印鑰智哉ブログ 2025/04/03
農業によるPFAS汚染
永遠の化学物質と言われるPFAS、その脅威は全世界的な問題に。汚染は世界の広範囲に広がっており、現在もなお、汚染が拡大し続けている。それも農業を通じて拡大している。
さまざまな工業製品に使われるPFASだが、それらが製造禁止になったとしても、環境中にはPFASは残り続け、下水汚泥肥料の利用によって、広範囲の農地が汚染されつつある。そしてPFASを使う農薬は最近種類が増えているからだ。
下水汚泥肥料やPFAS農薬によって農地が汚染されれば、作物によって割合は異なるが、生物濃縮によって土壌以上に作物に汚染が移行することがある。そして、それはがんや生殖機能へのダメージを含む、さまざまな病気の原因となることを米国環境保護庁(EPA)も認めている¹。
この汚染の責任は汚染物質をつくり出した企業にある。その企業に汚染による損害や汚染回復事業の費用を負担させる必要がある。EUで汚染除去にかかる費用をForever Lobbying Projectが算出したが、その額、なんと年間1000億ユーロ(16兆円)にのぼるという²。あまりに莫大な金額だが、それだけこの汚染は重大な犯罪的行為であることになる。しかし、汚染企業はなんとかその責任を逃れて、事業を続けられるようにしようと世界各地の政府にロビーをかけている³。なかでも一番、ロビーが成功しているのは日本だろう。政府の動きはあまりに鈍い。
どれほどの農地がPFAS汚染されているのか? 米国ではこれまで800万ヘクタール(日本の農地の約2倍)が汚染されているという数字が出ていたが、NGOのEWGによるとその範囲は2832万ヘクタールに及ぶ可能性があるという(日本の農地の7倍近い)⁴。
米国では唖然とする規模の農地がすでに汚染されており、さらに下水汚泥肥料やPFAS農薬によってその汚染が進みかねないため、それらの使用を禁止を求める声は米国で高まっている。しかし、その動きに対して、農薬禁止を止めさせようと動いているのが農薬企業のロビー団体CropLife AmericaでありRISEである⁵。
一方、日本では規制とは真逆で、下水汚泥肥料の利用促進を農水省が全国的に推進している。そして日本の下水汚泥肥料の多くがEPAが危険とするレベルを超えるPFASを含んでいる可能性がある(特殊な製法でPFASを含まない下水汚泥肥料も可能性はありうるのですべてではないにせよ、コンポスト系のものは危険だと考えられる。測定して安全が確認できたもの以外の下水汚泥肥料の使用は日本でも禁止すべきだろう)。米国では下水汚泥肥料の使用を認めた環境保護庁への訴訟が起こされている。農水省や国交省は訴訟されたいのだろうか?
なぜ、日本は世界が向かう方向と逆方向に進もうとするのか、ということだが、その背景には日本の政策が汚染企業によって歪められているからに違いない。その実態を明らかにしていく必要がある。汚染企業に責任取らせることができなければ、すべてその負担は農家や消費者にかかってくる。
永遠の化学物質というのだから、いったん汚染されたらもうお終いかというと、汚染を除去するためのプロジェクトが米国でも進行しつつある。有望性が高いと見られているのが産業用麻の活用だ⁶。麻の栽培は日本では規制があるので難しいだろうが、産業用麻には麻薬成分がほとんど含まれず、その活用は有望かもしれない。
もっとも、汚染を取り除くことは時間も手間もかかることであり、肝心なことは汚染させないようにすることであるし、汚染源をまず止めることだ。
結局は「裏金」である。
人の健康や命より「金」なのだ。
咲き始めた君主蘭。
雪の下から出て来たチャイブとオレガノ。
エゾノリュウキンカ(ヤチブキ)
小川に咲いていたヤチブキはトラフに埋まってしまっただろう。
大事に育てたい。