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「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない訳

2017年05月09日 | 社会・経済

 人生には多くの選択肢がある。逃げればいい

                東洋経済オンライン - 2017年5月8日

   過労死や過労自殺の事件が報道されるとしばしば聞かれるのが、「死ぬくらいなら辞めればいいのに」という声です。昨年発覚した電通の新入社員の過労死事件により、過労や長時間労働の暗部があらためてクローズアップされる中で、声に出さないまでも「そこまで行く前に辞めればいいのに」と感じる人は案外多いのかもしれません。

   なぜ、過労によって命を落とす人は、会社を辞める、仕事を辞めることを選択しないのでしょうか。「命より仕事のほうが大事」だと思うのでしょうか。

   過労死等防止対策推進法よると、過労自殺とは「業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とする自殺による死亡」と定義されています。つまり、過労自殺は心の問題と切っても切れない関係にあるものです。

   そして、どんな人でも、ストレスの強すぎる環境にいれば精神的に追い込まれ、うつになる可能性があります。精神科医の私でさえ、ストレス過多状態が続き、食欲が落ち、うつ状態になったことはあります。連休が明け、いわゆる「5月病シーズン」が始まります。ストレス社会で働く人たちにとって「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができなくなる理由は誰しもが知っておくべきことではないでしょうか。

 あなたは「サーカスの象」になっていないか?

    私が監修・執筆させていただいた『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』では過労でうつに陥る人の心理状態が非常にわかりやすく表現されています。過労自殺をする人は、「会社を辞める、仕事を辞めることを選択しない」のではなく、判断力がなくなることによって、「選択できない」状態になるのです。

   心理学の有名な概念に「学習性無力感」と呼ばれるものがあります。これは長期間、人間や動物がストレスを受け続けると、その状況から逃げ出そうとする努力すら行わなくなるという現象です。よく引き合いに出されるのが、「サーカスの象」の例です。サーカスの象は足首にひもをくくられ、地面に刺した杭(くい)とつながれています。象は力が強いので、杭ごと引っこ抜いて逃げ出すことができるはずです。

 本当なら杭を抜いて逃げることができるのに

   しかし、サーカスの象はおとなしく、暴れたり逃げ出そうとしたりしません。サーカスの象は、小さい頃から足にひもをくくられ、杭につながれて育ちます。小さい象の力では当然杭は抜けません。つまり、小さいうちに、「抵抗してもムダ」ということをインプットしてしまうため、大きくなれば簡単に杭を抜いて逃げることができるのに、小さい頃の「ムダだ」という無力感を学習したことで、「逃げる」という発想がなくなってしまったのです。

   これは人間にも当てはまります。人生にはたくさんの選択肢が存在します。ですが、ずっと杭につながれていた象が杭を抜いて逃げ出そうとしないように、人間も過度のストレスを受け続けると、逃げ出すという選択肢が見えなくなるのです。

   選択肢が見えていたとしても、「辞める」という決断ができない人もいます。「辞める」決断ができない人のお話を聴いていると、その大きな理由のひとつに、「辞めた後の生活が想像つかない」というのがあります。

   人は、新しい環境、つまり未知の世界に不安を抱きます。学生のとき、「転校」や「進学」のタイミングで、不安や心配が湧き上がってきたのと同じように、「辞める」決断をして、新たな環境を選んだとしても、その新たな環境が必ず「より良い環境」とは限りません。そういった不安があるからこそ、「辞める」という決断がしづらくなるのです。

 まずは休んでみるのも1つの手だ

   このように、「辞める」選択肢が自分の中にあっても、不安があることで決断できずにいる人が、過度のストレスによりどんどん追い詰められ、選択肢があったことすらわからなくなり、「もう何もできないから、死ぬしかない」と考えてしまうこともあります。

   もしも「辞める」勇気が出ないなら、「まずは休んでみる」のも選択肢ではないでしょうか。メンタルクリニックで、うつの診断テストを受けてみたり、話を聞いてもらったりしてみるのも1つの方法です。

   休むことができたら、そのときに、新たな環境になりそうな職場について調べてみるといいでしょう。たとえば、転職エージェントに登録してみてもいいと思います。そして「あぁ、こんな職場なら、楽しいかも」「こんな仕事やってみたかった」と思うことができれば、「職場が変わることへの不安」も解消されるはずです。また休んでいるあいだに、会社が職務内容や環境を調整してくれて、その結果、今の職場で働きやすくなるケースもあります。

   環境を変えることで初めて気づくこと、見えてくるものがあります。会社が異動をさせてくれたり、職務を見直してくれたりする可能性が低い、そもそも会社そのものが「ブラック」であるケースも想定されます。そのようなときは「辞める」の選択肢が見えているうちに、誰のためでもなく、自分自身のために行動を起こしてほしいと思います。世界は本当に広いのです。


  町内会で不幸があり、お手伝いしてきました。明日昼すぎまで。
 一日いい天気でした。でもこれから明日朝にかけての予想最低気温は2℃です。ということは、ここでは氷点下になる可能性大です。