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バカなフリして生きるのやめた コロナ禍で戸惑う居場所のない少女たち

2022年01月26日 | 生活

“ここがおかしい”

仁藤夢乃(社会活動家)

Imidas連載コラム2022/01/26

 

 2020年4月に更新してから、このコラムを書く余裕のないまま2年近くが経ってしまいました。楽しみにして待ってくださっていた方、申し訳ありませんでした。そして、ありがとうございます。この2年間、新型コロナウィルス感染症の影響により、支援現場は大変な状況になり、私もかつてないほどに忙しい日々を送っていました。今回は、コロナ禍での活動についてお伝えしたいと思います。

 

「ステイホーム」できない少女たち

    「非常時には子どもや女性への暴力が深刻化する」と国連も注意喚起しているが、埼玉県警察はコロナ禍の中、SNSで居場所を探す少女たちを狙った誘拐事件が増加したと発表。私たちColabo(コラボ)でも、2020年2月末に当時の安倍晋三政権が全国の小中高校に臨時休校要請を行ったことで、虐待や生活困窮のリスクが高まり相談が急増した。

 19年度の相談者は591人だったが、20年3月から5月までに300人以上からの相談があり、20年度は前年比2.5倍以上の約1500人に関わることとなった。一方で、SNSで「#家出」「#泊めて」などと投稿する少女たちに、私たちの応援者の方々が「知らない男のところに泊まるくらいならColaboに連絡してみたら?」と案内してくれたことからColaboへ繋がった少女たちもいる。

 安心して過ごせる「ホーム」を持たない人たちは、「ステイホーム」の呼びかけから排除されている。路上や知らない人の家を転々としたり、ネットカフェに寝泊まりしたりするなど、感染リスクの高い生活をせざるを得ない少女たちを受け入れる中で、Colaboのシェルターでも新型コロナの感染者が出た。風呂、キッチン、トイレが共用のため、入居している女の子たちが濃厚接触者となった。精神的にもつらい2週間の自宅隔離生活を過ごし、施設内の消毒なども自分たちで行わなければならなかった。

 必要な人に、どのように安心安全に過ごせるところを用意するかを考えていた時、宿泊客が減った複数の民間ホテルが、経営も大変な状況の中で協力を申し出てくれた。ホテルの客室をシェルターとして活用できることになり、20年度は約100人の女性に770泊を超える緊急宿泊支援を行うことができた。

貧困が急速に拡大している

 新型コロナの影響が出始めてから2年経った今も相談者は増え続け、私は休みのないまま活動を続けているが、他の困窮者支援団体も同様で、東京では21〜22年の年末年始数日間で民間団体や市民による炊き出しを2000人以上が利用したという。菅義偉政権は「自助、共助」を国民に繰り返し求めたが、とっくに自助や共助では限界だ。そもそも公助が機能していないから、これだけの人が困窮しているのだ。

 女性の失業率や自殺率も非常に高まっており、支援の現場では虐待や性搾取の深刻化、孤立や貧困の広がりを実感している。女性や子どもが日本社会でいかに大切にされてこなかったか、ということを痛感せざるを得ない2年間だった。

 従来Colaboでは、それまでの傷つきや経験から大人や支援機関を信用できず、自分でなんとかしようとした結果、頼れる大人がいない中で家を出て、性搾取の被害にあいながらも自分を責めるなどし、自分から助けを求められない状況にある少女たちに繋がるための活動をしてきた。しかし、コロナ禍で自ら助けを求めて連絡してくる人が急増し、対応に追われた。そのため「助けて」と声を上げられない状況にある少女たちと出会い、丁寧に関わる時間をどう作るかが課題となっている。

 自分から助けを求められる状況にある少女たちの多くは、今まで家で心から安心して過ごせないまでも、学校に行ったりアルバイトに行ったり、そのお金で食事に行ったりと気分転換しながら家にいる時間を減らし、家族と良い距離感を保って生活してきたという。しかし、新型コロナの影響で学校の授業が減り、親もリモートワークで家にいたり、アルバイト先も休業したりして家族と一緒に家にいなければならない時間が増え、虐待のリスクが増して「もう耐えられない」と連絡をくれる。

 そうした少女たちは、公的支援が周知され機能していれば、必要な支援を受けることができるはずなのだ。が、若年女性に対して適切に対応できる機関があまりにも少なく、学校や児童相談所、警察、役所などで不適切な対応をされたことからColaboに助けを求めてくる場合も多くある。

 虐待などを背景に家で安心して過ごせない人にとって、自粛要請によって家にいる時間が長くなることは、暴力や性虐待を受けるリスクが高まり精神的な負担も増大することにつながる。アルバイト代で自身の生活費や学費を稼いで生活している少女たちも、新型コロナの影響で収入が激減している。

 家にいられない、帰れない、帰りたくない状況の中で仕事もできず、その日食べるお金もない少女たちはネットカフェなどに滞在することも難しくなり、居場所をなくしている。コロナ禍で学校との繋がりも薄れ、身近に頼れる大人が普段以上にいなくなり、子どもたちも一層孤立し、追い詰められやすい状況になっている。

 私たちが夜の渋谷や新宿歌舞伎町で開催している無料のバスカフェでも「お菓子よりも、お米」「コスメよりも、下着や靴下」など、生活必需品を希望する人が多くなった。オープン前から行列ができ、ひと晩で50人以上の少女たちが利用するほどだった。近年、日本で「生理の貧困」というワードが知られるようになったが、Colaboの活動でも少女たちに一番もらわれていくのは生理用品だ。生理用品さえ買えないほど困窮が増しているということである。

 バスカフェは本来、夜の街をさまよい、助けを求めようと考えることもなく性搾取の被害にあいながら過ごしている少女たちに出会うために始めた取り組みだった。しかし「ここに行けば良いものがもらえるし、相談にも乗ってもらえる」と口コミで少女たちに広まり、自ら助けを求めてやってくる人たちであふれる事態となってしまった。

 私たちもその状況にとにかく対応しようと必死だったが、自ら助けを求めて来る人が多く集まる場になることで、夜の街で過ごしている少女たちが来づらい雰囲気になってしまった。そこで自ら連絡をくれる少女たちには別の方法で対応することとし、去年の夏からバスカフェは開催時間を深夜0時~朝5時に変更するなどして活動を続けてきた。

「世帯主へ」とされた特別給付金

 20年、政府は一人あたり10万円の特別定額給付金を「世帯ごと、世帯主への給付」とし、そこでも個人が尊重されない政治のあり方を実感した。私たちは、そのやり方では虐待から逃れている子どもたちが受け取れないと訴えた。この問題は国会でも取り上げられ、配偶者やその他親族からの暴力や、性暴力被害、貧困その 他の理由が複合的に重なる等して避難している事例における特例給付要件に「親族からの暴力等を理由に避難している者が自宅には帰れない事情を抱えているもの」という条項が加えられ、政府から各自治体へ通達された。

 ところが複数の自治体で、少女たちの申請が拒否される事態が多発。申請窓口で「自分でもらうと親が怒ると思うよ」「居場所を探されたらどうするの?」と受け付けてもらえなかったり、「国から特別に認められたDVじゃない限りは、原則世帯主に給付することになる」「親が先にもらっていたら受け取れない」などと誤った説明をされたりした。また、虐待の状況を申告する確認書の作成を嫌がった児童相談所が、「父親に確認する」とか「どうしても自分で受け取りたいのであれば弁護士に相談して」と対応したこともあった。

 さらに、21年末に支給された子育て世帯への臨時給付金についても、政府は一部例外を除き9月時点で児童手当を受給している世帯を支給対象とした。それだと9月以降に両親が離婚した場合、元妻・元夫のどちらが子どもを引き取っても、当時世帯主だったほうに給付金が振り込まれてしまう。離婚して母子家庭になった世帯が、給付金を元夫にとられてしまう可能性もあることから支援団体等が抗議している。

 そもそも「個人」ではなく「世帯主」へ給付するという考え方は、妻や子どもが夫や父親の所有物=「家」のモノとして扱われてきた時代に根ざしており、今の社会もその延長線上にあることを考えさせられた。

虐待から逃れた子にも給付型奨学金を

 新型コロナ関連以外の支援も続いている。Colaboと繋がる少女たちの多くは学校もあまり行けておらず最終学歴は中卒か高校中退だが、先ごろ初めて大学や専門学校に通うメンバーが出た。そうした中で彼女らが奨学金を申請したところ、児童福祉施設で保護されていない18歳までの人は保護者がいるとみなされ、親との同居や支援がない状況でも「独立生計者」として認められないとわかった。

 この問題も私たちが提起したことで国会で取り上げられ、虐待から逃れて自身で生計を立てている人も「独立生計者」として認められ、給付型の奨学金や無利子の奨学金を申請できるようになった。文部科学省の説明では、大学が本人から聞き取りなどを行い、虐待の事実を確認できれば第三者からの事情書は必要ない。しかし、これについても大学側が「本当に暴力を受けているかわからない」「証拠がない」と、奨学金申請を諦めさせようとするケースが複数起きている。大学には学生を守ることを第一に考え、事情書を必要とする場合でも学内のカウンセラーなどへの相談でOKとするなど、被害を受けた学生への負担を軽減するべきだ。

 このことを知った大学関係者や支援者等から「同じ状況の学生がいるが、どうしたらよいか?」との問い合わせもあった。Colaboで暮らしながら進学したメンバーが、悔し涙を流しながらも諦めずに声を上げ道を切り開いてくれたのだ。

 やっとの思いで虐待から逃れた学生が、親に住所を隠す公的な手続きもして生活を始めていると何度も大学に伝えていたのに、事務局から「奨学金の書類は保護者宛に送るルールだ」と言われたり、新しい住所の入った書類を実家に送られてしまったケースもあった。そこには彼女の保証人となった私の名前や自宅の住所も書かれていた。これに抗議をするため、私たちは弁護士に高い費用を支払い、大学へ内容証明を送ることになった。すべての学校は、親から逃げざるを得ない学生に対して、親から問い合わせがあっても居場所や住まいを教えないなど、被害者を守るためのルールを整備するべきだ。

 日々の活動が煩雑になる中で、こうした問題を一つひとつ丁寧に言葉にすることができていなかったが、今後はまた日々直面する「ここがおかしい」問題を言葉にし、みなさんと共に考えていきたい。

 

Colaboでは一緒に支援活動をしてくださるスタッフを募集しています。
詳しくはホームページをご覧ください。


今日撮った写真、どうしたわけかアップできません。またの機会にします。



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