モウズイカの裏庭2

秋田在・リタイア老人の花と山歩きの記録です。

エンゴサクと〇〇ケマン

2022年04月19日 | 野草/春

スプリングエフェメラルと言えば、カタクリやアマナなどのユリ科植物、
キクザキイチゲやニリンソウなどキンポウゲ科イチリンソウ属の種類が
よく知られているが、
ケシ科キケマン属にも幾つかの種類が有る。

本頁ではキケマン属の植物を取り上げてみる。

そのひとつ、エゾエンゴサクは、
北海道に行くと、青いカーペットを敷いたような花風景を作り、実にみごとである。

この仲間は本州、東北地方でも見られる。ただし北海道のように密生しないが、
その澄んだブルーの穂花は素晴らしい。
東北のこの植物は当初、エゾエンゴサクとされていたが、
約20年前から、別種のオトメエンゴサクとされるようになった。

写真は秋田県男鹿半島で見たものである。ここのものは素晴らしいコバルトブルーだ。

2011/04/13 男鹿半島にて。






次の二枚は仙北市(西木)のもの。こちらはやや濃いめの青紫だ。

2017/04/27 仙北市にて。



2017/04/27 仙北市にて。カタクリが少し混じっている。




オトメエンゴサクについては、ウィキペディアに詳しく記載されている。

少々長くなるが、ほとんどそのまま抜粋引用させて頂く。

『オトメエンゴサク(乙女延胡索、学名:Corydalis fukuharae)はケシ科キケマン属の多年草。 
従来、本種は南千島、北海道、サハリン、オホーツク海沿岸に分布するエゾエンゴサク (C. ambigua)と混同され、
日本国内においては、本州の中部地方以北にも分布されるとされてきたが、
本州の東北地方から北陸地方に分布するものは、別種のオトメエンゴサク (C. fukuharae)とされた。
これは、スウェーデンの植物学者 Magnus Lidén(1996)(英語版)によるもので、
M. Lidénは、先述のエゾエンゴサクを C. ambigua から C. fumariifolia の亜種に変えたことに加え、
本種について、「やや変異の多い種で、C. fumariifolia と近縁であるが、
基部が細くて長い距や蜜腺が細長い点などで区別される」、として新種として記載命名した。
エゾエンゴサクとよく似ており、地下に球形の塊茎がある。
茎は細く、直立して高さは10-23cmになり、鱗片葉の腋から茎を出し、まれに茎の下部につく葉の腋から枝を出す。
葉は薄く、表面は緑色、裏面はわずかに粉白色をおびる。
2-3回3出複葉となり、小葉は全縁か深く全裂し、最終裂片は倒卵形で、先は鈍形または鋭形になる。
花期は4-5月。総状花序ははじめやや密に重なるが、すぐに伸長して3-13個の花をつける。
小花柄の基部の苞は長楕円形になり、全縁かまれに最下が浅裂し、先は鋭形または鈍形になる。
近縁種のヤマエンゴサクの苞には歯牙または欠刻があり区別できる。
小花柄は細く、長さ5-12(-18)mm、苞と同長、弓状に半曲して果実をつける。
萼片は2個で、卵形から線形になり、長さ1-1.5mm。
上側の花弁の距は長楕円形、まっすぐで、基部はやや細く、花冠は青色から青紫色のものが多いが、
全体が赤紫色や白色のもの、距が赤紫色のものなど変異が多い。
花はエゾエンゴサクによく似るが、エゾエンゴサクの距は基部が太く、しだいに細くなる傾向が強いが、
本種の距は同種より細長く円筒形になる傾向があり、
上側の花弁の長さは12-16mmになり、蜜腺も細長い。
下側の花弁は長さ10-12mmになり、明確に突出する小距があり、
その基部には通常、小さな爪がある。
果実は蒴果で、長さ20-25mm、幅2mmになる線形で、種子は約10個ある。
なお、福原達人 (2016)は、「エゾエンゴサクとの区別点や分布はなお検討を要する」としている。
春先に花を咲かせ、落葉広葉樹林の若葉が広がる頃には地上部は枯れてなくなり、
その後は翌春まで地中の地下茎で過ごすスプリング・エフェメラルの一種。 
日本の本州の北部地方、中部地方に分布する。』

引用は以上。

その後、出版された平凡社の改訂新版・日本の野生植物(2017年、第2刷)にも、
オトメエンゴサクはウイキペディアの記述とほぼ同内容で記載されていたが、
『エゾエンゴサクとの区別点や分布はなお検討を要する』
との文言が有った。

face book自タイムラインや自ホームページ上では、
2017年以降、自分が東北で見たものについては、
オトメエンゴサクの名称を使用していた。
ところが、

2019年3月、植物に詳しい御方から、face book上で次のようなアドバイスが有った。
こちらもほぼ原文のまま、引用させて頂く。

『1996年に Lidénが本州のエゾエンゴサクをオトメエンゴサクとして新種としました。
タイプ標本は山内村黒沢のものです。しかし、このオトメエンゴサクについては多くの疑問点があり、
大曲の沖田さんが北海道産のものと秋田県産のものを花の形態、密線の形態、距の形態について調べました。
その結果は明確に区別できなかったことを秋田自然史研究(2015年)に発表しています。
望月陸夫氏の植物分布図(2017年)でもエゾエンゴサクとなっています。
以上のことからエゾエンゴサクとした方が、適切かと思います。いかがでしょうか。』

それに対し、私の方は次のようにレスポンス。
『そうですか。貴重な情報並びにご指摘ありがとうございました。
私自身は植物分類学者ではありませんし、また自身で確かめたわけでもありません。
趣味でやっている素人ですので、世の趨勢に従うまでです。』

その後、この問題に関して新たな情報は入っていないが、
自信が無くなったので、最近は「エゾエンゴサク?」と表記するようにしている。

エゾエンゴサク?を続ける。

2015/04/10 男鹿半島にて。
 

                                                                                                                                            2017/04/27 仙北市にて。

2016/04/21 湯沢市にて。



ほのかに紅味を帯びた個体もあった。

2017/05/09 青森市梵珠山にて。
 
                                            2017/05/02 秋田市高尾山にて。


いろいろ歩き回っていると、まれに白花個体にも出くわす。

エゾエンゴサク? 2018/05/01 岩手県東根山にて。



青森の浅虫温泉沖の湯の島では白ばかりだった。

エゾエンゴサク? 2019/04/13 青森市湯の島にて。



 


東北、特に日本海側地方では、エゾエンゴサク?をそのまま細く、ひ弱にしたような種類もよく見かける。

こちらはミチノクエンゴサク Corydalis capillipes で、一応、球根(塊茎)を持つ。

ミチノクエンゴサク 2015/04/16 横手市にて。






2016/04/21 横手市にて。
 

                                               2018/03/30 八峰町にて。

ミチノクエンゴサク 2021/04/03 男鹿半島にて。



キケマン属 Corydalis には、地下に球根(塊茎)が出来ないが、丈の高いタイプが有り、
〇〇ケマンと呼ばれる。

東北でよく見かけ、春に咲くものは、ミヤマキケマンとムラサキケマンの二種類である。
いずれもスプリングエフェメラルに入るかどうかは何とも言えない。
ミヤマキケマンは地滑りで崩れた斜面などに最初に侵入する先駆植物(パイオニア)の傾向が有り、
土壌が安定して他の植物が茂ってくると消えてしまう。
花は奇麗だが、茎を折ると乳液が出て、ひどい臭いだ。しかも有毒なので取り扱いには注意。
ムラサキケマンは柔らかい二年草で、人里の土壌が攪拌されるような日陰地でよく見かける。

ミヤマキケマン 2016/04/20 由利本荘市にて。



ミヤマキケマン 2018/04/28 男鹿半島にて。 
 
                                           ムラサキケマン 2014/05/13 由利本荘市にて。



この仲間には秋に咲く種類も有った。

ナガミノツルキケマン 2016/09/16 岩手県西和賀町にて。
 


この仲間は奇麗な花が多いが、何故か園芸利用されることは非常に少ない。

西洋では、一部の種類がロックガーデンなどに利用されている。
昔、一時期、我が庭にも居たので、一応、報告しておく。

コリダリス・ソリダ `ベスエヴァンス' Corydalis solida `Beth Evans'

2009/03/29 自宅にて。



2009/04/04
 自宅にて。



以上。




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4 コメント

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勉強になりました (秋田の爺)
2022-04-19 10:04:28
豊富な写真と丁寧な説明文がすごい。
なぜ「エゾエンゴサク?」という表現なのかも理解しました。それにしてもエンゴサクの分類については種の概念や連続性について考えさせられます。またタイプ標本の標準度または基準度にも考えさせられます。
私なんかはついこの前まで古い分類のエゾエンゴサクと思っていましたし、今では東北のものをオトメと言うようだが分けるだけの意味があるのかな、程度です。自分が分類屋でないので学会で認めたものを信じるしかない…と言ったところです。
返信する
秋田の爺さんへ。 (モウズイカ)
2022-04-19 12:44:49
コメントありがとうございます。
植物の分類って難しいですね。
最近はスマホで撮った写真から名前を教えてくれるアプリなども有るようですが、
私などはいまだに古式ゆかしく図鑑での絵合わせです。
最近気づいたのは、植物というものはDNAをもった生き物で、日々変化(進化?)しつつあるものだと言うこと。
コロナウィルスほど素早くはないでしょうが、
植物も変異することによって新しい種類が形成されているようです。
だとしたら、我々の人生にとって一見何の関係も無いように見える植物の現象、
例えば葉っぱの裂け方や花の小さな付属物の形態の微細な変化なども、
もしかしたら意味のあることなんでしょうね。
何やら脱線してしまい恐縮です。
返信する
Unknown (サクラ母)
2022-04-19 14:32:36
勉強させていただきました
これからもよろしくお願いします
返信する
サクラ母さんへ。 (モウズイカ)
2022-04-19 14:44:23
コメントありがとうございます。
また先日はムラサキケマンの件でお騒がせしました。
この仲間については、まだわからないことが多いです。
つい先日、秋田には無いとされていたヤマエンゴサクが見つかったという報告を知ったりして
私自身、揺らいでおります。
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