えなかった。

オクトリカブト



周囲の林に咲いていたのはトリカブトくらいだったが、

もう少し早ければジャコウソウ、晩春初夏ならば、ミズバショウやシラネアオイなど。
ここはけっこう花の多い場所のようだ。


平ヶ倉沼の水場                                                                                           ルイヨウボタン(実) 
 


ルイヨウボタンの花は黄緑で地味だが、実は青くよく目立つ。サンカヨウの実に似ていると思ったら、同じメギ科だった。
沼から稜線までの斜面はブナやミズナラ、トチなどの広葉樹原生林が続く。



ここで小休止していたら、物言わぬ登山者一名に追い越される。

今日は独りではなかった(この後にもうひと組とすれ違うが、こちらも挨拶は無し。ここは寡黙な登山者ばかり)。

カツラだろうか。凄い大樹だった。

 


ホテイシダだろうか。




小さな沢を何回か越える。

エゾクロクモソウ                                                                                         ジャコウソウ(咲き残り)
 


上に行くほど、斜面の勾配が急になり、林も乾いて来た。

オオカニコウモリ
 


また青い実。今度はツバメオモトだった。


ツバメオモト(実)

 


そろそろ稜線に出るかなという処、疎林の中にそれは咲いていた。

イワテシオガマ



イワテシオガマの根生葉                                                                               イワテシオガマの花
 



イワテシオガマ(横から)



イワテシオガマ Pedicularis iwatensis は奥羽山系のごく限られた場所、

岩手秋田の県境稜線の標高1000m前後の笹原などに生育してると聞く(最近、宮城でも報告あり)が、
ろくに図鑑にも載っていない、ほとんど話題にもならない幻のような植物だ。
ハンカイシオガマ(関東や東海地方に分布)に似ているが、花冠の長さは4cmでハンカイシオガマより長く、
萼は先が浅く不等に3裂し、鋸歯が見られるとのこと。
花はでかいだけで格別綺麗ではないが、草姿がとてもユニークだ。
羊歯を思わせるような葉の間から、横方向に50センチ以上も花茎を伸ばし、その先に上向きに穂花を咲かせる。
これは笹や他の植物に寄り掛かりながらも花を咲かせて子孫を増やそうと進化した結果だと思われるが、
実にユニークな戦略だと思う。
そのため、全体像が捉えにくく、多くの方は穂花の先端部だけアップで写して終わることが多い。

なおこの植物、比較的大型だが、他のシオガマやママコナ同様、半寄生植物である。
ただし何に半寄生しているかはよく分からない。

昨年からこの花を見たいと思い、まずはネットで検索し、情報を集めたところ、
今回訪ねた山域が最も遭遇しやすいように思えた。
また近々ではfb友人のEさんやKさんの情報に助けられた。
両氏にはこの場を借りて感謝申し上げる。

大型のシオガマギクの仲間には他にオニシオガマ Pedicularis nipponica がある。
こちらは焼石岳や日本海側の高山、深山の湿地でよく見かけるが、この山域にあるかどうか不明。
イワテシオガマを見たすぐ上の稜線で、別のシオガマが咲いていた。
こちらは当初トモエシオガマかと思ったが、ただのシオガマギクのようだ。
更に歩くとエゾシオガマが。
千沼ヶ原に行けばヨツバシオガマも有るから、このコースにはシオガマの仲間が四種類あることになる。


シオガマギク                                                                                              
エゾシオガマ
 


ソバナ(咲き残り) 



花は終わっていたが、シオガマギクの生えている疎林の林の中にハクサンサイコも有った。

このセリ科、東北では珍しく、私自身は真昼岳、焼石岳(南本内岳)でしか見たことがない。


ハクサンサイコ



(2)ミヤマコゴメグサ編。」へ続く。





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