(本頁は「全国山の日協議会」への投稿文「東北の山を眺める/まずは鳥海山・その2」の原本です。)
鳥海山は秋田と山形の県境付近に聳える火山(標高2236m)です。
今回は山形県の各所から見た鳥海山について語ります。
鳥海山は山形県では庄内平野からいきなり聳えています。
庄内平野は大部分が標高30m以下(酒田市の中心街は5mにも満たない)の低平な地形なので
ここから眺める鳥海山との比高は約2200mとなります。
これだけの高度差で平野から聳える山は国内ではあまり無いと思います。
前にも申し上げましたが、平地から間近に見える山でこれ以上の標高差がある山は
(安曇野から望む北アルプス、甲府盆地北部から望む南アルプスを除けば)
富士山と富山平野から見る剱岳立山、加賀の白山、日光の男体山女峰山、上越の頚城三山くらいでしょうか。
庄内平野から望む鳥海山の姿は単独の山ではなく、おおまかにはふたつのお山。
右側に鳥海山本体が高く聳え、左に笙ヶ岳など西鳥海山が低く並ぶ構成になっています。
写真は遊佐町の北部(A、北目付近)から見た姿です。
参考マップ
同じ遊佐町でも少し南の方、町の中心に近い月光川河川公園(マップではB)から見るとこうなります。
私はここと次の八幡町から見た姿が「庄内鳥海」の典型ではないかと思っています。
なお月光川河川公園は映画『おくりびと』のロケ地としても使われました。
主人公の本木雅弘さんがこの川の堤防の上に座ってチェロを弾くシーン(バックに鳥海山)が印象的でしたが、
私が2019年に訪ねた時は本木さんが演奏時座っていた椅子がありました(現在は無いようです)。
次の鳥海山は(酒田市)八幡町のファミリーマート(マップではC)から眺めたものです。
少し前、富士山がよく見えるローソン(外国人観光客が大勢来て困っている)が話題になっておりました。
こちらは鳥海山に関してはとても優れたビューポイントのひとつですが、
いつ行っても鳥海山を眺めている人はほとんど、いや全く居りませんでした。
この場所は今年四月下旬にも通りかかっております。
この時はあいにく雲で鳥海山本体の姿は見えなかったのですが、
笙ヶ岳山頂のすぐ下に有名な雪形が見えました。
この雪形は「種まきじいさん」と呼ばれています。
ちょうど農作業を始める頃に現れるので、昔から農作業の目安となったと言われています。
八幡町から日向川に沿って東に進むと、升田という集落に到着します。
鳥海山の南側には出羽丘陵が連なるため、鳥海山は見えにくくなりますが、
升田は鳥海山を南の方角から望める貴重な平地です(マップではD)。
位置的には鳥海外輪山山頂部の約10km、ほぼ真南に位置し、
標高は210~220mなので、山頂部との標高差は約2000mです。
ここから望む鳥海山はやや幅広い形になります。
鳥海山の東側には丁岳山地が連なり、低平地は全く無く、山には登山道も無いため、
鳥海山の姿を見ることが出来ません。
遠く南東の新庄盆地まで行くと、鳥海山は出羽丘陵の上に姿を現しますが、
距離があるため、庄内のように大きく見えないです。
真室川町の大沢地区に行くと、限られた場所(マップではE)から小さな鳥海山を見ることが出来ます。
こちらから見る鳥海山は山頂部が幅広なので富士山と言うよりもキリマンジャロかなと私は思いました。
次の三回目は秋田から見た鳥海山を語ります。
以上。
「東北の山を眺める3/秋田から見た鳥海山」へ続く。