(よりにもよって?)ちょうど一番ぽっちゃりしてた時期なんですよねえ。まあだからこそ笑って見てられた気もするんですが。
ところでこの一連のシーンは友達に殴られたあとの松浦くんの回想ですよね。レイコに抱きしめられたあとに部員たちが来てあわてて机の下に隠れた?下着姿で折り重なった状態で?
・自身の淫乱ぶりを自嘲するレイコに「そんなことないですよ」という松浦くん。この会話場面での彼の声はとてもソフトで聞き心地がよい。
向こうから誘惑された(出会いの場面を見るに彼の方も一目ぼれだったぽいけど)とはいえ「会ったその日にCまで行く」大胆さの一方それなりに常識的でそれなりに純情、それなりに軽薄でそれなりに優しい。そんな普通の男の子な松浦くんは結構好きなキャラです。
・「(男に惚れる基準は)顔・・・とかですか」と質問し、「顔!」と即答されてにんまり自分の顔を撫でる松浦くん。それ喜ぶとこなのか?
レイコに抱き寄せられてちょっとどきまぎしてるのが初々しい。しかしパンツ一丁にもかかわらず靴下(それも白)だけは履いてるのが笑えます。
・「何を歌っても浪花節に聞こえてしまう」東馬健のキャラが良すぎる・・・。
ニューミュージックやディスコミュージックを歌う姿は一種コスプレ。及川さんノリノリだな。
「セルロイドの夜」は既存の及川さんの曲なんだそうで。この映画のために作ったかのようにマッチしている。
・『ソウルトレイン』で勝地くんと共演している掟ポルシェさんがちょこっと出演。今回見返すにあたって注意して探してみました。
「『ソウルトレイン』が初演技扱いになっていることからするとその場にいる程度なんだろうな、数年前だし外見も変わってるかも。見つかるかな」と思ってたんですが、あっさり発見。
台詞もあって結構目立ってました。外見もそのまんまだし。
ポルシェさんのほかにも田口トモロヲさんとか豊永利之くんとか『ソウルトレイン』とキャストがかぶっている。舞台畑の人の人脈ということかな?
・三姉妹のお父さんが学校の校長(理事長?)であることが判明。校長の娘を脱がそうとは映研の連中も大胆な。まあ学内では上映しないのかもしれませんが。
自主制作映画に300万を費やす映研メンバーを「気が狂ってるとしか思えない」とリカが思い切り小馬鹿にしてましたが、高校生が映画のために女の子を全裸に剥こうってのも相当イカレてます。
・レイコを映画に出すかどうかで揉める映研メンバー。映研というとマイナーな作品や撮影技法について語り倒すマニアな男子の集団というイメージがあるんですが、ここは部長といい和久井さんといい完全に女性上位なのが面白い。
ケラ監督曰く「女の子の方が動かしやすい」(概要)かららしいです。
・部活の先輩に頼まれて衣笠くんが「やよいちゃん」とデート。一言も口を聞かないもっさりしたやよいちゃんがしわくちゃのお札を先輩に支払うシーンの場末感が何ともいえない。
・映画館ロビーの電話で大声で夫婦喧嘩するカナエ。
カナエ・レイコ・リカは異母姉妹で年も離れているのに、三人とも男のことでいっぱいいっぱいで周りの迷惑を全く顧みないところが実によく似ている。相手の男もみんなそれなりに問題あるけれど。
・警備員(長塚圭史さん)も巻き込んでの痴話喧嘩。レイコの非常識っぷりと松浦くんの常識っぷりのコントラストが冴える。
消え入りそうな哀願口調から逆ギレする松浦くんも最初から叫びっぱなしのレイコも声が裏返りまくりの早口なのに、台詞がきっちり聞き取れるのはさすが。
そして水槽が割れて大波が襲い掛かるスペクタクルシーン。思い切って嘘っぽいのが笑えます。
・今度は東馬健の痴話喧嘩。女にビンタされてビンタし返す(しかも両頬)男も珍しい。
そのあとのタクシー追いかけて上から迫るシーンとかホラーがかってて怖いやら笑えるやら。
・壁紙の下から・・・。そこで「ショックだったんだぞ。いきなりいなくなるから」でニコッ。天性のタラシですねこりゃ。
「よりを戻した」後のいちゃつきシーンでのレイコの嬌声が本気で色っぽくてちょっとドキッとした。
・カナエと旦那の低レベルな口喧嘩。旦那さんの声に思わず聞きほれる。勝地くんといい、衣笠くん役の男の子といい、ソフトな美声の男性キャストが充実してるなあ。
・リカ主演の映画撮影シーン。映画の内容はさっぱりつかめないが何だかちょっと見てみたい気になる。
リカ役の蒼井優ちゃんは今でも永遠の少女といった容姿と雰囲気ですが、この時はさらに顔つきがあどけなくて実に可愛らしい。
そして撮影の裏で苦労する映研部員たち。背中が燃えた男の子を普通にカメラチームが追いかけていたが、あれは事故でなく予定通り?
そして血糊の袋が破裂せずに頭はたかれてる松浦くんの訝しげな顔が可愛いです。撮影スタッフが俳優も兼ねてるようなのに彼は裏方専門なんですかね?せっかくの美少年がもったいない。出演しても青く塗られちゃいそうだけど。
・映画の目玉、リカの全裸シーン。固唾を呑んで見守る映研部員(男)たち。
松浦くんの友達(豊永くん)の表情の変化に笑わされる。最後のへろへろした笑顔はリカ(のヌード)を崇拝するかのごとくでした。
・「おばあさん生きてませんよね」 ひどい迷惑電話(笑)。結果的に「呪いの電話」になっちゃってるし。
・ピンボケフィルムを前に踊り狂う映研部員たち。何かに似てると思ったら・・・「ええじゃないか」だ。
高校生が自主制作映画(それもかなりシュールな内容ぽい)にとんでもない金と労力をかけるという、傍から見ればバカみたいな彼らの情熱とこだわり(女子二人以外のメンバーは結構冷めてたりもするけど)が見事に水の泡になって、もう踊るしかないという――ほろ苦くも愛おしくなるような青春の一コマ。
・結局全員フリーになった三姉妹が夕焼けの屋上で語り合う。まったりと、オチらしいオチをつけないままのエンディング。
自分の未来なんて怖くて占えないと言ったレイコ。あんな暴露本が出てしまって無事に正規の教師になれるのか。
カナエは一人身になり、一番若いリカの将来も未知数。来るべき新年を前に空を見つめる三人の顔に笑顔はない。お互いに対しては笑ってみせたり冗談を言い合ったりしているけど、どこか「空元気」。「焦るよ。置いていかれそうで。」
出始めのウォークマンを聞きながら「21世紀はずっといい世の中になるでしょう」という占い師の言葉と裏腹の未来への不安を感じさせる表情。
この映画、舞台は80年だけれども、ジョン・レノンの死から始まり80年最後の夕日で終わるあたりはむしろ一つの時代の終わり-「70年代の終焉」を描いたもの、と見るべきなのかも。
ラストで21世紀-次の時代の予測が出てくるのも、現在(1980年12月31日)が「時代の区切り目」であることを示しているようにも思える。
この80年代初頭でありつつ70年代の終末でもあるという二重性が、全体にシュールでポップな明るさに満ちたこの作品のラストに、過ぎ行く時代を見送る寂寥感と新時代への不安を表出させたのでは。
予言の文句は、「たとえば八〇年代にはバラ色の未来があった。ぼくの主観ですが、YMOやテクノポリスとか、ちょっとインチキ臭くてどうなるかわからないけど、未来は明るいぞということを最後には言えた時代だった。」(『東京人』2003年6月号のケラ監督インタビュー)というケラ監督の「80年代観」を反映したものなのでしょう。
そしてその予言について語り合う三姉妹の「暗さ」はおそらく「未来はバラ色ではなかった」ことを知る監督や観客―21世紀に生きる人たちの心理の反映・・・。
あえてカタルシスを放棄したところに妙な余韻があります。
・主題曲に数あるYMOの名曲の中から「ライディーン」をもってきたのはナイスチョイス。これが一番「テクノポップ」を体現してる曲かと思うので。