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人命より利権か。イベルメクチンが厚労省に承認されると困る人々

2021年03月15日 | 健康・病気

by 大村大次郎

 MAG2NEWS 2021.03.03

    以前掲載の「権力誇示のため『イベルメクチン』をコロナ薬として承認せぬ厚労省のカン違い」では、厚生労働省の人命軽視とも言うべき許しがたい所業を暴いた、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、同省がイベルメクチンをコロナ薬として承認しないさらに闇の深い理由を明らかにするとともに、そんな厚労省を擁護する「御用医師」の実名を記しています。

【関連】権力誇示のため「イベルメクチン」をコロナ薬として承認せぬ厚労省のカン違い

大村大次郎(おおむら・おおじろう)

大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある

なぜ新型コロナの特効薬「イベルメクチン」は緊急承認されないのか2?

前回号でご紹介した新型コロナの特効薬「イベルメクチン」の件の続きです。

前回号では、「日本発のイベルメクチンという薬が、世界中で新型コロナの治療に効果を発揮しているという報告がある」「しかも予防にもかなりの効果が認められている」「しかし厚生労働省はなかなか新型コロナの治療薬として承認しないので、日本の医療現場ではなかなか使えない状況になっている」「そして厚生労働省がなかなか承認しないのは巨大な利権が絡んでいる」ということをお伝えしました。

このイベルメクチンは、昨今、報道番組で相次いで取り上げられています。

特に2月25日のBS-TBSの『報道1930』では、イベルメクチンが特集的な扱いをされていました。この『報道1930』では、ノーベル賞医学生理学賞を受賞した京都大学の本庶佑教授や、イベルメクチン研究の第一線におられる北里大学の花木秀明教授も出られていました。

「厚生労働省は試験で効果が確認できなかったとしているが、厚生労働省が行った試験は現実とかけはなれた条件で行っている」「なぜ普通の条件で試験をしないのか?」「厚生労働省は平時での対応をしている」「しかし今は世界的なパンデミックのさなかであり、人がどんどん死んでいる」「なぜ有事の対応をしないのか」と述べた花木教授の発言には心打たれるものがありました。

また本庶佑教授も「厚生労働省に近い研究者だけの判断で行っている」として厚生労働省の閉鎖性を強く批判され、有効な薬品がなかなか使えない状況を嘆いておられました。

厚生労働省というのは、医療界の総元締め的な存在です。医療に関するあらゆる許認可を握っています。研究者や医者にとって、厚生労働省を批判することは、非常に恐ろしいことのはずです。実際、医者や研究者の側から、あからさまに厚生労働省を批判するようなことはそうあるものではありません。

だから花木教授や本庶教授の発言というのは、かなり腹をくくった上での、いわば「命がけの発言」だったといえるでしょう。

その一方で、感染症の専門家としてよくテレビなどにも出演している国立国際医療センターの忽那賢志医師は、イベルメクチンの報道を抑えるようにして「イベルメクチンはエビデンスが不足しているから承認されていないだけ」という、厚生労働省の従来の見解通りのことをSNSで発信しています。

しかし、この忽那医師の発言は、花木教授が述べた「厚生労働省は試験で効果が確認できなかったとしているが、厚生労働省が行った試験は現実とかけはなれた条件で行っている」「なぜ普通の条件で試験をしないのか?」「厚生労働省は平時での対応をしている」という発言の回答にはまったくなっていません。

忽那賢志医師の所属する国立国際医療センターというのは、厚生労働省のおひざ元であり、忽那医師は、完全に厚生労働省側の医師といえます。実際に、忽那医師のこれまでの発言を見ても厚生労働省を擁護するようなものばかりでした。「厚生労働省のやることはすべて正しい」「厚生労働省の意にそわない情報はすべてフェイクニュース」というスタンスを取り続けています。

しかし、多くの国民がもう気づいているように、厚生労働省は日本人の健康や命を守る組織として、到底、褒められたものではありません。それは新型コロナ禍で、十二分に露呈されてきました。

人口あたりのPCR検査は途上国よりも遅れをとっています。にもかかわらず、厚生労働省は御用役人や御用研究者を使って、「PCR検査は不確実だから増やしても意味はない」というようなことを喧伝し続けてきました。

しかも、前回号でご説明したように、厚生労働省は世界中で使われている日本メーカーの最新鋭のPCR検査機器をなかなか承認せず、これを日本の病院が使えるようになったのは、コロナ第二波の始まった去年の8月以降のことだったのです。

感染症対策というのは、まず感染者を把握することのはずです。不確実であろうと、PCR検査が今のところ感染者を見つける最善の方法なのだから、PCR検査を増やすことがまず第一なはずです。もしPCR検査が本当に役に立たないというのであれば、去年の4月以降、なぜ急拡大させたのでしょうか?去年の3月までの、症状が相当悪化してもなかなかPCR検査を受けさせないという方針を貫けばよかったはずです。あの方針を貫ぬかずPCR検査を増加させたのは、やはりPCR検査をしなければ始まらないというのがあったからでしょう。

日本はたまたまファクターXというよくわからない要因により、欧米よりも感染
者や死者が桁違いに少なくて済んでいます。しかし、もしファクターXがなく、欧米と同じように感染者や死者が出ていれば、厚生労働省は形がなくなるくらいボコボコに叩かれているはずです。

ちなみに、忽那医師もマスコミなどで「PCR検査はあまり増やしても意味がない」と発言していた方です。

また欧米の何十分の一、何百分の一という感染レベルでありながら、日本は医療崩壊の危機に瀕してしまいました。昨年の12月から1月にかけては、症状が出ているのに入院できない、ホテル療養さえできず、自宅待機を余儀なくされ、なんの治療も施されずに亡くなってしまうという方が非常に多くおられました。

それだけ日本の医療システムが脆弱で、欠陥だらけだったということです。そして、今の日本の医療システムを構築し、コントロールしているのは厚生労働省です。つまり、厚生労働省は欠陥だらけの医療システムをつくってきた、最大の戦犯のはずです。

にもかかわらず、厚生労働省はそのことについてなんら反省せず、自分たちのやっていることはすべて正しいという姿勢を取り続けているのです。

先日、東京医師会の尾崎会長が「自宅療養している患者にイベルメクチンなどを処方できるようにしてほしい」と発言しました。しかし、厚生労働省はこの問いかけを黙殺しているのです。

筆者は忽那医師に聞いてみたいものです。あなたは今の厚生労働省に非はまったくないと思いますか?厚生労働省のつくった医療システムは最善のものですか?と。

厚生労働省と製薬業界の危ない関係

ところで厚生労働省には、製薬利権というものがあります。製薬業界は、古くから厚生労働省の官僚たちの主要な天下り先となってきました。製薬メーカーだけでなく、製薬業界全体で官僚の天下りを受け入れてきたのです。たとえば、製薬メーカーの業界団体である「日本製薬工業協会」は理事長として元厚生労働省官僚の白石順一氏を受け入れています。また大阪医薬品協会でも元厚生労働省官僚の今別府敏雄氏を受け入れています。それぞれ数千万円の報酬が払われているものとみられています。

製薬業界全体で、数百人規模(もしくは1,000人以上)の天下りを受け入れていると見られています。

そして現在、新型コロナ対策として厚生労働省と日本の製薬メーカーが共同して、大きなプロジェクトを行っています。武田薬品工業が、アメリカのモデルナ社が開発したからワクチンと、同じくアメリカのノババックス社が開発したワクチン、計2種類のワクチンを日本に輸入販売するというプロジェクトです。

ノババックス社のワクチンは、武田薬品が原液から製造することになり、「国産ワクチン」という位置づけになっています。武田薬品は、山口県にある厚生労働省のパンデミック・ワクチン用の製造設備を使用し、厚労省の助成金約300億円を活用する予定になっています。もちろん武田薬品にとっては、莫大な利益が転がり込んでくるわけです。

もし、イベルメクチンが日本で普及し、国民が新型コロナの予防できるようになれば、この武田薬品のプロジェクトは大きなダメージを受けるわけです。

武田薬品と蜜月の関係にある厚生労働省としても、大きな打撃になることは間違いありません。

イベルメクチンは特許も切れていて非常に安価なのです。だから製薬会社にはあまり旨みはありません。ワクチンを製造したほうが、全然儲かるのです。製薬業界を主要な天下り先としている厚生労働省としても、好ましいことではないのです。

もしそういう理由でイベルメクチンの承認を遅らせているとすれば…厚生労働省の官僚のみなさん、国民からそういう疑いをかけられる前にいい加減、行動してください!

編集後記

話の続きになりますが、北里大学の花木教授によると、世界からのデータでイベルメクチンの予防効果は80%以上ということが出ているそうです。つまりイベルメクチンをあらかじめ飲んでいれば、新型コロナに感染する可能性が80%も減少してしまうのです。そもそも、日本では新型コロナに感染する可能性は非常に低いので、それをさらに80%減免することになれば、新型コロナは終息ということになるでしょう。

早くイベルメクチンが予防で処方されるようになって、コロナ禍から解放されたいものです。

*   *   *   *   

新型コロナの治療薬としてイベルメクチンを現時点で承認すべきか?

忽那賢志 | 感染症専門医YAHOOニュース(個人)2/28(日) 

新型コロナウイルス感染症に対して「イベルメクチンの使用を承認すべき」あるいは「緊急使用として許可すべき」という意見が出てきています。

現時点で新型コロナに対するイベルメクチンの有効性はどれくらい根拠があるのでしょうか?

イベルメクチンとは?

イベルメクチン(商品名ストロメクトール)は寄生虫疾患に処方される薬剤です。

日本では少なくなりましたが、糞線虫症や疥癬などに使用されます。

イベルメクチンが新型コロナウイルスを抑制する?

今から約1年前、2020年4月に「イベルメクチンが新型コロナウイルスの増殖を抑制する」という実験室での研究結果がオーストラリアから報告されました。

新型コロナウイルスを感染させた細胞に2時間後にイベルメクチンを添加したところ、48時間で新型コロナウイルスの増殖を約5000倍減少させることができたとのことです。

実験室レベルで効果がある、ということになれば、次は動物やヒトでも効果があるのか期待されるところです。

イベルメクチンの臨床研究結果が取り下げに

同じ2020年4月にヒトに対してイベルメクチンが投与された症例と投与されていない症例を解析した症例対照研究が査読前論文として掲載されました。

Amit Patel, et al. Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness Patel, Amit, Usefulness of Ivermectin in COVID-19 Illness (April 19, 2020).

この論文によるとイベルメクチンを投与されていた患者ではされていなかった患者と比べて総死亡率が圧倒的に低かった(1.4% vs 8.5%)という驚異的な結果であり、当時、臨床医の間では衝撃が走りました。

この論文の対象となっていたのは「2020年1月1日から2020年3月31日までにCOVID-19と診断された患者」であり、3ヶ国169病院から704人のイベルメクチン投与患者、704人の非投与患者が登録されています。

しかし、イベルメクチンが新型コロナウイルスに有効かもしれないという実験室レベルでの研究成果がオンライン上に掲載されたのが4月3日なのに、3月31日までにイベルメクチンを投与されていた新型コロナ患者が(いくら世界広しと言えども)704人もいるのか、と。世の中にはそんなに先見の明のある臨床医がいるのかと。

結果として、この論文はサージスフィア社という企業がデータを集積していたのですが、ここからサージスフィア社に疑いが持たれ始め、NEJMやLancetといった一流雑誌に掲載されていたサージスフィア社が関わった論文が取り下げとなったことと合わせて、こちらのイベルメクチンの研究も取り下げになっています。

というわけで、おそらくこの査読前論文もサージスフィア社が(全てまたは部分的に)捏造したデータなのだと考えられます。と、以前私が書いたら、国内のイベルメクチン激推しの方から「捏造という言葉を使うな!撤回しろ!」という注意(という名の恫喝)を受けましたが・・・捏造ではないとすると・・・創造?

いや、別に私はイベルメクチンが新型コロナに効果がないと言っているわけではなく、このサージスフィア社の研究は捏造だって言っただけなんですけどね・・・大人の世界って怖いですね・・・。ぴえん。

イベルメクチンの逆襲

さて、先程の論文は査読前とは言え、かなりインパクトが大きかったため、実際に南米のペルーではこの論文を受けて新型コロナの治療薬ガイドラインにこのイベルメクチンを選択肢として入れたそうです。

論文が取り下げられた後も、南米ではもともとイベルメクチンが多く処方されていることもあり、その後も新型コロナに対してイベルメクチンが投与されているようです。

南米だけでなく、アメリカからもイベルメクチン投与群での死亡率低下が示された、という後ろ向き解析の研究結果がCHESTという一流雑誌に掲載されています。

また、アメリカの集中治療系の団体である「Front-Line Covid-19 Critical Care Alliance」という団体もイベルメクチン推しであり、これまでの論文をメタ解析という手法でまとめた研究を発表されています。

捏造・・・ではなく「創造」によってケチがついた新型コロナに対するイベルメクチンの研究ですが、ここに来てイベルメクチンが新型コロナに対する有効性を示したとする報告が複数出てきています。

というわけで、現在イベルメクチンは世界中で注目を集めています。

一方で、オーストラリアの実験室での研究結果で示された薬物濃度を達成するためには、ヒトに投与する通常量の100倍以上の投与量が必要である、ということなど効果を疑問視する専門家もいるようです。

しかし、もちろん薬剤の濃度が必ずしも臨床効果と相関するとは限りませんし、ハムスターの感染モデルでは炎症を抑制したという動物実験の結果もありますので、薬物濃度だけが効果を規定するわけではないのかもしれません。

イベルメクチンは現時点で承認されるべきか?

では今の時点でイベルメクチンはすぐにでも新型コロナに対して国内承認されるべきなのでしょうか?

私個人の考えとしては、現時点ではまだ十分なエビデンスがないだろうと考えています。

エビデンスレベルにはいくつかの階層がありますが、一般的には以下のような図によって表されます。(図は省略させていただきます)

エビデンスのピラミッド(Diabetes Care. 2013 Oct; 36(10): 3368-3373.を参考に筆者作成)

ランダム化比較試験は最もエビデンスレベルが高く、非ランダム化比較試験、観察研究、症例報告、専門家の意見、と下に行くに従ってエビデンスレベルが下がります。

先程のCHESTの論文は後ろ向きの観察研究に当たります。

後ろ向き研究では効果が示された治療薬が、ランダム化比較試験では全く効果がなかった、ということがこれまでも新型コロナで起こっています。

イベルメクチンのランダム化比較試験もなくはないのですが、どれも症例数が少ない、盲検化されていない、などの制限があります。

今後、より規模の大きい、盲検化のされたランダム化比較試験で効果が示されれば、イベルメクチンの新型コロナに対する有効性について疑問を唱える人もいなくなるでしょう。

科学的根拠に基づいた議論を

ここまで読まれて私が「イベルメクチン反対派」なのだと思われたかもしれませんが、そうではありません。

私は「イベルメクチンが効かない」と言っているわけではありません。

効くのかもしれませんし、むしろ効果が証明されてほしいと心から思っています。

しかし、それを検証するためにはまだ十分なエビデンスがない、ということです。

アビガンも当時は一部の方々が承認を強く訴えていましたが、なんだかんだ言いながら強引に承認されることはなく、きちんと科学的根拠に基づいて承認されるかどうかの議論が進んでいることに個人的にはとても安堵しています。

アビガンがまだ承認されていないのは、現時点で承認に足る科学的根拠が不十分であるということです。これは「アビガンが新型コロナには効かない」ということではありません。効くかもしれないし、効かないかもしれません。

また新型コロナに関しては、投与するタイミングによっても効果が異なるため、よく考えられた研究デザインでなければ効果の証明が難しいという側面もあります。

少しでも早く効果のある可能性のある治療薬を新型コロナに使用したい、特にアビガンと同様イベルメクチンも日本に縁の深い薬剤ですので早く新型コロナに使いたいという気持ちは誰もが持っていると思いますが、拙速な承認は後の大きな問題にも繋がりかねません。

過去には、カレトラ、ヒドロキシクロロキンなどが臨床研究として新型コロナに対して検証されていましたが、結局効果は示されず現場から使われることはなくなりました。

イベルメクチンについては、今後エビデンスレベルの高い研究で効果が証明されることを期待したいと思います。

忽那賢志感染症専門医

感染症専門医。2004年に山口大学医学部を卒業し、2012年より国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務。感染症全般を専門とするが、特に新興再興感染症、輸入感染症の診療に従事し、水際対策の最前線で診療にあたっている。『専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話』3月3日発売ッ! ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:skutsuna@hosp.ncgm.go.jp


どちらの言い分にも一理あるように見えますが、「イベルメクチン」とはワクチンではなく、治療薬で「寄生虫疾患に処方される薬剤」です。一方ワクチンはいまだその安全性は確かなものとは言えませんし、これから将来についてもその安全性は確立していません。そのようなものが「緊急事態」というわけで次々と承認されてきています。

「二転三転する田村大臣!!イベルメクチンは保険適用?自由診療?」中島克仁さん


「農薬の使用率が高い国ほど発達障害が多い」…日本の野菜は本当に安全か?

2021年03月14日 | 健康・病気

奥野 修司

文春オンライン3/12

    先日、若いお母さん方との話し合いの中で、「今、みなさんが食べている野菜には農薬が残留してるんですよ」と言ったところ、こう返された。「国が検査してるんだから問題ないんでしょ?」と。「食べて中毒を起こしたなんて聞いたことがないわ」とも言われた。

 確かにそうだ。2008年に中国製毒ギョーザを食べて中毒を起こした事件はあったが、現実にはそんな事件はまず起こらない。

農薬の本当の怖さは「見えない毒性」にある

 実は、農薬の本当の怖さは中毒なんかではなく、「見えない毒性」にあると言われている

日本で使われている農薬の出荷額でもっとも多いのが除草剤のクリホサートだが、その次が有機リン系農薬、そしてネオニコチノイド系農薬(ネオニコ)と続く。

 有機リン系は80年代に登場した農薬で、ADHD(注意欠陥・多動性障害)との関係が問題になって各国が禁止したが、日本では今もよく使われている。ネオニコはその後に登場した最新の殺虫剤で、今ではお茶や果実をはじめ、ほとんどの野菜に使われ、検査すると必ず検出されるというポピュラーの農薬である。

ミツバチの大量死から明らかになった人間への毒性

 この殺虫剤薬の特徴は、昆虫の中枢神経を狂わせて殺してしまう神経毒性にある。当初、昆虫には強く作用し、人間には毒性が低いので安全だと言われた。ところが、ミツバチの大量死に関係しているらしいと分かって注目が集まり、多くの人が研究を続けるうちに、ここ数年、人間にも毒性があることが明らかになってきたのだ。

 脳から出た信号は、神経細胞の先端のシナプスでアセチルコリンに変換して放出し、その先のニコチン性アセチルコリン受容体にキャッチされると情報が伝わる仕組みになっている。この殺虫剤は、その受容体にくっついて神経を興奮状態にして殺すのである。

 実はこの受容体、昆虫だけでなく人間はもちろん、ほとんどの生物に存在するのだ。ただ形が少しずつ違っているだけである。人間には、脳だけでなくあらゆる臓器に存在するから、もし少量でも人間の受容体にくっつくようなことがあれば大問題である。

農薬の使用率が多い国ほど発達障害が多い

 なぜ問題かというと、受容体にくっつくというのはホルモン作用と同じで、100万倍に薄めても作用するからだ。ナノグラム(ng=1億分の1g)とかピコグラム(pg=1兆分の1g)といった少量でも変化を起こす。もし人間の受容体にくっつくなら、これまで「農薬はごく少量なら安全」といわれてきた安全性の基準が崩壊することになる。

「ネオニコは哺乳動物の神経には影響しない」と言われていた2012年、環境脳神経科学情報センターの木村-黒田純子氏らが、試験管の中とはいえ、ネオニコがラットの小脳の神経細胞を攪乱することを発見した。

 やがて木村-黒田氏らは、農薬の使用率と、広汎性発達障害の有病率が一致することに注目する。つまり、農薬の使用率が多い国ほど自閉症など発達障害が多いという事実である。もちろん両者の因果関係は証明されていなかったが、相関関係では見事に一致していたのだ。

こうした仮説が示されれば、当然、それを実験で試してみようという研究者が出てくる。今ではマウスなどを使った実験が世界各国で行われている。そこからどんな結果が明らかになってきたのか、その一部を紹介したい。

ネオニコが人間の脳に侵入することはまず間違いない

 人間の身体には、血液脳関門と胎盤関門という、物質の移行を制限するゲートのようなものがある。脳組織や胎児の環境を守るためだろうと言われているが、実は、ネオニコはこのどちらも通過してしまうのである。

 脳を通過することはマウスなどの実験でもわかっているが、実際にネオニコを飲んで自殺した人の脳を調べると、血液中のネオニコと同じ濃度が検出されたというから、人間の脳に侵入することはまず間違いないだろう。

 こんな報告もある。生まれて1日か2日目の赤ちゃんの尿を調べたら、なんと、ネオニコだけでなく、体内の酵素と反応して成分が変わった代謝産物も検出されたというのである。胎児には代謝機能はないので、どちらも母親が食べたものが胎児に移行したのだ。

最近は野生のサルが里に下りて来るので、妊娠しているサルの胎児を調べると、しっかりとネオニコが検出される。おそらく里の畑で農薬を使って栽培した野菜でも食べたのだろう。では、母体から胎児にどれくらいのスピードで移行するのかというと、母マウスにネオニコを飲ませて実験したところ、1時間で胎児に移行したというから、胎盤関門はほとんどフリーパスに通過するようである。

ここで、ネオニコという殺虫剤は胎盤関門を通過し、脳にも浸透し、脳細胞を攪乱するということを覚えておいていただきたい。

マウス実験でも示されたネオニコと自閉症の関連性

 さらにこんな実験がある。マウスにごく少量のネオニコを食べさせ、壁のない通路と壁のある通路を十字に組んだ迷路に置いた。通常、マウスは好奇心が強いから、壁のない通路にも出ていくのだが、このマウスは出ていかない。不安なのだ。まるで自閉症のような行動である。また別の種類のネオニコを食べさせると、動作が激しくなって落ち着きがなくなる。多動症のような行動で、人間ならADHDと診断されるかもしれない。

どうしてこういう行動をとるのかよく分からないが、考えられる理由として、脳に浸透したネオニコが、脳の神経伝達に何らかの影響を与えた可能性がある。農薬の使用量と自閉症の有病率が比例しているのは、こうした実験結果を考慮すれば、単なる推測ではないことが分かるだろう。

 ここで、こんな状況を想定する。

 妊婦が、農薬が残留した野菜を食べる。よくあることだ。数時間以内に胎児へ移行するが、その一部は胎児の脳にも侵入する。生まれた胎児は、やがて発達障害の兆候を見せる――。

 あり得ないことではない。

各国でネオニコの使用を制限。一方で日本は……

 ネオニコは腸内細菌叢をも変える。これも疾病に関わっていることが分かり始めた。腸内には1000兆個といわれる細菌がいて、私たちの生命活動に大きな影響を与えているが、例えば免疫細胞の7割は腸の消化管にいて、これを活性化しているのが腸内細菌であることもそうだ。

 ところが、ネオニコは炎症を抑える菌など善玉菌を減らして悪玉菌を増やすことは実験でも明らかで、これが自己免疫疾患やアレルギーにつながっているのではないかと言われているのだ。新型コロナで重症化した人の腸内細菌を調べると、悪玉菌や日和見菌が多かったそうだが、もしかするとそれまでの食生活が影響しているのかもしれない。

ネオニコと疾病との関わりが明らかになるにつれ、EUをはじめ、各国でネオニコの使用を制限するようになり、フランスなどは登録された5種類すべてを禁止したほどである。

 この流れは加速する一方なのに、なぜか日本は、ネオニコの残留基準値を上げて使用を増やすという逆方向に走っている。

 最近は病気も自己責任と言われる時代である。国がこの状況を変えないなら、私たち一人ひとりが自己防衛するしかないだろう。


散歩道の途中でエゾリスに遭遇。


雨宮処凛がゆく! 第551回:女性による女性のための相談会、開催します!

2021年03月13日 | 生活
 
3月1日、相談会の記者会見。実行委員のみなさんと

 女性の実質的失業者、103万人。

 野村総研が推計した数字である。

 女性のパート・アルバイトで、仕事が半分以下に減り、休業手当も支払われていない層が2月時点でそれだけいるというのだ。昨年12月の推計では90万人だったのが、10万人も増加したことになる。

 新型コロナウイルス感染拡大が始まって早や一年。女性の苦境はこの連載でも書いてきた通りだ。コロナ禍で大打撃を受けた飲食、宿泊という業種では、もともと働く人の約7割が女性だったこと。それ以外のサービス業を支える中心も女性で、多くが非正規だったこと。そんな女性たちがコロナ禍でなんの保障もないままに放り出されてきた。製造業派遣の中高年男性を派遣切りが襲ったリーマンショックとの一番の違いは、支援団体や電話相談にSOSをしてくる女性の多さだ。

 この一年、現場を見ていても、これまでにない規模で女性のホームレス化が起きていることに衝撃を受けるばかりだ。貧困問題に関わって15年になるが、これまで私が出会ってきた女性ホームレスの多くは、DVや虐待など、様々な事情を抱えていた。精神疾患などを抱える人も少なくなかった。そんな様々な要因が重なってホームレス化に至っていたのだが、この一年で出会ったホームレス女性の中には、これまでにないタイプの人が多かった。

 それは、失業のみを原因としてホームレス化した女性。そのようなケースに、これまで私は会ったことがなかった。少なくとも、派遣村があった12年前、困窮した女性の多くは家族福祉に吸収されていたのだと思う。仕事を紹介してもらう、寮にいさせてもらうなどの企業福祉もあっただろう。友人に頼った人もいるはずだ。また、風俗関係の仕事に吸収されていたというデータも一部あるようだ。

 が、今回。コロナ禍で風俗産業も干上がり、頼れたはずの友人も経済的な苦境にある人が多いのだろう。しかし、何より痛感するのは、この十数年で多くの家族がセーフティネットとしての機能を失ったことだ。それなのに企業はより冷酷になり、守ってなどくれない。女性のホームレス化は、この社会が「女性を守る」余力も失った証拠に他ならない。

 そんな女性の困窮は、年末年始の相談会にも現れた。

 コロナ相談村のことは、この連載でも触れてきたが、最終的な統計では相談者は344人。うち女性は62人。派遣村の時は1%以下だった女性は18%にまで増えたのだ。しかも、相談村を訪れた女性のうち、29%がすでに住まいのない状態。ネットカフェや野宿だ。また、42%が収入ゼロで、所持金1000円以下の人が21%。

 相談村では、女性たちのニーズも浮き彫りとなった。

 例えば夫や子どもなどとともに来た女性は、どうしても自分のことより家族を優先させてしまう傾向がある。よって、女性の「困りごと」が聞き出せなかったり、衣類が欲しいと思っていた女性が、男性支援者には言い出せなかったりすることもある。また、「女性の法律家に相談したい」という声もあった。DV被害などを経験していれば、相手が男性というだけで萎縮することもある。それ以外にも、生理用品などの必需品がなく困っていても、男性には言い出しづらいという問題もある。

 コロナ以前から様々な相談会を経験してきたが、中にはカップルで来る人もいる。そのような場合、相談に入ると、男性ばかりが話して女性は一言も話さない、なんてこともある。しかし、何も言わないからと言って相談がないわけでは決してない。彼氏・夫の前だからこそ話せないことは山ほどあるし、DVに悩んでいることだって少なくない。中には自分は望まないのに相手に連れ回され、ホームレス生活を余儀なくされているケースもある。

 だからこそ、このような場合はそれぞれ一人ずつ話を聞くことが重要だ。が、これまでそういった前提もしっかり共有されていなかった。

 ということで年明けから会議を重ね、スタッフが全員女性のみの相談会をしようということになった。以下、詳細だ。

「女性による女性のための相談会」

3月13日(土)午前10時から午後5時
3月14日(日)午前10時から午後5時
場所:新宿区立大久保公園

 カフェスペースもあるので、お茶を飲みながら話もできる。相談は、生活、住まい、家族、妊娠、出産、育児の不安などなどに対応。英語やスペイン語、フランス語、タガログ語など多言語対応もしている。

 また、野菜や果物などのマルシェ(市場)もあり、衣類や生理用品、マスクなども配布。託児もあるので、相談中は子どもを預けることができる。もちろんすべて無料だ。

 相談会に先駆け、3月2日には、相談会のメンバーで小池百合子東京都知事に要請書を直接手渡した。DV被害者などへの配慮や、都が借り上げているビジネスホテルの柔軟な提供などを訴え、「ぜひ相談会に来てほしい」と伝えた。

3月2日、小池百合子東京都知事に要請書を提出!

 コロナ禍で初の試みとなる女性相談会。

 これが女性たちの助け合いのモデルケースになり、全国で同じような相談会が開催されたら。きっとそこから、新しいニーズや新しい支援が生まれていくはずだ。

 小さなことでもいい。今困っていなくても、先のことを考えると不安だから情報がほしい、ということでも大歓迎だ。あなたの困りごとをぜひ、相談してみてほしい。弁護士、支援者、労働組合関係者などの女性たちが相談に乗る(もちろん無料)。公的制度につなげる必要がある場合は、同行支援もできる。

 ぜひ、あなたの声を届けてほしい。


朝、氷点下10℃。

10時過ぎからプラスの氣温に。
2本目の木も沼へ倒れてしまいました。

氷の中にめり込んだ倒木をかき上げて切断。すべて沼の外へ。
散歩も。


入管法「改正」問題②

2021年03月12日 | 社会・経済

大臣辞職レベル!上川法相の大暴言―「拷問」政策を推進、入管法「改正」問題

 

上川陽子法務大臣 筆者撮影・加工

 迫害から逃れてきた難民や家族が日本にいるなど、母国に帰れない事情がある外国人の人々を、法務省・出入国在留管理庁(入管)が長期拘束している問題で、上川陽子法務大臣から驚愕の発言が飛び出した。現在、無期限に行われている収容について、期間の上限を設定すべきとの国連や弁護士会等の国内外から指摘に対し、上川法相は「収容期間の上限を設けると、送還忌避を誘発するおそれもある」と拒絶。難民その他の外国人に心理的・身体的に苦痛を味あわせ帰国させることが収容の目的であると、暗に認めたかたちだ。これは、本来、逃亡を防ぐ等である送還の収容の目的から大きく逸脱したものであり、「拷問」として憲法や国際法に抵触する可能性がある。

○無期限の収容を容認

 日本において、入管がその収容施設での外国人の収容を、裁判所など独立した機関からの判断なしに、無期限に行っていることについて、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会は、国際法で禁じられている「恣意的な拘禁」であるとの意見を昨年9月にまとめ、日本政府に対し改善勧告を行っている。だが、先月閣議決定された入管法「改正案」では、収容期間の上限は設定されていない。これについて、筆者が今月5日の定例記者会見で、上川法相に質問したところ、

「収容期間の上限を設けますと、送還をかたくなに忌避し、収容期間の上限を経過した者全員の収容を解かざるを得なくなるということになります。また、収容を解かれることを期待しての送還忌避を誘発するおそれもあるということでありまして、適当ではないと考えたところでございます」

 との回答だった。だが、これは非常に由々しき問題発言である。まず、収容とは、入管法、退去強制令書が発令された外国人を送還する際に、逃亡を防ぐため必要に応じて措置であるし、入管のマニュアルにも「飛行機待ち・船待ちのため」に行うものであると、書かれている。ところが、帰国を促すために期限を設けず、収容するというのであれば、本来の目的から大きく逸脱しているだけでなく、憲法第18条が禁止する「意に反する苦役」や、拷問等禁止条約第1条第1項が禁止する「拷問」に該当するものであって、この点からも明確に違法であるとの指摘*もある。

*退去強制令書による収容に期間の上限を設けるとともに、人権条約に適合する方法で出国が困難な外国人の問題の解消を図ること等を求める意見書(東京弁護士会)

 これまで筆者がいくつも記事を配信してきたように、入管の収容所では被収容者の身体的な自由を奪うのみならず、様々な人権侵害が頻発してきた。被収容者に対する暴行や虐待、セクハラ、差別的な言動や屈辱的な扱いなどのモラハラ等の問題が恒常的に続いている。そのため、精神的に崩壊する被収容者も少なくなく、自殺未遂が頻発し、実際、亡くなってしまった被収容者もいる。

 また、収容施設内で適切な医療が受けられないことも深刻で、つい最近も名古屋入管に収容されていたスリランカ人の女性が死亡した件でも、支援者側は体調悪化が著しかった女性への対応を、くりかえし入管側に求めていたのだという。

○そもそも収容してはいけない人々を収容

 こうした入管側の対応に対しSNS等ネット上では「不法滞在する方が悪い」と擁護する意見もあるが、そもそも帰国することが事実上無理である人々に対し、法務省及び入管が個別の事情を認めず、収容で精神的・身体的に追い詰めていることが問題なのである。法務省・入管側は「送還忌避者が増えている」と主張するが、2014~2018年までの退去強制の決定における送還率は99.8%だ*。つまり、在留が認められず「不法滞在」であるとして帰国を命じられた外国人の大多数が、実は自ら帰国しているのである。

*「収容・送還の在り方に関する意見書」(日本弁護士連合会 2020年3月18日)

 

 では、劣悪な環境の入管の収容施設に長期収容されてもなお、送還を拒んでいる人々にその理由を聞くと、難民認定申請中であったり、日本人や永住権のある外国人と結婚し、家族が日本にいるから、というものが大多数を占める*。

*「送還忌避者の実態」(法務省)より
*「送還忌避者の実態」(法務省)より

 

 難民条約に加盟している日本は難民を助ける義務がある。また、日本で結婚していたり子どもがいたりする等の場合は、自由権規約23条1項の「家族の保護」、児童の権利に関する条約3条1項の「子どもの最善の利益」といった日本が加盟している国際条約の観点から、在留を認めるべきなのだ。

 つまり、法務省・入管はそもそも収容すべきではない人々を、彼らにとっては事実上無理である「帰国」を強要するため、本来の目的から外れて、著しい心理的・身体的な苦痛を伴う収容を行っており、それはもはや「拷問」に等しいということだ。そうした観点からすると、「送還のためには無期限収容は必要」との上川法相の発言の趣旨は、外国人差別と拷問を政策として容認するものであり、法務大臣を辞職した方がよいレベルの問題発言なのである。

○難民認定審査等の改善が必要

 先月、閣議決定された入管法「改正」案は、上述した恣意的拘禁作業部会からの改善勧告は無視する一方で、難民認定申請者を強制送還できる例外規定を新設する(難民条約等、国際法に違反)、送還を拒むことに刑事罰を科すとしている。だが、そもそも「送還忌避者」という前提自体が問われてなくてはならない。上川法相がやるべきことは、他の先進国と比して桁違いに低い難民認定率が問題視されている、日本の難民認定審査をあり方を見直すこと、自由権規約や児童の権利に関する条約に基づいて、在留を認めるべき人の在留を認めることなのだ。


 プレビューが見れない。おそらく変な文字列がたくさん表示されていることだろう。昨日も同じようなことがあり、一度ブログを閉じてみたら、せっかく書いた記事がすべてなくなってしまった。今回も可能性があるので、とりあえずこのままUPしてみる。

やっぱりツイッター記事が文字化けしていましたので削除しました。


3.11からまだ10年/10万年

2021年03月11日 | 社会・経済

 震災による死者は1万5899人。この10年間で3767人が関連死と認定され、今も2526人の行方が分かっていない。

 避難者はピーク時の約47万人から減ったが、今なお4万1241人にのぼる。岩手、福島両県ではプレハブなどの応急仮設住宅に24人が暮らす。5人が暮らす福島県は来年3月末まで期間を延長した。

 復興の証しは、いつ、何によって得られるのだろうか?


【震災10年】ゴールわからず走り続ける「廃炉」 法的義務なく…現状のまま“終了宣言”も
野村昌二2021.3.11 
AERA 2021年3月15日号より抜粋

 未曽有の原発事故から10年。今も続く廃炉の現場は、課題山積。しかも東電は、「廃炉終了の定義」を明確にしないまま「廃炉」を進める。残された年月は20~30年。AERA 2021年3月15日号で「フクシマ」の未来を考えた。

*  *  *
「ピーピッピッピッ」

 胸の線量計が、不快な電子音をあげた。異臭がするわけでも、空から何か降ってくるのが見えるわけでもない。だが、私服姿でいられるほどの低い線量であっても、放射線を浴びているのだと実感した。

 福島を、日本中を震撼させた東京電力福島第一原発で起きた史上最悪レベルの事故。2011年3月11日、東日本大震災による津波で原発内の電気の供給が途絶え原子炉を冷却できなくなり、全6基のうち運転中の1~3号機が炉心溶融(メルトダウン)を起こした。さらに、炉心溶融で発生した水素が爆発し1、3、4号機の建屋が吹き飛び、大量の放射性物質が大気中に放出された。11年12月、国と東電は廃炉を「30~40年後」、最長で「2051年」に終了する「中長期ロードマップ(工程表)」を発表した。

 未曽有の事故から10年。廃炉作業はどうなっているのか。2月下旬、原発構内に合同取材団の一員として入った。

■「廃炉」に向けて進むも当初の工程から大幅な遅れ

 水素爆発を起こした1号機の原子炉建屋最上階は、ひしゃげた鉄骨がむき出しで残り、コンクリートのがれきが散らばっているのが高台から見える。

「昨年5月に、倒壊の危険性があった1号機横の排気筒を半分の高さに解体する作業が終わり、日本海溝で巨大地震が発生した場合に備えるための防潮堤の整備も進んでいます」

 案内してくれた東電廃炉コミュニケーションセンターの木元崇宏副所長は、説明する。この1年で劇的な変化はなかったが、一歩ずつ廃炉に向け進んでいると。だがその歩みは、当初の工程から大幅に遅れている。

 廃炉の最難関とされる1~3号機の原子炉に溶け落ちた高濃度の核燃料(燃料デブリ)の取り出しは本来、21年中に2号機から行う計画だった。そのために使用する専用ロボットアームを英国で開発していたが、新型コロナウイルスが猛威を振るい日本に輸送するメドが立たなくなった。昨年12月、国と東電は燃料デブリの取り出し着手を1年程度延期すると発表した。
ほかにも廃炉作業は課題が山積している。燃料デブリの次に重要な使用済み燃料プール内に残る核燃料の取り出しは3号機と4号機で終わった。だが、メルトダウンして建屋内の放射線量が高い1、2号機は手つかずのままだ。

 敷地南側には、1千基余りの処理済みの汚染水を入れたタンクがびっしり立ち並ぶ。タンクが満杯になるのは「22年秋ごろ」(東電)。海洋放出が有力視されるが、風評被害を心配する漁業者の反発は必至で、これも難題だ。残り約30年で廃炉作業を終えることはできるのか。先の木元副所長は、

「工程最優先ではなく安全を大前提に、その時その時のベストをつくしたい」

 とだけ話した。

 廃炉制度研究会代表で、『原発「廃炉」地域ハンドブック』(東洋書店新社)の編著もある尾松亮さんは、廃炉の最大の問題点は「廃炉とは何かを規定した法律がないことに尽きる」と指摘し、こう続ける。

「このままだと、燃料デブリは取り出せない、原子炉も解体されない、廃棄物も敷地内に残ったままという状態であっても51年に廃炉終了宣言を出せます。しかし、それは違法ではない。ここまでやらなければいけないという法的義務がないからです。法的に定義がない以上、東電はここまでやらなければいけないという義務もありません。国も東電も、何が完了したら福島第一原発の廃炉完了かという法的定義のないまま、30~40年後の終了を目指し作業を進めているのです」

■ゴールがわからないまま走り続けるようなもの

 何をもって廃炉を終えたとするのか。実は、このことが決まっていない。通常「廃炉」は、運転を止めて核燃料を運び出し、原子炉や建屋を解体して更地に戻すことを指す。だが、福島第一原発の工程表に、その姿はない。

 本誌は、東電の廃炉部門のトップ、福島第一廃炉推進カンパニーの小野明氏(61)に話を聞いた。

「福島第一原発の廃炉の定義は、放射性物質によるリスクをどうやって低減していくか。ただ、『廃炉の最終的な姿』はわれわれ一事業者が決められるものではない。いろいろな人の意見を聞きながら、コンセンサスをとって最終的な姿を決めていくことになると思う」

 と言葉を濁す。では、仮に51年に燃料デブリを取り出せていなくても「廃炉終了」を宣言するのか、しないのか。
「今の状態ではよくない。きちんと取り出し管理できる状態に持っていけるように取り組むことが大切だ」

 逆に、燃料デブリを取り出せたとしたら、いつまで原発敷地内に置いておくのか。小野氏が続ける。

「処分方法はまだ明確には決まっていないので、燃料デブリの性質を取り出した後に調べ上げ、どんな形での処理や処分がいいかを事業者が中心になって考えていかなければいけない」

 小野氏は、この10年間で敷地の96%のエリアで防護服が不要になるなど現場の作業環境はかなり改善された、「計画的」かつ「戦略的」に廃炉を進める環境が整ってきたと強調する。

 だがしかし、廃炉の姿が不明確なまま作業を続けるのは、ゴールがわからないまま走り続けるようなものだ。しかも残された年月は20~30年。トラブルが続き多くの作業がずれ込む中、目標の厳しさは明らか。それがなぜ可能なのか。最後にこの質問をぶつけると、

「国内外での様々な技術や英知、これらをうまく活用することによって達成できると信じていますし、今後しっかりとやっていきたい」

 と述べるにとどまった。

 海外の廃炉事情に詳しい尾松さんによれば、事故炉の廃炉は「最終形」をあらかじめ設定するのが重要というのが国際的な認識だという。

 東電が「廃炉」の見本にした、1979年に起きたスリーマイル島原発の事故では、実は安全重視で原子炉解体に着手せず、事故から「40年後」を迎えた。今後、他の原発同様に原子炉解体・更地化を目指すことになる。86年に福島第一原発と同じ「レベル7」のチェルノブイリ原発事故を起こした旧ソ連ウクライナでは、事故から12年後の98年、議会が「チェルノブイリ廃炉法」を制定。廃炉を「燃料デブリを取り出し安全保管するまで」と定義し、作業員の安全保護、必要な予算編成義務なども定めた。廃炉実施には国営企業が責任を負っているという。

「チェルノブイリ廃炉法制定の前に、まず国際世論の高まりがありました。爆発が起きた4号機を覆う石棺をそのまま放置し火災でも起きたら再び大惨事になりかねない。そこでEUやG7の要請もあり新安全シェルターを建設する計画が始まり、16年に設置します。でもシェルターを被せて終わりではウクライナ国民は納得せず、議会で『将来のデブリ取り出し』を義務づける廃炉法が制定されたのです」(尾松さん)
■除染と廃炉が心配で戻りたくても戻れない

 対して日本は、「廃炉とは何をすることか」を真正面から議論することを避けてきた。結果、51年になってどんな状態であっても「廃炉は終了した」と言える状態をつくったと尾松さん。

「東電と政府に縛りが必要です。縛りを与えるのは、法律しかありません。法的定義を定めてこなかった国会の責任もありますが、国民も争点にしてきませんでした。ただ、チェルノブイリで廃炉法ができたのは事故から12年後。日本も、10年という節目で廃炉法の策定を議論し、まず次の衆院選で争点にしていく必要があります」(同)

 廃炉の遅れは、地域の将来を左右し、住民の帰還にも直結する。

 原発事故で避難を余儀なくされた福島県内の11市町村(※)に出された避難指示は、今は沿岸部を中心に7市町村(※)になり、面積も当初の約3割に当たる約337平方キロに縮小した。だが避難指示が解除された地域の居住率はわずか29.9%(2月現在)。17年3月に避難指示が一部解除された浪江町や大熊町は1割を切る。さらに、帰還する住民は65歳以上の高齢者が多く、川俣町山木屋地区では6割に達し、飯舘村、大熊町、楢葉町は5割以上と、「限界集落」と呼ばれるほどの数字になっている。

 原発事故で浪江町から静岡県富士市に家族で移り住んだ堀川文夫さん(66)は、心情を吐露する。

「もちろん帰りたい。でも帰れない」

 生まれ育った浪江は海も山もあり、自然豊かな場所だった。大学とその後の10年は東京で過ごし、浪江に戻り小中学生向けの塾を開いた。しかし、原発事故で何十年もかけて築いた自分の土台が奪われた。故郷を追われ、縁もゆかりもない今の場所に辿り着いた。

 実家のあった場所は17年に避難指示解除となった。堀川さんにとって、浪江は自分の存在の全てだった。だがその町に、除染と廃炉が心配で戻りたくても戻れないと声を絞り出す。

「町の8割近くを占める山林の大部分は除染をしていません。廃炉はいつ終了するかわからず、冷却を続けている今も危機的状況にあり、同じような事故がいつ起きないとも限りません。子どもや孫も呼べないところに戻れない」

 福島県郡山市から都内に自主避難している男性(40代)も、こう話す。

「廃炉が終わってもいないのに、田舎に帰るのはありえない。心が落ち着くのはまだまだ先です」

(編集部・野村昌二)

 


「プラスチック新法案」

2021年03月10日 | 生活

「スプーンもフォークも箸もおしぼりもトイレも無料でしょ?」コンビニが客の代わりに払ってます プラ新法

 

 環境省は、コンビニが無料で提供している使い捨てのプラスチック製のフォークやスプーンの提供を規制することを盛り込んだ「プラスチック新法案」をまとめた。これらの有料化も検討されている。

2021年3月9日に閣議決定された、この「プラスチック新法案」では、使い捨てプラスチックを大量に無償で提供する事業者に対し、削減の義務を課すことが盛り込まれた。違反した場合は50万円以下の罰金が科される。

 テレビ朝日が報じ、Yahoo!ニュースが転載した「プラスチック新法案まとまる スプーン有料化も検討」の記事には9,000件以上のコメントが書かれている(2021年3月10日7:38 am現在)。筆者もオーサーコメントを書き、7,356件の「参考になった」が押されている(2021年3月10日7:38 am現在)。が、弁護士の方が書いた「事業者の自由や消費者の利便性に大きな影響を及ぼす」という反対意見の方に、より多くの賛同が集まっている。

 Yahoo!ニュースが実施しているアンケートでは、使い捨てのフォークやスプーンの有料化に対し、11,290票中、76%が「反対」となっている。

 

世界の潮流は「使い捨てプラ禁止」日本は周回遅れ

 オーサーコメントにも書いたが、世界的には、使い捨てのプラスチックは禁止の方向で動いている。

EUは、2021年までに、使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する。フランスも、この件に関する法整備が早かった。

米国はEUほどではないが、カリフォルニア州やニューヨーク州など、使い捨てプラスチック袋を規制する州が出てきており、カナダも使い捨てプラスチック製品を2021年までに禁止する。

インドも2022年までに使い捨てプラスチック製品を禁止するし、中国も使い捨てプラ袋を2022年までに禁止する。

タイは、主要商店における使い捨てのプラスチック袋の使用禁止を2020年に発表、

2021年に全国的に禁止する(BBC)。

インドネシアの首都ジャカルタは、使い捨てプラ袋を2020年6月までに禁止、バリ島でも、使い捨てのプラスチック製品禁止。

フィリピンも、ショッピングモールやコンビニでは、2015年ごろからプラ袋を使わなくなっている。

この分野の専門家が日本の周回遅れを嘆くのも無理はない。

スプーンもフォークも箸もおしぼりもトイレットペーパーもコンビニがコストを負担している

 コンビニで提供される使い捨てのスプーンやフォーク、割り箸やおしぼりなどは、すべて無料だと誤解されている。これらはコンビニが負担している(注:企業により条件が異なる。ファミリーマートは全額加盟店持ち。セブン-イレブンは本部と加盟店とで契約内容によって50%ずつなど按分)

参考資料:

コンビニオーナーヒアリング(第12回)令和元年9月17日(火)14:00~16:00

7ページ目に、コンビニオーナーの意見(7)として、次の記述がある。

サービス文化の勘違い。トイレ、ゴミ箱のマナーの悪さ。箸、スプーン、フォー ク、紙おしぼりのサービスは無料だと思われています。これでは生活文化の衰退につながります。確かに民度が低下していると言えば、そうなのかもしれません。けど、それに対する対応策がないんです。そこを考えていただきたい。皆さんおっしゃっているようにフランチャイズ本部のビジネスモデルも成立しなくなって来ています。利益配分、もちろん見直し必要です。と同時に、サービスの有料化ですね。来年の4月からゴミ袋有料化されます。しかし、箸、スプーン、フォーク、紙おしぼり、今の方は気が利かないと、何でそんなことできねえんだ」って平気でクレームになります。例えばサンドイッチ買って、「どうしておしぼり付いてないの?」っていうお客様が多い。「おしぼりください」じゃないんです。「スパゲッティ、お箸、フォーク、どちらお付けしますか?」「両方」なんです。ただでもらえるから、両方なんです。有料化すべきなんです。

2019年9月時点でこのような意見が出されている。

トイレットペーパー代もトイレ掃除もコンビニ負担

 あるコンビニオーナーが終日、トイレ使用者が買い物するかどうかを調査した。トイレを使った人のうち、97%以上が買い物をまったくしなかったそうだ。

だが、このトイレで客が使うトイレットペーパー代も、トイレ掃除も、コンビニの負担だ。セブン-イレブンでは、トイレットペーパーやトイレ洗剤は全額加盟店負担とのこと。

下記も、前述のコンビニオーナーヒアリングで出された意見である。

本部ばっかり儲かって加盟店に不利益になるようシステムは是正が必要だと思っております。

売れ残った食品についても、本部ではなく、加盟店がそのコストの80%以上を負担している「コンビニ会計」についても意見が出ている。

 コンビニ特有の会計システム「コンビニ会計」があるために、コンビニ一店舗が廃棄する食品の金額は平均468万円/年(公正取引委員会、2020年9月調査)。雇用労働者の平均年収441万円(国税庁、H30)以上の金額の食品を捨てており、売れ残り食品のコストも80%以上加盟店持ちだ。

 コンビニ会計と呼ばれる特殊会計のことと、時短営業についてのお話をしたいなと思います。コンビニ会計というのは、一般的に使われる会計とは違ったコンビニ特有の会計のことなんですけれども、簡単に言うと、廃棄原価を売上原価ではなく営業費で処理し、ロイヤリティの算定基準が売上総利益なので、廃棄原価の相当額を加盟店に全て負担させるという会計のことです。これがちょっと問題じゃないかということで、ちょっと話し ておこうかなと思っています。極端に言ったら、廃棄の方の損失は本部の収益には影響しないということになるんです。これを踏まえた意図的と思われる経営指導の多くは拡大均衡とかいう言葉を使いながら、とんでもない数の発注を要求したりとか、提案されたりとか、というのが数多くあります

中学校で習う「消費者の8つの権利と5つの責任」に消費者の環境配慮の責任

 1982年に国際消費者機構(CI)が提唱した、「消費者の8つの権利と5つの責任」というのがある。

参考:

「消費者の8つの権利と5つの責任」

 消費者の5つの責任で挙げられているうちに、「環境に与える影響を自覚し、配慮する責任」や「社会的関心、社会的弱者への配慮をする責任」がある。

利便性のために誰かが我慢し続けるのはSDGsの「誰ひとり取り残さない」に反する

 使い捨てのプラスチックは少なくしていくこと、自分のために誰かが代わりにコスト負担や労働力を提供させられることは、少なくしていく必要がある。つまり、コンビニで、無料でもらえるからといって、使い捨てプラスチックのスプーンやフォークなどを好き放題もらうことは、これらにも反するのはもちろん、2015年9月に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の理念である「誰ひとり取り残さない」にも反するのだ。

 弁護士の方が、コメントで「消費者の利便性に影響を及ぼす」と書いていたが、じゃあ、加盟店オーナーが、未来永劫、客の代わりにコストを負担し続けるのを良しとするのだろうか。弁護士とは、社会的弱者の味方ではなかったか。

 環境先進国で、2020年のSDGs世界ランキング一位のスウェーデンの方が、日本の状況をたびたび憂いている理由がよくわかる。日本の多くの大人は、このような消費者責任や環境配慮に関して、小学生どころか、赤ちゃん並みなのだ。「ぼく(わたし)のために、なんでも無料で与えてくれるんでしょう?」といって、口を開けて待っているような状況。で、無料でもらえないと「なんでー」と言って泣き叫ぶ。

 2020年7月のレジ袋有料化も、長年、話はあったものの、コンビニ業界からの強い反発があって進まなかったと、取材を受けたメディアから聞いた。一部の政治家は、バイイングパワーや金のある業界におもねる、ということだろう。

サービスを享受する人がサービス代金を払うのは当然のこと

 コンビニのスプーンやフォーク、割り箸、おしぼりは、無料ではない。加盟店がコストを払っている。また、その裏には、それらを製造し、お店まで運んで納めている企業がいる。その人たちも、適正な利益を得るべきだ。

 そして、そのコストを払うべきは、本来、コンビニではなく、スプーンやフォークや割り箸やおしぼりを使う消費者自身であると考える。

 プラスチックそのものが悪いのではなく、「使い捨て」にしてしまうプラスチックを減らすべきなのだ。そのことが、映画『プラスチックの海』を観るとよくわかる。プラスチックも食べ物も、命から生まれてきた。それが、捨てることで、別の命をおびやかしてしまう。

https://youtu.be/CgUqcoHYH9E(映画「プラスチックの海」予告) 
https://youtu.be/uizJaBHyZ-8                         この機会に、ぜひ、周りの人とも議論してほしい。

参考情報:

「プラスチックを取り巻く国内外の状況」中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、 産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会

 2020年7月21日

追記:(2021年3月10日10:38am)

ファミリーマートはスプーンやフォークなどに関して全額加盟店負担とのこと。セブン-イレブン・ジャパンは、スプーン、フォーク、箸に関して「原価算入」方式を採用しており、仕入原価が算入され、荒利分配前の売上総利益がその分減るため、月間のチャージ比率によって、本部と加盟店が50:50など、按分して負担したことになるとのこと。たとえば、割り箸100膳で250円で、店の契約がチャージ50%なら、125円が加盟店の負担となる。ただし、セブン-イレブンは、トイレットペーパーやトイレ洗剤は全額、加盟店負担。その旨を本文に反映させた。

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。Champions12.3メンバー。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てられる食べものたち』他。食品ロスを全国的に注目されるレベルまで引き上げたとして第二回食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/第一回食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。


 今日はかろうじてプラス気温になったが2℃まで上がらず、太陽も顔を出さない。しかも風が強烈で寒さを感じる。明日から週末は天気よさそう。


入管法「改悪」問題

2021年03月09日 | 生活

上川法相、反省はあるのですか?記者質問への回答が酷い―入管法「改悪」問題

 

会見する上川陽子法務大臣 筆者撮影

 先月に閣議決定され、今国会で審議される予定の入管法「改正」案は、日本の難民排斥ぶりに拍車をかける内容だ。論点はいくつもあるものの、とりわけ、法務省・入管庁が難民認定申請者の強制送還を可能とする例外規定を設けようとしていることに対し、「国際法違反」と専門家や国際機関からも懸念の声が上がっている。このままでは、本来、難民条約に基づき庇護すべき難民を、国際法に反して強制送還してしまい、国際社会から批判を招くことにもなりかねない。法務省・入管側は「難民認定審査で不認定となっても、複数回申請する者がいる」「制度の濫用だ」と主張するが、まずは「難民認定率が低い国」と国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に名指された日本の難民認定審査のあり方を見直すべきなのだろう。だが、上川陽子法相は、これまでの日本の「難民鎖国」ぶりについての反省はないようだ。

○日本の難民認定率での法務省のウソ

 「日本では難民認定申請者への差別が常態化している」―昨年9月にまとめられた国連人権理事会・恣意的拘禁作業部会の意見書は、日本の難民排斥ぶりに極めて厳しい評価を下し、改善勧告を行っている(関連情報)。実際、日本の難民認定率は0.5%未満と他の先進国の2~5割程度の認定率に比べ文字通り桁違いに低い。法務大臣定例記者会見(今月5日)で、筆者は難民認定率の低さについて上川法相に質問したが、その答えは

難民をたくさん受け入れている国々ということがありましたけれども、歴史的にも、あるいは地理的にも、いろんな形でつながりがあるところの部分が非常に多いのではないかと思います(中略)難民の認定数を0.何%という形で、単純に比較をするということについては、私は必ずしも適切ではないかなと思っております。

というものだった。法務省の報告書「令和元年における難民認定者数等について」では、よりハッキリと開き直っており、

「我が国での申請者の多くが、大量の難民・避難民を生じさせるような事情がない国々からの申請者となっています」

として、日本と他の先進国では事情が異なるとの印象操作を行っている。だが、日本での難民認定申請者の出身国として多いスリランカやトルコ、ネパール等の国々からの難民認定申請者に対し、他の先進国での認定率は、日本よりも大幅に高いのだ。全国難民弁護団連絡会議のまとめ(関連情報)によると、

  • 2006~2018年の統計で、スリランカからの難民申請者の日本での認定率は0%(申請者総数7058人中、認定0人)。これに対し、オーストラリアでは39.1%(1万2103人中4743人)、カナダでは78.3%(7590人中5949人)が難民として認定されている。
  • 同じく、ネパールからの難民申請者*は日本の認定率は0%(8964人中0人)。これに対し米国では29.7%(1万2380人中3688人)、カナダでは61.7%(1276人中784人)が難民として認定されている。
  • トルコからの難民申請者*は、日本での認定率は0%(6588人中0人)。これに対し、ドイツでは20.7%(3万8754人中8037人)、カナダでは57.3%(7631人中4374人)が難民として認定されている。

*いずれも一次審査 

 つまり、「日本は他の先進国と異なり、難民が多く発生する国でないところからの申請者が多いのであって、難民認定率が特に低いというわけではない」という様な法務省・入管庁の理屈は、事実に反するフェイクなのである。

○絶対に認められないクルド難民

クルド人は主にトルコやイラク、イラン、シリアで暮らす少数民族で苛烈な迫害を受けてきた 写真はクルド人の少女 筆者がイラク北部アルビルで撮影
クルド人は主にトルコやイラク、イラン、シリアで暮らす少数民族で苛烈な迫害を受けてきた 写真はクルド人の少女 筆者がイラク北部アルビルで撮影

 

 日本の難民認定審査の異常さを示すものが、トルコ出身のクルド人の扱いだ。同国で少数民族として迫害を受けているクルド人に対し、1982年に日本の難民条約加入が発効して以来、法務省・入管庁はただの一人も難民として認めていない。これについて、定例記者会見(先月19日)で、筆者が「不自然ではないか」と上川法相に質問したところ、

「申請者の方が特定の人種、宗教、国籍等を有していることだけではなく、これらを理由に迫害を受けるおそれがあることにつきまして、申請された方お一人ずつ判断していくという手続でございます」

 との回答であった。要はトルコ出身の難民申請者に対し差別的な対応はしていない、とのスタンスである。上川法相は「申請者ごとにしっかりと判断していくという姿勢を、これまでもとってまいりました」とも発言したが、それは過去の事例から言っても、非常に疑わしい。

○国連が認めた難民を送還の「前科」

 2005年1月のことであるが、トルコ出身のクルド人であるアホメット・カザンキランさんと、その長男であるラマザン・カザンキランさんはトルコへと送還されてしまった。

彼らは日本で難民認定申請をしていただけではなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が正式に認定した難民*であったにもかかわらず、である(*いわゆる「マンデート難民」)。そのカザンキラン父子を送還したことに対し、UNHCRは強い懸念を表明。「前例のない送還」「国際難民法上で禁止されている『ルフールマン(迫害を受ける危険性のある領域に人を送り返すこと)』の行為にあたる」等と指摘した。

 

クルド難民への差別反対を訴えていたアホメット・カザンキランさんは息子と共に送還された 筆者撮影
クルド難民への差別反対を訴えていたアホメット・カザンキランさんは息子と共に送還された 筆者撮影

 

 つまり、UNHCRが認めたマンデート難民ですら、日本の法務省・入管では難民として認めず、しかも国際法に反して送還してしまったという「前科」があるのだ。筆者はカザンキラン父子のことにも言及して、日本における難民認定審査のあり方に問題はないのか、と問うたが、この「前科」について上川法相が筆者の質問への回答で触れることはなかった

 UNHCRは、今回の入管法「改正」案が、難民認定申請者の強制送還を可能とする例外規定を設けようとしていることに対しても、「望ましくないものとして深刻な懸念を生じさせる」として国際法違反の可能性を繰り返し指摘している。会見での上川法相の言動や、法務省・入管庁の報告書の記述から考えて、過去の反省もなく国際法違反を今後も行うことは、大いにあり得ることなのだ。今回の入管法「改正」案は、日本での難民認定申請者のみならず、日本の信用をも脅かしているのである。

パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、入管による在日外国人への人権侵害、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。


 今日は久々に良い天気に、昼前からプラス気温となりましたが、やや風が冷たい感じでした。

 数年前に倒れた大木が沼にかぶさっている。そして根っこ部分が大きくえぐられてしまった。この根っこ部分の状態が地主さんにはたいそう氣になるようだ。もしも用水路近くの大木が・・・、そう思うと夜も寝れないという。そういうわけで、まず1本目を切り倒した。地主さんは2本倒してくれと言う。

倒したい方向とは真逆になってしまった。もともと沼の方に大きく傾いていたので難しいとは思ったが「やっぱり」でした。氷が緩む前に片付け、幹本体は重すぎて放置するしかない。


2021国際女性デー

2021年03月08日 | 社会・経済
「性暴力被害者が路上で声を上げなくてもよい社会に」フラワーデモ、寒空の下きょうも【国際女性デー】

ハフポスト 2021年03月08日

国際女性デーの3月8日、性暴力被害の実態に見合った刑法改正を求め、フラワーデモが各地で行われた。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
法務省前で行われたフラワーデモ

「被害を受けた人たちが、路上で声を上げるなんてことがなくなるような社会にならなければいけない。社会の方が、変わらなければいけない」--。

「国際女性デー」の3月8日、性暴力の撲滅を呼びかけるフラワーデモが、東京都・霞が関の法務省前であった。冷たい雨が降る中、参加者たちは「同意のない性交を性犯罪に」「地位を利用した性犯罪に罰則規定を」などと書かれたプラカードや花を手に集い、性被害の実態に見合った刑法の見直しを求めた。

被害者たちが、訴えたこと

性犯罪に関する刑法改正を議論する法務省の検討会は、山場を迎えている。8日には第13回の会合が開かれた。

この日、法務省前では、各地のフラワーデモの主催者や性暴力被害の当事者などが自身の体験や刑法改正への思いを訴えた。

14歳の頃から数年にわたり、実父による性暴力被害を受けたという女性は、「いまだにフラッシュバックを起こします。夜、ものすごいつらい状態を繰り返しています」と、今なお精神的な苦痛を抱えていることを明かした。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
参加者が掲げたプラカード

フラワーデモ名古屋の呼びかけ人の女性も駆けつけた。「被害を受けた人たちが、路上で声を上げるなんてことがなくなるような社会にならなければいけない。社会の方が変わらなければいけない。そのためにはまず、被害者にきちんと寄り添った、実態に即した刑法に変わらないといけないと思います

同意で「大事な人を守る」

ある女性は、過去の性暴力により現在の夫との関係が一時悪化したことを明かした。

「夫と同意について二人ですごく勉強しました。本を読んだり、お互いどうしたらいいかと話したりして。触るのも手をつなぐのもキスも、もちろんセックスも全部同意をとるようになったら、仲が悪くなるどころがすごく仲が良くなりました。信頼関係が良くなって、むしろスキンシップがすごく増えました」

同意のない性交を犯罪とする「不同意性交等罪」の新設をめぐっては、「いちいち同意書を持ち歩いて同意を取らなきゃいけないのか」といった否定的な意見もある。

女性はこうした意見に対し、「同意についてちゃんと学んで、大事な人を守ろうと思ったら、(同意の有無を確認することが)面倒くさいなんてことは全くない。同意ってすごく大事だし、信頼関係を築くことになると思います」と反論した。

Jun Tsuboike / HuffPost Japan

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「選択的夫婦別姓に賛成します」ある企業は広告で訴えた。【国際女性デー】

「女性がもっと自分らしく生きるためには、自由に生きることが大事。姓の選択はその一つだと思います」

女性がもっと自分らしく生きるためには、自由に生きることが大事。姓の選択はその一つ」と語る前川彩香社長に、企業広告を出した理由を聞いた。

LIFE CREATE提供
国際女性デーに合わせて掲載された LIFE CREATE社の企業広告

北海道で13年前に創業した同社は、現在では全国に75のフォットネススタジオを展開している。500人を超える社員の99%は女性。社内では、互いに姓にちなんだニックネームで呼び合うことも多い。

「この1年、結婚や出産をするメンバーが多かった。呼び方を変えるべきか、悩むこともありました」

前川さん自身、結婚後の姓で起業したものの、後に離婚。結婚前の姓に戻すか悩んだが、仕事で使う姓を変えずにすむよう、別れた夫の姓である「前川」を自分自身の姓にするべく新たに戸籍を作るという不自由を経験した。

「一緒に働く仲間はもちろん、私たちは女性が主な顧客となるお仕事をしています。女性たちに姓も働き方も、自分の人生を選んでいいんだよ、というのを伝えたかった。特に地方では、まだまだそれが難しいと感じています」

この国で生きるすべての女性が、

もっと自分を愛せるように。

もっと人生を愛せるように。

もっと世界を愛せるように。

 

「姓」や暮らしや働き方を、

女性も自由に選べることができる社会へ。

そんな未来に挑戦していきます。

広告に込めた思いについて、前川さんはこう語る。

「自分らしく生きること、自分らしい選択を諦めている女性はいっぱいいると思う。この広告を見て『これでいいんだ』と、踏み出す一歩になればと思っています」

LIFE CREATE提供前川彩香さん

企業が社会的メッセージ性の強い広告を出すことは、日本ではまだ珍しい。前川さんも「一つのチャレンジ」だと語る。

それでも企業広告という方法をとったのは、会社の規模が大きくなってきた今だからこそ、「『人生を愛そう』という企業ビジョンをお客様だけでなく、社会と共に描いていきたいという想いがあった」からだ。

前川さんは、プライベートでは高校生の娘を持つ母親でもある。広告は、未来の世代へのバトンという意味合いもあるという。

「娘を見ていて、若い世代は『自分の名前で生きていく』『自分を生きていく』という考え方が強いと思います。時代は変わってきている。娘が社会に出るころには、本人の意思で選べる社会になっていてほしい」

「娘には、結婚したら『〇〇さんの奥さん』『〇〇ちゃんのママ』というように誰かの付属品のような気持ちを味わってほしくない。わたしは起業して、自分らしく生きて、従業員にもそうしてもらって…。女性が自由に選べる社会を、娘たちに託したいんです」


避難所で性行為を強要、DVが悪化… 被災地であった女性への暴力その後【東日本大震災】

2021年03月07日 | 生活

ハフポストNEWS 2021年03月05日 

「日本は何も変わっていない」という嘆きと、少しの希望。被災地での女性と子どもに対する暴力を調査した女性に、あれから10年を聞いた。

泉谷由梨子

※この原稿には性暴力に関する記述が含まれています)

「避難所のリーダー格を含め複数の男性から暴行を受けた。『騒いで殺されても海に流され津波のせいにされる恐怖があり、誰にも言えなかった』」(女性)

「避難所で夜になると男の人が毛布の中に入ってくる。仮設住宅にいる男の人もだんだんおかしくなって、女の人をつかまえて暗いところに連れて行って裸にする」(20代女性)

    東日本大震災では、避難所での女性や子どもに対する性暴力や、家庭内暴力(DV)があった。これは、「東日本大震災女性支援ネットワーク」が2013年に発表した調査で明らかになった。

    ただ、当時はほとんどこの事実に関する報道はされていなかった。どんな内容だったのか、あれから10年で災害と性暴力をめぐる状況はどう変わったのか。調査をまとめた一人である認定NPO法人「ウィメンズネットこうべ」(神戸市)代表理事の正井禮子さんに聞いた。

「対価型」性暴力に注目

    正井さんは、1995年の阪神・淡路大震災で、女性に対する性暴力や、DVの悪化を目の当たりにした経験から、日本で初めてとなるこの大規模な調査をまとめた。

    2011年秋から実施したネットワークの調査報告には、性暴力・暴力に苦しんだ女性たちの様々な声が集まった。把握できた82事例のうち、夫・交際相手による暴力など(主にDV)が45事例、それ以外の暴力(主に性暴力)が37事例だった。

その中で、正井さんらが特に衝撃を受けたというのは、「対価型」と呼ばれる性暴力が複数件報告されていたこと。以下のような内容だ。

・津波で家族が行方不明になった20代女性に、避難所で物資の搬入や仕分けに関わっていたリーダー格の男性が、支援物資を融通することをほのめかして性的関係を強要した。

・自称「支援活動」をしている男性が、支援者として女性に近づき、不安になっている女性に自分の家に「避難」を勧める。

・夫が震災で死亡し、娘と避難する女性に避難所のリーダーが「大変だね。タオルや食べ物をあげるから夜、○○に来て」と性行為を強要した。女性は「嫌がったらここにいられなくなる。娘に被害が及ぶかもしれない」と応じざるを得なかった。

・災害後に被災者の女性の元に元交際相手が車で駆けつけて関係を再開。暴力や性的暴力をふるった。女性は災害後に不安になり頼る人がほしかった。

    調査は、災害後、特に経済的・社会的に弱い立場に置かれやすくなった女性の弱みや不安につけこみ、優位な立場にある男性との社会的な力関係の差を利用した性暴力が行われていたことを明らかにした。

また、家庭内暴力も多数報告された。

・以前より暴力があり、若い頃は首を締められることも。地震・津波によって夫の仕事が減り、家にいる時間がながくなった。震災後にイライラしはじめ、妻に対し大声で怒鳴るなどが始まった。震災前には妻が日常的に通っていた場所に行く公共交通手段がなくなり(夫に送迎を頼まざるを得ず)緊張度が高まっている(50代女性)。

10年で「何も変わっていない」

この調査の対象となった、東日本大震災からまもなく10年になる。

    あれから、災害対策基本法は改正され(2013年)、市町村に避難所の生活環境整備の努力義務が課された。2020年には、内閣府男女共同参画局の避難所運営ガイドラインが作成された。

    ガイドラインには、正井さんらの調査報告や提言内容も盛り込まれている。それにより、10年で状況はずいぶん改善されたように見える。東日本大震災で報告されたような性暴力は、今後はもう起こらないと言えるだろうか?

正井さんは即座に「そんなことはない。何も変わっていない」と断言した。

どういうことだろうか。

    実は、2011年の東日本大震災の当時も、既についたてや更衣室の設置など女性特有のニーズを考慮するようにと求めた文書は内閣府から通達されていた。

しかし、地方自治体やNPOなどを対象にした後の調査で「知っており、市町村や関係部署・団体等と連携して対応した」と回答した団体は、わずか4.5%でしかなかったことがわかっている。

正井さんは、避難所に更衣室がほしいなどの「女性特有のニーズ」を訴えることが、人権の問題と捉えられることなく「わがまま」だと一蹴された、という事例や、その逆で、きちんと女性ニーズに対応した避難所もあったと語る。

「いくら女性に配慮しなさいと国が言っても、現場でそれを認識していなければ結局は『4.5%』にしかならないんです」

実際、正井さんらの調査自体も困難の連続だった。

    内閣府のガイドライン(2020年)には「国際的な基準を定めたガイドラインでは、緊急事態の際は『すでに暴力が発生している』ことを前提に必要な予防と支援対応策を講ずることと規定されています」と紹介されている。

    正井さんらも海外での調査事例を参照し、当初は直接避難所に問い合わせて女性から聞き取りをしようと試みた。しかし、避難所のリーダーたちから「性暴力の調査とは何だ。うちの避難所に犯罪者がいると言うのか」と、すごまれることも多かったという。

    正井さんが制度以上に重要だと指摘するのは、性暴力やDVの背景にある日本社会の女性の貧困やジェンダーの不平等を改善するということだ。

平時の男女の格差が災害時にはより広がる

    特に「対価型性暴力」が発生する背景には、災害時に、平時の女性に対する構造的な差別や、男女の格差がさらに拡大されることにある。

    例えば、そもそも平時から男女間には賃金格差がある。それが、災害後には避難所の炊き出しなどが女性の役割とされ、外で収入を得られないこと、世帯単位での災害補償制度により世帯主の男性だけが支援金を受け取ることなどで、男女の経済的格差は平時よりもさらに広がる。

    逆に、避難所のリーダーなどを男性ばかりが占めることで、男性の権力はより増大する。

    調査では支援物資を配布する裁量を持つ立場を利用したリーダーが「夕飯を一緒に食べよう」「明日物資が来るんだよ」「今日は俺のところで寝ないか」などと言って、女性を性暴力に追い込んだ事例が報告されている。

    また、正井さんは避難所のリーダーを務めた数少ない女性から、こんなエピソードを聞いたという。

    ある避難所で、他に引き受ける人が誰もいなかったという理由で女性がリーダーになっていた。3カ月が経ってその自治体の避難所連絡会ができ集会に行ったところ、女性リーダーはその避難所だけだったことがわかった。戻ってそのことを避難所で報告すると『女性がリーダーだと、うちの避難所だけ不利になるのでは』との懸念の声があがり、その女性に対して『(半壊の)家があるじゃないか』と出ていくように言われた。女性はショックから精神的に不調をきたし、本当にその避難所を出ていくことになった。

「コミュニティ再建だと言われるが、ここにあるのは女を黙らせるコミュニティでしかない」。避難所の立ち上げから奔走してきた女性は正井さんにそう語った。

    正井さんは阪神大震災でも、東日本大震災でも「避難所リーダーの男女別の人数を知りたい」と各機関に問い合わせたが、最後までその情報さえ得ることができなかった。

新型コロナで再び弱い立場に置かれる女性たち

「阪神大震災の頃と、日本は一体何が変わったのだろう?何も変わっていない」

     正井さんがそう話すのは、10年前の東日本大震災のことだけではない。シングルマザーやDV被害者の支援する正井さんは、現在進行形で起こっている「災害」、新型コロナで困窮する女性たちを見てそう感じているのだという。

    野村総研の調査で、女性は実質的失業(シフトの大幅減少など)を含めて184万人に上ることが判明している(2021年2月時点)。

「家賃が払えない」「明日食べるものがない」

    シングルマザーの女性たちから次々と寄せられる相談に対して、正井さんらは神戸市でフードパントリーによる食糧支援の事業を始めた。

    非正規雇用で働いていた飲食店を解雇された女性、夫のDVが悪化し、逃れるために避難して貧困状態に陥った女性。

    平時にも弱い立場にある女性が、災害時にはより困難になる。阪神大震災や東日本大震災で痛感した、社会の構造は全く変わっていないと感じている。

「DVの暴力から逃げ出し避難しても、コミュニティを追われた女性たちには貧困が待っている。日常から女性に対する性暴力や暴力はあるんですよ。そういう被害や、男女の不平等、性被害が無視されている現状に目を向けていかないと、災害時だけ女性が活躍したり、女性の意見が通ったり、そんなことにはならないですよ」

    一方で、正井さんがわずかに希望を感じていることもある。それは、2019年から始まった、性暴力に抗議するフラワーデモが全国で開かれていることだ。

    阪神大震災の被災地で性暴力があったことについて発表した正井さんは、ある雑誌で「嘘」と断定されて世間からのバッシングを受け、それから10年間災害と性暴力についての発言を控えていたという過去がある。

    東日本大震災でこれほど大規模な調査を実施したのは、災害時に暴力を受けた女性たちの声が、決して嘘なんかではないと証明するためでもあった。

「2019年6月に初めて開催した神戸市でのフラワーデモでは、参加者が自分も話したいと次々とマイクを握っていました。若い人たちが多かったのが嬉しかった。先日の森喜朗さんの発言でもすぐに若い人たちが動いて、10万筆を超える署名が集まりましたね。ずっと変わらなかったと言いましたが、やっぱり今からは変わり始めるんじゃないかなって。やっと皆が行動を始めたんじゃないかなって。そうであってほしいって期待しているんです」

    あの頃と比べると、発言する女性、そして女性たちの声を代弁し守る人々が増えたことには希望を感じる。正井さんはそう話した。

 

関連記事
「雑魚寝」の避難所は変わったのか?欧米との差は歴然【東日本大震災10年】 | ハフポスト (huffingtonpost.jp)


 このような避難所生活がいまだ続けられている。花見ならいいだろう、だがそれは「生活」なのだ。

 今日はいい天気だったが気温が上がらず、真冬日。昨日の強い北風に比べると今日は冷たい南の風で少しマシだ。融雪もあまり進んでいない。明日はまた雪マークだ。

畑の端にあったウサギの通路。


「性風俗を辞めて生活保護を受ける」新型コロナ禍を契機に新しい人生を歩み始める若年女性たちの闘い

2021年03月06日 | 生活

藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授3/4(木)

YAHOOニュース(個人)3/4

緊急事態宣言再延長で限界に近づく性風俗店に従事する女性たち

3月3日、菅首相が4都県を対象に緊急事態宣言再延長を検討していると発表された。

今回も2週間程度の営業自粛、行動自粛要請となりそうだ。人々の行動、経済活動にも更なる影響が出るだろう。

昨年からずっと深刻なダメージを受けている飲食店、宿泊、観光、その他サービス業には大きな影響が続いている。

これらの産業は、以前から非正規女性労働者を大量に受け入れているだけでなく、低賃金など不安定な処遇であることも特徴である。

なかには、いわゆる「夜職」という性風俗店などにも勤務しながら、生計を立てたり、子育てをしているひとり親世帯も珍しくない。

日経新聞が「2020年の自殺者数はリーマン・ショック後の09年以来、11年ぶりの増加に転じた。前年比750人増(3.7%増)の2万919人(速報値)で、女性や若年層の増加が目立つ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済的な困窮や外出自粛によるストレスなどが影響したと考えられる。」と報じている通り、女性を生活困窮が襲い、自死にも追い詰めている。

新型コロナ禍によって、もともと相談が多かったところ、今年1月から続く緊急事態宣言によって、主に女性たちからの相談が未だかつてないほどに急増している。

筆者は社会福祉士という相談援助の国家資格を持ち、20年ほど生活相談を受けてきたが、経験上、これまでにないほど若年女性からの相談が多い

毎日、筆者はTwitterなどSNSを活用して、生活相談を受け続けているが、少ない日でも20件程度、多い日だと100件を超える相談がある。そのほとんどは10〜30代の若年女性だ。

「どうにもならない」と語る若い女性相談者たち

若年女性が相談に来られて話すことは「もうどうにもならない」ということである。

例えば、東京に住む20代女性は派遣社員として、複数の飲食店を経営する企業の経理を担当していたが、新型コロナ禍で仕事に入れる日が減少し続けた。

仕事は一応少ないながらあるので、新型コロナの終息を願いながら、一時的な収入減少を補う方法として、銀行のカードローン、クレジットカードのリボ払いなどで、生活費を工面してきた。

しかし、長期間続く新型コロナ禍によって、家賃滞納もあり、生活福祉資金も借りて生活してきたが「もうどうにもならない」ということで、自己破産手続きと生活保護申請を先月おこなった。

埼玉県に住む20代女性は、夫と2年前に離婚し、保育園に通う子どもを一人で育てている。飲食店でのパートで働いてきたが、生活が苦しく、離婚直後から土日だけ性風俗店で収入を得てきた。

しかし、昨年から新型コロナ禍で、パートの仕事もなくなり、土日の性風俗店も「お茶をひく」(お客が来ない意味)ことがほとんどの日々となった。

貯蓄もすぐに底をつき、子どもを連れて心中も考えたというが、相談に結びついて先月から生活保護受給に至っている。

困窮女性たちと生活保護制度

これまで若年女性が生活保護に頼ることは多くなかった。我慢させ続けてきたのである。

福祉課に頼っても、「若いんだから働きなさい」「夜の仕事でも何でもあるでしょう」「好きな男性いないの?結婚したらいいのに」「家族がいるでしょう。まずは家族に頼りなさい」などと言われ、生活保護は受給できないという相談も相変わらず多い。

以下のTwitter(コピペできないので省略しました)での相談者の体験談は珍しいことではない。これが福祉の現実である。

当然、生活保護は仕事ができる状態であっても、仕事先がなかったり、仕事探しに困難が伴えば、受給可能である。

親族による扶養は保護に優先するが、扶養義務が果たせない事情があれば、保護申請上は何ら問題がない。

そもそも本人が生活保護を受けたいと申請意思を示せば、申請書を記載させるなどして審査を開始する義務が福祉事務所にはある。

それにもかかわらず、福祉事務所は違法、不当に、年齢や稼働能力、親族扶養を理由にして、保護申請を拒絶してきた過去があるということだ。

性風俗に追いやってきた福祉に抗議して変革する若年女性たち

それゆえに、過去の困窮女性たちは誰にも頼れず、自分の身体を危険に晒しながら、性風俗店で病気や障害を抱えながら働いたり、死に物狂いで日銭を稼ぐために売春せざるを得ない環境に追いやられることになる。

援助交際、パパ活などマイルドな言葉で、売春や性の商品化が進んでいるが、そうしなければ生きられない福祉制度のずさんな実態が今でもある。

それに抗議を始め「生きさせろ」「もういい加減に生活保護を受けさせろ」という声が当事者から上がり始めている。

筆者ら福祉専門職も微力ながら、彼女らの生活保護申請に同行する取り組みを続けている。

申請に同行する理由は、常態化している福祉課による違法、不当な行為をその場で牽制、是正するためだ。

これら当事者の体験談は、SNS時代なので、一気に社会に拡散されていく。

若いから、働けるから、家族がいるから、などを理由に福祉課で保護申請をさせてもらえなかった女性たちが赤裸々に実態を語り、その声が同じ境遇にある女性たちに響く。

それによって、勇気づけられた女性や保護申請できるのかと理解した女性たちが福祉課の窓口に殺到し始めている。

虐げられてきた女性が生活保護を受給し、保護費を原資に新しい仕事を探し始めたり、新しい人生をどう生きようかと模索する姿が新型コロナ禍で増えていることは希望の一つだ。

世界各地では、10〜30代の若年層、いわゆるZ世代、ジェネレーション・レフトと呼ばれる年代の若者たちが旧来の社会システム、政治システムに転換を迫る行動が活発化している。

社会福祉、生活保護の分野でも、困ったら生活保護を一時的に受けたらいいじゃないか、保護を受けることは何も恥ずかしいことではない、生活保護は生きるための権利だ、と従来の社会規範、市民意識を根本から変える原動力になっている。

若年層の言動は、とても頼もしいことであるし、これら勇気ある情報発信によって、社会や福祉制度をよりよく変えていくために大きな貢献をしてくれている。

もうこれ以上無理に働くことも、心身を酷使して生きる必要もない。

一時的に生活保護を受けようよ、という当事者の女性たちの語りはとても心強いし、これからも一緒に歩んでいきたいものだ。

いま苦しくて困っているのはあなただけではない。

仲間がたくさんいるから、遠慮なく相談してほしい。


 昨日は光回線への切り替え工事。昼前に来るからと言うから昼で終わるものと思っていたが3時までかかった。それからがまた大変。設定がうまくいかない。とうとうあきらめて、ブロパイダーに電話するもコロナで規模を縮小しているということで、なかなかつながらない。やっとつながったが、原因は回線とPCの間にWi-Fiルーターがあるのでその設定をメーカーに問い合わせてくださいとのことだった。またもや☎☎☎こちらは有料☎。やっとつながって、あれこれと指示を受けるがインターネットに接続できない。最後は、その機器壊れているのでは?後は自力でやるしかない。Wi-Fiルーターを外してみたり、いろいろやっているうちにどうしてかユーチューブだけ見れる。他のサイトは一切繋がらないのに、どうゆうわけだ?わけわからん!PC本体やルーターの電源コードを抜いたりしているうちにとうとうインターネット接続完了。もう夜の9時を過ぎていた。ぐったり疲れました。

今日の江部乙散歩。

陽は射しているが北風が冷たい。


雨宮処凛がゆく! 第550回:人との関係を断ち切る貧困〜生活保護基準引き下げ違憲訴訟、大阪地裁で勝訴!

2021年03月04日 | 生活

マガジン9  2021年3月3日

  https://maga9.jp/210303-1/

 

「大阪地裁、勝ちました!!」

 メーリングリストに流れてきたその言葉を見た瞬間、一人の部屋で「おおおおお!!」と叫んでいた。

 この日、大阪地裁で下されたのは「生活保護基準引き下げ違憲訴訟(いのちのとりで裁判)」の判決。結果は、原告の勝訴。大阪地裁は原告らの国家賠償請求は棄却したものの、引き下げを違法であるとして取り消すという画期的な判決を言い渡したのである。

 やっと、やっと苦しい人たちの声が届いた。踏みにじられてきた人々の声に、裁判所はちゃんと耳を傾けてくれた。

 そう思うと、胸が熱くなった。

 思えば、長い道のりだった。

 2012年末、第二次安倍政権が発足して真っ先に手をつけた「生活保護基準引き下げ」。以降、13年からどんどん減らされていった生活保護費。食事の回数を減らした、家族や親戚のお見舞いや葬式にも行けない、どんなに暑くても電気代が怖くてエアコンなんてつけられない――。そんな悲鳴があちこちから上がったが、もっとも耳にしたのは「生きていてはいけないと言われている気がする」という言葉だ。

 その言葉は、前年から聞いていたものでもあった。12年春、芸能人家族の生活保護利用をきっかけに、野党だった自民党議員らが主導した「生活保護バッシング」。当時は生活保護利用者の「監視」を呼びかけるテレビ番組まで登場し、多くの利用者から「怖くて買い物に行けない」「外に出られない」「うつがひどくなった」という声を聞いた。「死ね、と言われている気がする」という悲鳴もあった。実際、このバッシング騒動の中、自ら命を絶った利用者を知っている。

 12年末、「生活保護費10%削減」を公約のひとつに掲げた選挙で、自民党は政権に返り咲く。そうしてすぐに「引き下げ」が始まったというわけだ。

 が、この引き下げには、ずーっと「疑惑」がつきまとっていた。総額で670億円削減されたわけだが、その理由とされていたのが「デフレで物価が下がっているから」というもの。が、下落していたのはパソコンやテレビといった生活保護世帯では買えないようなものの価格。その根拠となるデータも、それまで使っていた生活保護世帯の消費実態を調べたものではなく、なぜか一般世帯の消費支出を使う有様。

 なんだか自民党の「生活保護費10%削減」という公約に無理矢理寄せるために、必死に数字をいじっているように思えるのは私だけではないだろう。しかし、そのようなやり方で生活保護基準は引き下げられ、世帯によっては実際に、保護費が10%も削減された。

 そんな引き下げに対して、「もう我慢ならない」と生活保護利用者たちが立ち上がったのが数年前。そうして1000人を超える原告により(最大時)、全国29都道府県で「生活保護基準引き下げ違憲訴訟」、通称「いのちのとりで裁判」が始まったのだ。

 しかし、昨年6月、大きな失望が私たちを襲った。それはこの裁判初となる判決が、「原告の請求棄却」だったこと。名古屋地裁の判決だ。「最低最悪の判決」。私たちは憤ったものの、この時のショックが大きかったため、今回はどこかで「ひどい判決が出てもあまり衝撃を受けないようにしよう」と身構えていた。しかし、蓋を開けてみたら、名古屋地裁とは正反対の判決だったわけである。

勝訴を受け、弁護団、原告団が厚労省で記者会見。(前列左から)尾藤廣喜弁護士、小久保哲郎弁護士、原告の堰立夫さん、支援者の雨田信幸さん(後列左から)前田美津恵さん、稲葉剛さん、私

 ということで、判決から2日後の2月24日、大阪地裁の原告団、弁護団、支援者たちと厚労省に「控訴しないこと」などを求めた要請書を提出し、話し合いをしてきた。

 この日の話し合いに参加したのは、前回コラムで紹介した「八尾市母子餓死事件調査団」のメンバーでもあり、この裁判の弁護団副団長の小久保哲郎氏。そしてやはり調査団メンバーであり、「いのちのとりで裁判全国アクション」共同代表の尾藤廣喜氏。共同代表として参加したのは他にも稲葉剛氏、前田美津恵氏、そして私。大阪の原告として参加してくれたのは堰立夫氏。支援者として雨田信幸氏も大阪から駆けつけてくれた。そうしてオンラインで、大阪から二人の原告と支援者も参加。

 午後1時、厚労省の課長補佐など5名が話し合いの席につくと、まずは堰さんが要請書を手渡した。要請書に書かれているのは、被告自治体に控訴しないよう指導し、引き下げ前の生活保護基準にただちに戻すことなど。要請書を手渡す様子をテレビカメラがとらえている。

 堰さんは要請書を手渡しながら、国会で菅首相が「最終的には生活保護がある」などと述べたことに触れ、「それをなぜ下げるのか。ケチるところじゃないでしょう?」と語りかけた。

 同じく大阪の原告である新垣さんは、パソコンの向こうから厚労省の職員たちに「多くの方がこの引き下げで行動を制限されている」「社会参加をますます拒まれ、孤立している」と訴えた。そんな新垣さん自身も引き下げによって、施設に入院する母親に会いに行く回数を減らさざるを得なくなったという。施設までの交通費は片道1700円。引き下げ以前は月に4回程度行っていたそうだが、引き下げ後は月に1、2回しか行けなくなった。事情がわからない母親に「なんで来てくれへんのや」と言われるのがもっともつらかったそうだ。そんな母親は今年の1月、亡くなった。

 「最後はコロナの影響もあって面会できず、非常に寂しい思いをしました」

 もし、生活保護引き下げがなかったら。コロナは仕方ないにしても、新垣さんは倍以上の回数、母親に会えただろう。そしてそれは、どれほど晩年の母親の励みになっただろう。

 「生活保護費10%削減」の現実は、こうして人と人との関係、家族の絆を断ち切るようなものなのだ。

 大阪の支援者、大口さんは、それを裏付けるデータを紹介してくれた。毎年生活保護利用者にアンケートをとっているそうだが、引き下げ後に顕著なのは、「交際費を減らした」という声で、19年で83%にものぼっている。原告の一人である70代の女性は、友人らと月に一度行くカラオケを楽しみにしていたものの、引き下げによってその700円がどうしても捻出できなくなり、付き合いを継続できなくなったという。

 一人7万円の会食を首相の長男とする人がいる一方で、月に一度の700円が出せなくて人間関係を維持できなくなる人がいる。自民党の特命委員会は2月25日、孤独・孤立問題対策についての初会合を開いたが、本気で孤独や孤立の問題に取り組むのであれば、生活保護基準引き下げによる孤立問題もぜひ議題に入れて欲しい

 ちなみに大口さんによると、食費を減らした人は19年で87.6%。衣類購入を節約した人は93%にものぼるという。

 次に大阪から来た雨田さんが訴えたのは、原告の数について。大阪では当初、51人の原告によって裁判が始まったのだが、判決時には42人にまで減っていた。その中には、様々な事情から裁判が続けられなくなった人もいたが、高齢で亡くなった方もいるそうだ。

 「そういう方々と一緒にこの判決をお祝いできないのが残念です」という言葉が胸に響いた。そう、この裁判には、すでにこの世にいない人たちの思いも込められている。

 そうしてこの話し合いの席で、厚労省の職員たちをもっともビビらせたのは弁護士の尾藤先生だった。何しろ尾藤先生は1970年から73年まで、当時の厚生省に勤務。それだけでなく、72年から73年までは生活保護を担当していたという、この日揃った厚労省の面々にとっては「大先輩」だからだ。

 普段は温厚な尾藤先生だが、この日は迫力満点だった。

 尾藤先生は、生活保護基準の違法性が示されたのは、60年前の朝日訴訟(結核療養所にいた朝日茂さんの生活保護をめぐる裁判)の東京地裁判決以来であることを指摘。しかも大阪地裁の判決では、厚労省が数字を操作したり意図的に捻じ曲げて基準を作ったりを裁判所に指摘されていることなどを「恥ずべきこと」と厳しく指摘。深刻な問題として重く受け止めるべきだと強調した。

 これらの訴えに対して、課長補佐は棒読みで言った。

 「判決につきましては、判決内容を精査いたしまして、関係省庁や被告自治体との協議の上、対応を検討していきたいと考えております。以上です」

 すると尾藤先生はすかさず、「判決が出る時、課内で判決予測するでしょ?」と切り込んだ。黙り込む課長補佐。それに対して「私も担当してたからわかるけど、その中でどうするか検討しますよね」と畳み掛ける。と、渋々判決予測はしていたことを認める課長補佐。が、それ以上は言えないという。

 ならば、どうか関係省庁とは、「控訴しない」方向で協議してほしい。そう何度も念を押して話し合いは終わったのだった。

厚労省に要請書を提出する堰さん

 控訴の期限は2週間。ということは、3月8日までに控訴されなければ判決は確定する。なんとか控訴させたくない、という人は、厚労大臣へのFAX運動も行なっているので、ぜひ協力してほしい。

 そして判決から4日後の2月26日、ある動きがあった。第548回のコラムで、生活保護の扶養照会見直しを求める署名が提出されたことは書いたが、厚労省が新たな通知を出したのだ。

 新たな通知では、DVや虐待加害者への照会は控えることが明記されるなど一歩前進はしたが、多くは微調整。例えば扶養照会しなくていい例として挙げられていた「20年以上音信不通」が「10年」に短縮されたりと、前進はしているものの根本的な解決には至っていない。2月8日に提出された要望書に書かれていたように、本人の承諾がなく、扶養が期待できない場合には連絡しない、という運用にした方がよほど現実的だし、現場の負担も減るしでいいことずくめではないだろうか。これについては生活保護問題対策全国会議が声明を出している

 それにしても、200万人以上の命を支える生活保護基準の引き下げの根拠が、やっぱり無理やりのこじつけみたいなものだったことに愕然としている。下げた根拠が大きく崩れたのだ。厚労省は今すぐ、まずは元の基準に戻してほしい。

 最後に。最近、生活保護を巡るあれこれが注目されているが、コロナ禍によって貧困が誰にとっても他人事ではなくなった。そんな今だからこそ、最後のセーフティネットをより強く、使い勝手のいいものにしていくチャンスだと思っている。

 ということで、全国の裁判はまだまだ続いている。ぜひ、応援してほしい。


 年金も下がり続けている。まずカットありきである。「みうち」には甘いが、弱いものには徹底している。政権交代が一番の特効薬だ。

 明日、光回線の工事が来る。1年後とか言ってたが早くなった。その後の設定がうまくいかなければ「更新」ができなくなる可能性も?


文春砲・一人10万円超も NTTが山田前広報官と谷脇総務審議官に高額接待

2021年03月03日 | 社会・経済

「週刊文春」編集部

source : 週刊文春 2021年3月11日号

 

NTT側からの接待は58万円を超える

 また谷脇氏は2018年9月4日と9月20日にも同店で接待を受けていた。

 9月4日はNTT社長を退任したばかりの鵜浦博夫相談役ら3人で会食し、総額30万2千円と一人10万円を超える接待を受けた。

 9月20日はNTTの澤田社長ら3人と会食し、総額8万7千円。

 谷脇氏に対するNTT側からの接待は、3回合計の総額で58万円超、谷脇氏が受けた接待額は計17万円を超える計算になる。また総務省に対して、必要な届出を出していないことも分かった。

 山田氏には内閣広報室を、谷脇氏には総務省を通じて質問したが、回答は得られなかった。NTT広報室は「回答を差し控えさせて頂きます」とした。

 谷脇氏はこれまで「東北新社以外の衛星放送各社、民放やNHK、あるいは通信会社の社長から接待を受けたことはありますか」(3月1日・衆院予算委、森山浩行議員の質問)と問われ、「公務員倫理法に違反する接待を受けたということはございません」などと答えてきた。過去の国会答弁との整合性も問われそうだ。

 3月4日(木)発売の「週刊文春」では、まだ“谷脇事務次官”をあきらめていない菅首相の狙い、NTTによる高額接待の詳細や総務省との関係、2月13日夜の福島県沖地震発生直後に起きていた危機管理にかかわる重大事態などを、5ページにわたって詳報する。


 平然として嘘をつく「高級官僚」。東北新社があれほどのことをしているのに、他が手をこまねいているわけがない。まだ出そうな感じだ。

 大雪もおさまり、今日は青空が広がった。’18年の大雪に迫るような積雪になった。これにて終わりにしてほしい。例年だと10日くらいに大雪が来るのだが、今年はもう勘弁!

融雪剤(木灰)撒き。


まだネコヤナギですが・・・・・


古賀茂明「財務省は赤木ファイルを開示せよ」

2021年03月02日 | 社会・経済

連載「政官財の罪と罰」

 古賀茂明2021.3.2 週刊朝日

 今年も3月を迎えた。3・11からちょうど10年だが、3月にはもう一つ大切な日がある。3月7日、3年前に財務省近畿財務局の職員赤木俊夫氏が命を絶った日だ。赤木氏は、森友学園への国有地売却の決裁文書を改ざんさせられた。不当な安値売却に安倍晋三総理(当時)の夫人昭恵氏の関与が疑われたが、安倍氏は「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」と答弁した。ところが、決裁文書には昭恵夫人らの名前があったので、これを消すために改ざんが行われたのだ。

 報道では、不正に手を染めさせられた赤木氏が、その精神的な「弱さ」ゆえに自責の念にかられてうつ病になり自殺したという解説がなされた。

 しかし、赤木氏は、弱い人間ではなかった。まず、上司の改ざんの指示に強く抵抗している。財務省で上の命令に反することがいかに難しいか、官僚時代に財務省と深く付き合った経験のある私には、よくわかる。鉄の規律を誇る財務省で組織に刃向かえば、左遷どころか村八分になって職場にいられなくなる。辞めたとしても、財務省を敵にした人間を採用する企業はない。税務署が敵になるから、企業としては命取りだ。だから、赤木氏の強い抗議は自分の人生を懸けたのと同じだ。

 改ざんの後、関わった職員は隠ぺいを続け、検察の取り調べにも口裏合わせで逃げ切ったが、正義感の強い赤木氏は、経緯を克明に記したファイルを検察に渡している。

 だが、財務省と検察は、赤木氏だけに罪を被せて幕引きしようとしたようだ。赤木氏は、陰謀に気付いたが、一人で表に出て告発しても、他の関係者全員が赤木氏が主犯だと証言すれば、自分だけ葬られて終わる。精神的・肉体的にどん底状態の赤木氏には戦う余力も残されていなかった。

 最後の手段として選んだのが、死をもっての告発だ。そうすれば、「赤木ファイル」の存在が世に知れ渡り、同僚の中にも真実を語る人が出るに違いない。そう信じたのだ。命がけで正義を通し、自らの責任とともに真実を明らかにしようとした赤木氏の勇気。赤木氏は真に「強い」公務員だった。逆に、他の財務官僚は勇気のない心の弱い人たちだったのだ。

 昨年、近畿財務局の赤木氏の直属の上司がこのファイルの存在を認めた音声データが公開された。もはや、その存在を否定することはできない。

 財務省は赤木ファイルの開示について、赤木夫人の雅子氏が起こした民事裁判に影響があるから出せないと国会で答えてきた。だが、先月重大な展開があった。

 開示を拒む理由として挙げていた雅子氏が起こした民事訴訟において、財務省は、赤木ファイルは裁判の結論に影響を与えるような重要なものではないから出さないと答えていることを立憲民主党の階猛衆議院議員が暴露したのだ。国会では裁判に影響があると言い、裁判では影響がないと言う財務省の二枚舌。事務方の答弁はしどろもどろで答えにならなかったが、麻生太郎財務相は、階議員の質問に対して馬鹿にする態度で終始し、まともに答えなかった。

 赤木氏の命日を前に、マスコミも国会ももう一度この問題を大きく取り上げ、政府に赤木ファイルの公開と森友事件に関する再調査を実施させなければならない。

※週刊朝日  2021年3月12日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。新刊『日本を壊した霞が関の弱い人たち 新・官僚の責任』(集英社)など


 嘘・捏造・改ざんだらけの「公務」員。赤木ファイルの公開を願う。

昨夜から雪が降り続いている。除雪車も今日は、今の時点で3回の出動だ。もう一度夜遅くに来るかも?

すでに、1万歩を超えた。


3・1ビキニデー

2021年03月01日 | 事件

文春オンライン

  連載 昭和事件史

「西から太陽が昇った」太平洋に降った死の灰 歯ぐきの出血に脱毛…日本人が核の恐怖を最も感じた日 | 文春オンライン (bunshun.jp)

より、最初の文と最後の文章をお借りした。長文である。一読を願う。被爆国の国民として。

 

「西から太陽が昇った」太平洋に降った死の灰 歯ぐきの出血に脱毛…日本人が核の恐怖を最も感じた日

「もしもあの時あの場所にいなければ…」第五福竜丸事件 #1

 

小池 新

 

 全ての核兵器を違法とする核兵器禁止条約が今年1月に発効。核廃絶に一歩踏み出したとされる一方、アメリカの「核の傘」の下にあることを理由に、日本政府が署名を拒否していることに被爆者らからは強い批判が出ている。

 広島、長崎と2度被爆した日本だが、それから76年、どれだけの日本人が核兵器の恐ろしさを感じているだろうか。いまから67年前の1954年の春、静岡県のカツオ・マグロ漁船が南太平洋ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験に伴う“死の灰”を浴び、被爆した乗組員の1人が死亡。放射能に汚染された“原爆マグロ”や“原爆雨”などによる健康被害に多くの国民がパニックに陥った。当時は広島、長崎の惨害が十分には知られておらず、この事件の時期は、日本人が最も核の恐怖を身近に感じた時だったといえる。

 

〈略)

 

「もしもあの時あの場所にいなければ…」第五福竜丸事件 #2

事件の衝撃と水爆のその後

 事件の衝撃もあって、水爆の開発は事実上ストップした。

「各地で市民の中から自発的、自然発生的に水爆実験禁止や原子兵器反対の署名運動が始められた」「公民館長の永井郁・法政大教授を囲んで読書会を開いていた東京・杉並の母親の学習グループは『水爆禁止署名運動協議会』をつくり、1954年5月9日に呼び掛け、1カ月余りで区民の7割の署名を集めた」(「岩波ブックレット 第五福竜丸」)。原水爆禁止運動の始まりだった。

 同書によると、8月には署名を集計する全国協議会が結成され、署名は12月には2000万人を突破。翌1955年には第1回「原水爆禁止世界大会」が広島で開催される。第五福竜丸の“犠牲と功績”といえるだろう。

 その後、原水禁運動は分裂。海外から逆輸入する形で「反核運動」が広がり、現在に至っている。第五福竜丸は東京水産大の練習船として使われた後、1967年に廃船となり、東京・夢の島に放置された。1968年にそのことが報道されて保存運動が起き、「東京都立第五福竜丸展示館」として現存する。また、「死の灰」によるマーシャル諸島住民の被害も明らかになり、ロンゲラップ島では1984年に住民全員が離島した。

広島、長崎から約9年…根付かなかった原爆被害の実情

 それでは、いまの視点から見て、第五福竜丸事件とは何だったのだろう。

 事件直後、1954年3月20日付朝日朝刊の「声」欄には、MSA協定などと絡め、「食卓の魚にまで放射能の心配をせねばならぬほど身近に、本当に身近に体験したことは、われわれにあらためて日本の将来を真剣に考えさせるという点で大きな意義があった」という学生の投書が載った。

 3月26日付読売朝刊の専門家による座談会では桶谷繁雄・東京工大助教授(のち教授)が「こんなものすごい武器ができた、下手をすると人類が滅亡する、そういう問題です」「今度の第五福竜丸の事件は世界中の人々を考えさせたことでしょう」と述べている。当時の感覚がつかめる。

 しかし、そのこと自体が、まだ9年近くしかたっていなかった原爆被害の実情が、広島、長崎以外の国民に根付いていなかったことを示している。占領期は原爆に関する報道が規制され、独立後も、広島、長崎以外では「平和教育」は限定的にしか行われなかった。

「ビキニ後」も「放射能雨」の恐怖はわずかな期間で消え失せ、「資源小国」のハンデから原子力平和利用が声高に叫ばれて原発政策が推進された。ビキニから57年後の2011年、東日本大震災で東京電力福島第一原発事故が発生。メルトダウン(炉心溶融)の危機は一時深刻だった。だが、地元以外のどれだけの人がその恐怖を実感し、いまも持ち続けているだろう。

 風評被害は冷静・公正な報道と合理的な理解が不足しているからこそ起きる。そのことは第五福竜丸の“原爆マグロ”騒ぎからも明白だ。

あの時あの場所にいなければ

 ジャーナリスト浦松佐美太郎は「世界」1954年6月号掲載の「第五福竜丸の存在」という文章で広島、長崎の被爆に触れ、こう書いている。

「恐怖の記憶は過去の戦争の出来事として、その生々しさを失おうとしかけている時に第五福竜丸の遭難事件が突発したのであった。過去の恐怖がもう一度、ギラギラと光る生々しさをもって、一足飛びによみがえってきた。しかも今回の事件は広島、長崎の場合と違い、爆弾による直接の被害ではなく、爆発によって吹き飛ばされた『灰』という、捉えどころのない間接の被害だっただけに、日本人が心に感じた恐怖も一層深刻であったと言い得るのである」

 しかし、主に報道について彼は指摘する。彼はアメリカ側の「スパイ説」を取り上げ「(それなら)日本人は日本権益と日本人の自由を主張する立場から報道していいはずであった」と述べる。そして次のように指摘している。

「第五福竜丸の事件には、一つの重大な意味があったはずである」「もしあの時、あの場所に第五福竜丸がいなかったらば、という仮定の上に立ってもう一度考え直すことは今でも必要だと思われる」。その言葉はいまも意味を持っている。