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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『少年メリケンサック』(2)-2(注・ネタバレしてます)

2012-09-11 15:04:23 | 他作品
・かくてツアー開始の日。メンバーは高円寺駅前でかんな待ち。車椅子のジミーは奥さんから薬の種類について注意を受けている。・・・奥さんついてったほうがいいんじゃあ。
そこへかんなが実家の回転寿司の小さなワゴン車でやってくる。こんな車でツアーって。会社で手配してないのか、あれだけ力入ってたはずなのに、と思ってたら、かんないわくリハでお金使いすぎたしわ寄せなんだとか。車のキャリアにドラムセット乗せるのはいいとしても車椅子まで積んであるのが、バンドのツアーとしてありえない絵柄でシュールです。

・後部座席に座ったアキオとハルオは間に座ったヤングが何とか二人をとりもとうとするのをよそに不仲炸裂。タバコ吸うなら窓を開けろというハルオにいらだったアキオはメリケンサックはめた手でハルオ側のガラスを殴ってヒビ入れたあげく足で窓を蹴破る暴挙に。
かんなが驚いて急ブレーキを踏み急停車。親の車なんだから弁償しろと迫るのへ助手席のジミーが何事か訴える。指で必死にズボンに縫い付けた「WC」の文字を指さし強引に車降りるものの、間に合わず力ない声とともに黄色い水が地面に流れる映像が。なんと思い切ったシーンを入れたものか。さすがにジミーさんの体は開けたドアで隠してますけどね。

・キャリアの車椅子にジミーのズボン干した状態で高速を走るワゴン。カオスな風景だ。名古屋出口を通過したあたりでまた金子へのインタビュー形式で、最初ハルオとジミーがバンド組んでてアイドルっぽい仕様でデビューしたことが語られる。
ローディで使ってやるなんていってた弟に頭越されてこりゃアキオ面白くないだろうなと思ってたら、なんと少し後で弟たちのローディやってるアキオが出てきて驚きました。ところでアップになると金子はなんか鼻曲がってるような?実はこれも伏線なんですよね。

・ハルオとジミーのバンドは「少年アラモード」なるグループ名。マッシュルームカットに全身ツナギ ?な格好で「僕らのネバーマインド号」なる歌を歌う彼ら5人組のプロモ映像が紹介される。むかしのGSブームのときにいたなあという感じのバンドです。
といっても多少誇張気味で歌詞も踊りも歌い方もなんか微妙にキモい。アイドルグループからパンクバンドに転身、というところで「レイジー」というバンド(のちにメンバーチェンジを経てロックバンド「ラウドネス」に)がモデルじゃないかという話をよく聞きますが、赤頭巾ちゃんがどうたらいう歌詞からして正解だろうと思います(レイジーには「赤頭巾ちゃんご用心」というヒット曲がある)。
「乗組員は」という歌詞のところでみんなニックネームなのに最後の一人だけ「ムライ」なのが笑える。みそっかすなのか。

・そこそこ売れて盛り上がってたメンバーの中でハルオだけは「こんなのロックじゃねえとか恥ずかしくて兄貴に見せられねえとか言ってた」そう。アイドル雑誌の表紙写真でも一人だけ仏頂面だったり。意に反して事務所にアイドル売りされるって結構あるパターンみたいですが。
しかし「兄貴に見せられねえ」というあたり、ハルオはアキオの評価をすごく気にしている、それだけ兄貴を(当時は)慕ってたのが感じられます。

・メンバーを出待ちする女の子たちを整理してるマネージャーらしい人、マッシュルームカットだから最初気づきませんでしたがよくよく見ればなんと金子。元マネージャーだからこんなにメリケンサックに詳しいのかと納得。
そして強引に整理されてるファンの女の子がどうやら後のジミーの奥さんぽい。アラモード時代からの追っかけだったんですね。かつて追い続けたアイドルがあんな姿になってしまってそれをずっと世話してるというのもどんな気持ちでしょうね。
そしてアラモードの荷物を降ろしにきたスタッフが何とアキオ。ハルオアキオともまさかの再会にびっくりというか愕然という面持ちです。

・ややあってアキオは笑ってみせるもののなんか不穏な笑顔。「ま、よろしくお願いしますよハルオさん」とか言ってるのも不気味です。絶対含むところありまくりなはず。

・再び現在。「GO AHEAD」なるライブハウスの入口に車が到着。アキオがハルオに「おめえのクソみてえなバンドで来たなここ」と言ってるので回想シーンのライブハウスと同じとこなんだ。
出てきたスタッフが「メンバーのみなさんはいつごろ到着ですか」。まあ当然そう思うでしょうね。かんなもメンバーは後から新幹線でとかいってごまかすし。わざわざ「グリーン車で」と言い足すあたりは見栄ですね。あんな車で来たもんだからなおさら。

・アキオたちが機材設置したりする中ジミーは一人車椅子に座ってヘッドホン聞きながら体揺らしている。いぶかるライブハウスのスタッフにスタッフ証見せていちおう向こうも納得してる。
そんな時かんなの携帯が鳴り、誰かと話してたかんなが「今浜松越えたそうです」と言うとスタッフもほっとした顔に。自分で携帯鳴らして新幹線車内のメンバーから電話がかかってきたごとく装ったわけですね。涙ぐましいなあかんな。

・すごい行列ができてると聞いてかんなが外を見に行くと本当に長蛇の列。しかもものがパンクだけに殺気立った連中ばかり。楽屋に走って戻ったかんながソールドアウトを告げると、メイク中のメンバーは嬉しそうな顔。
アキオは「はしゃいでんじゃねえよ」とかんなに言いますが、かんなははしゃいでるんじゃなくて予想以上の反響と客層にバレたときのことを思ってびびってるわけですね。

・さらに社長まで登場。社長自ら新人バンドのツアー初日に顔を見せるとは気合い入ってます。メンバーに挨拶すると楽屋に入りかけるのを入口外で阻止したかんなは入場拒否の理由として「危険だからです」。ちょっと気取ったようなかんなの立ち姿がまた状況に妙にマッチしてる。
集中力高めてるとか体を切り刻んでるとかいう無理矢理な説明に案の定「期待しちゃうね」と社長喜んじゃいました。素直に客席で待ってくれることになったもののどんどん傷口広げてる気もします。かんなも胃をさすってるし。

・はじまる大分前からすでにノリノリの客席。解散ライブのジミーのごとくみんなの頭上に抱え上げられ運ばれてる人は単なる一般客なのか?ここでメリケンサックを手にはめたりしてるメンバーの最終準備光景が挿入され、もしかしてもしかしたら観客を熱狂させるようなステージをやってくれるのか?と一瞬だけ期待させてくれます。

・いよいよ開始が告げられ客席がメリケンサックコールに沸く中、かんなは涙目で社員証?を外すと「社長、今まで本当にお世話になりました」と涙目で告げる。始まる前からあきらめてしまうのか?「え?」と聞き返した社長に「なんでもないです」とごまかして自分もメリケンサックコールに加わる。切ないようなギャグなような。このあとの惨状(予定)への期待が高まります。

・楽屋の扉が開きメンバーが出てくるところをブーツの足だけのアップ+スローモーションで演出効果たっぷりに見せる。演出だけはすごい大物感があります。こんなおっさんたちがパンクバンドやってるって、考えようによっては一周回って格好いい気もするんですが、それが観客に理解されるかどうかというと・・・。

・ライトがつきステージのメンバーの姿がはっきり見えた瞬間にたちまち静まり返る客席。唖然とする社長とその横でうつむくかんな。やっぱりこうなっちゃいますか。でも演奏が始まったらひょっとして・・・ってやっぱりひょっとしませんでしたけど。

・アキオが呂律の回らない挨拶をする中、ずっと静かだった客席についに中指立ててのブーイングの声が起こる。社長いわく「少年じゃねえよ。中年メリケンサックじゃん!」 ああアキオの登場このかた映画の観客みなが内心思ったろうフレーズが。
横を見るとすでに職員証を残してかんなは消えている。見れば重い扉を無理矢理開けて大雨の中へ逃げ出していくところという・・・。一応最後まで見ててやれよう。

・ステージにいろいろな物が投げ込まれるが、アキオは「今から奇跡見せてやっからよ」と宣言。客席が再び静まる。そして演奏が開始される。
そのころどしゃぶりの中をずぶぬれになりながらひたすら走るかんな。何言ってるのか聞き取れないわめき声とともに。妙にリアル感のある光景です。今この時ライブハウスでは奇跡が起きている・・・という可能性もなくはないのに。

・そのころのライブハウス。演奏は実にモタモタのガタガタ。リハの時のほうがマシだったではないですか。お客のしらけきった表情ときたら。メンバーの方もハルオなんか表情冷め切っててまったくやる気なさげなんですが。
そしてギターの弦が切れたところで、ハルオはかつてローディしてた頃の兄が後ろでひゃひゃひゃとあざけり笑う姿を幻視する。ついに棒立ちになるハルオを「なにやっってんだよ」とアキオが叱責しますが、ハルオがまじめに演奏したからどうこうなるレベルでもないですねすでに。

・どこかの居酒屋で酔いつぶれているかんな。口からスルメがはみ出しペットボトルの大瓶を抱えているのがなんとも。若い女の子がなんて格好ですか。かんなだとそれすらキュートですが。

・主人に起こされ携帯が鳴りっぱなしだと言われてへらへら笑顔で電話に出ると相手は社長。詫びるかんなに「謝らなきゃいけないのはおれのほうだよかんな」と意外にも優しい声。そして店の外には傘を差して微笑みかける社長の姿が。「今夜おれは本当の意味でパンクに出会った。パンクってのは生き様なんだよ」。そしてツアーをこのまま続けていいと職員証を返してくれる。その場に泣き崩れるかんな。
・・・というのは残念ながら夢だったというオチ。さすがにそう上手くはねえ。店主に起こされて、ぐっと持ち上がったかんなの顔が本当の酔っ払いみたいなよれよれ感なのがすごいです。電話が鳴りっぱなしなのは夢の中と一緒ですが、床に倒れて寝てるところがよりすごいことになってます。

・ライブハウスではアキオがハルオに馬乗りになって殴りつけてる。止めに入ったヤングが逆に吹っ飛ばされる始末。そして我関せずとばかり小指立てて紅茶(みたいに見える)飲んでるジミー。この人何気にどんどん調子よくなってってる気がします。すでに客の姿もない。
アキオがパイプ椅子を、ハルオがナイフ?を持ち出していよいよヤバい空気になったところにかんなが飛び込んでくる。腕を組んで柱の前に立った社長に今さら例の映像は25年前のものと釈明するが、「遅いよ!」と一喝される。「ここの修理代はおれが出す。それで終わりだ」と社長は厳しく通達。怒られるばかりだとわかってたんだろうに、よくかんなは戻ってきたもんです。

・「じゃあツアーやめていいんですね!」と嬉しそうにいうかんな。夢でツアーを続けられると喜んでたときと同じような台詞とテンションなのに内容が正反対なのが笑えます。
しかしキャンセル料が発生するから止めるなとあまりなご達しが。にもかわらずツアーが終わればかんなもバンドも契約破棄だという社長にアキオが「そんな眠てえこといってるからパンクが死んだんじゃねえのか」「若いやつらがつまんねえから俺たちに食いついたんじゃねえのか」と反論。確かに一理あります。しかし「ちゃんと金取れるライブやってから言えよ」「今日一曲でもまともにやれた?」という社長の言葉のほうがさらに理がある。しかし締めが「年には勝てねんだよ」なのは悲しい。社長がパンクやめたときにも年食ってまでできるもんじゃないというあきらめがあったんでしょうか。

・ツアーを続けるかどうかメンバーに問うかんな。自分はどっちでもいいとあまりにも無責任な言い草で、力なく座りこんだまま目もあわせない。精神的に疲れきってますかんな。
しかしどっちでもいいことはないと真っ先に声をあげたのがハルオ。自分は生活に困ってるわけではなく、栗田さんに誘われたから参加した、だから会社など関係なくかんな個人の決定に従うと。牛の糞投げつけてかんなを追い返してからリハ中のスタジオに現れるまでの彼の心境の変化が描かれてないので、なぜハルオがかんなに従うのか、そもそもなぜバンドに参加する気になったのかもわからないままなので、彼の入れ込み方がちょっと不思議です。
ヤングとアキオは「どうします」「どうすんだよ」と言い合っている。すると向こうのほうでジミーが相変わらずマイクスタンドを握って飛び跳ねるような動作を。これはツアーを続けたい、の意思表示ということでいいんですよね?

・ここでいきなり金子の語りを導入にさっきの回想の続きに。「少年アラモード」をクソだとあざ笑う金子の姿のすぐあとにアラモードの演奏中に舞台の袖でやはりひゃひゃひゃと笑うローディアキオの姿。
ハルオは演奏しつつも兄を気にしてにらむように見ていたが、いきなりギターの柄が外れる。弦が切れるとかでなく柄が外れるとはただごとではない。アキオは舌出しながらドライバーをかざしてみせる。いくら気に入らないからって演奏中に壊れるような細工までしておくか。それでも笑顔でライブパフォーマンスに戻ろうとするハルオ。
そこへ会場に来ていたパンクな連中(ヤングもいる)が乱入する。金子いわく「おれがヤングをけしかけたんだ。まあ仕掛け人つうの?」それは仕掛け人の使い方を間違えているだろう。それにしてもアキオといいマネージャー金子といい、関係者に裏切り者続出ですね。しかしバットを振り回して暴れるヤングをマネージャーとして一応止めるふりをしたら、メリケンサックした拳で顔面を殴られて結果今のように鼻が曲がった、というオチが。結局自分も痛い目を見たわけです。
ヤングたち不良グループは客席を荒らしまくり客は悲鳴あげて逃げる。それでも演奏を続けてたメンバーですが、アキオがいきなりハルオの肩に腕もたせて「やっとおもしろくなってきたな」というなりメンバーを殴ったのをきっかけに、不良たちもステージにあがってメンバーを殴り始める。早くに物陰に隠れて難を逃れたジミーはメリケンサックが床に落ちてるのに気づきそれを左手にはめるとヤングに殴りかかり、額に今も残る浅い傷をつける。しかし大したダメージにもならずかえってヤングの頭突き一発で沈められてしまう。アラモードみたいなナンパなバンドがこんな目に合うってのもなかなかない。

・アキオはハルオにギターを弾くよう詰め寄る。どうせもう誰も彼のプレイなど見てないのだからと。たしかに客席は大混乱中。ベースを肩にかけたアキオはマイクに向かってアラモードの解散を叫びそのままベースをかき鳴らす。いつのまにかヤングがドラムを叩きだし、マイクの前でじっと考える顔だったハルオはついにギターを肩からかけ、ジミーは右往左往していましたがマイクに向かってイカれた顔で「ギャー」とがなり出すなり上半身も裸になってわめく。
ふらふら起き上がったマネージャーはその光景に見入り、自身もギャーと叫ぶ。ハルオもマイクにギャーと叫び、ジミーはどこからか出した拡声器でギャーと叫ぶ。笑いながらカメラで写真をとりはじめるマネージャー。これがメリケンサック誕生の瞬間だったそう
。騒ぎ自体はアキオや金子が狙って起こしたものでしたが、新たな形のバンド誕生はハルオの、ヤングの、ジミーの自発的行動、まさしく内面からの衝動によって促されている。これは確かに伝説といっていいでしょう。

・少年アラモードのアラモードの文字をメリケンサックに書き換えたワゴンでツアーする一行。ほのぼのテイストの地のイラストの上にマジックでいろいろ書きなぐってある車体がメリケンサックの成り立ちそのままで一種すごみがあります。

・そして現在のかんな運転のワゴンへと物語は転換。誰かおならしたと運転しながら後部座席を振り向くかんなは急ブレーキかけて全員におならしたかと問いただす。そこまでするような話じゃない気もしますが、「信じられない」とかんなはおかんむり。
気を取り直して運転再開しますが、しばらくして今度はあからさまに大きな音が。また急ブレーキ。真っ先にアキオに抗議するかんなに「今のはおれじゃねえよ」「今のは?じゃあさっきのは?」「おれだよ!」 実にしょうもない会話です。一回のおならにつき500円徴収すると言い渡すかんな。何度も同じことを強調するハイテンションなしゃべり方が作品のテンポを作っています。

・郊外の食堂前で車を止め、かんなは一人マサルに電話。バイト中のマサルは仕事中なのに優しく応じている。仕事中にいいのかね。「新曲きいてくれた?」というマサルに「聞いてる。なんか癒されてる」と微笑むかんな。確かに彼と話してるときは癒されてるって顔してるんですよね。
「ツアーが終わったらお父さんに挨拶にいこうか」というマサルの声を聞いてるのか聞いてないのか、かんなは向こうを向くとすごく嫌そうな顔で「えっ」と叫ぶ。「ちょうどぼくも君との将来について考えてたんだ」「もちろん歌は好きだけど売れるとか売れないとかそんな下劣な価値観に左右されるのは違うっていうか」。
売れないやつの定番的言い訳文句ですね。要は才能に見切りをつけてかんなとの結婚に逃げようかという話ですよねえ。しかしそんな程度の気構えとはいえ一応プロポーズに等しい台詞を口にしてるのに彼女は聞いてないってのも気の毒な。

・そのころ店の中ではアキオが焼き飯とチャーハンをオーダーしたのになぜ同じものを持ってくるのかとウェイトレスに詰め寄っている。このウェイトレスもこんなおっさん相手に脅えることなく言い争っていて肝据わってんなあ。そこにかんなが止めに入り「焼き飯はチャーハンです!」とアキオに怒鳴る。さっきの「えっ」はこの騒ぎが見えたからだったんですね。
そのときジミーがいきなり手をあげて立ち上がるとズボンに縫い付けた文字を指差す。またWCかと思ってるとハルオが「ハンバーグ」と無表情に読む。そんな言葉まで縫いつけてあるのか。しかし「ないです」とウェイトレスはにべもない声。
ところでマサルとの電話はどうしたのかなと思ってると案の定携帯外に置きっぱなし。「まずは結婚して生活を安定させてそれから純粋に音楽を・・・」とかマサルの声が一方的に流れている。すごい放置プレーだ。

・その後の旅の光景に重ねてマサルとかんなの会話が流れる。「なんかいいなあ。楽しそうで」「楽しくないよ」「楽しいさ。君といっしょのツアーなんて」。
二人の平和な甘ったるい会話を背景に、アキオはヘルス嬢と喧嘩してるわハルオは夜の公園で一人ギターの練習してるわかんなはコインランドリーで洗濯してるわ(その横でヤングが堂々パンツを脱いでかんなに渡す。後ろからもろにヤングの生尻を映すすごい絵柄。一応前は手で押さえて隠してますが)と実にシュールなそれぞれの過ごし方にスポットがあたる。渡されたパンツをそのままかんながゴミ箱に捨てるのをヤングがあわてて拾おうとしてるのがユーモラスです。

・横になって電話してるかんなはツアー途中で落ち合おうというマサルに何が食べたいと聞くと、バイト先の牛丼屋でマサルは「たこ焼き食ーべーたーいー」と椅子の上でくるくる回ってる。仕事しろって。女子店員にも「先輩そろそろいいですか」とか注意されてます。
ちなみにかんなはホテルのベッドで横になってるのかと思いきや、隣にはジミー。前にはハンドル。ようは車の中で雑魚寝なんじゃないですか。どれだけ冷遇されてるんだ。ツアー初日があんなだったからさらに予算削られまくってんのか。

・田んぼ道を走る車。今日はハルオが運転。後部座席のかんなは助手席で雑誌持ってなんか揺れてるヤングに何してるんですかと尋ねる。「こうやってると車の振動でオッパイが揺れてるように見えるんだよ」と真顔で説明する・・・。中学生ならともかくいい年したおっさんの行動としてはどんなもんか。
それを聞いたアキオが雑誌奪って自分も試してみる。もっと車揺らせよハルオなどと言い出し、ジミーもサングラス外してのぞきこむ仕草。もっとも覗いてるのは隣りのかんなの身体。かんなは上着の前を掻き合わせ「揺れませんが」とさも不機嫌そうに言う。この時の声音が実に嫌そうで素晴らしいです。やむなく向こう向くジミーも悪びれずにちっとか舌打ちしてます。

・夕方、どこかの都会へ到着。ライブハウスへ機材運ぶ一行。そこには今日のバンドとして同じレコード会社の「GOA」の名がある。「言ってませんでしたっけ?急遽対バンになったんです」。かんないわくうちの一押しバンドで「社長の判断でブッキングしました」だそう。確かにメリケンサックの演奏だけじゃ金取れないなあ。
先にハウスに入っていたGOAのメンバーはメリケンのメンバーを見ると自分から寄ってきて口々に名乗り、いかにもメリケンのファンですという顔で今日は一緒にやれて嬉しいむね挨拶を。躾が行き届いてますね。

・メリケンのライブはあいかわらずメロメロですがこないだのライブよりはましになってる、かも(あの時がひどすぎただけだけど)。とはいえステージから転げ落ちるジミーに頭を抱えるかんな。拡声器で何かがなりながら客席を這いずってくるジミーにGOAのファンとおぼしき女の子たちが脅えて逃げる。確かにこりゃほとんどホラーです。
這いながらステージに戻ったジミーがよれよれ演奏のラストにそれでも間に合って、ちょっとジャンプしようとしてそのままステージに転がる。もうめちゃくちゃ。しかもMCのカンペ ?を読むのにアキオは老眼鏡かけるし(笑)。かんなが頭かかえて「勘弁して」と蚊の鳴くような声を絞り出しています。

・すでにふらふらに疲れきって楽屋へ向かう一同。ジミーなどヤングの肩にしょわれてる状態。GOAの横を通り抜けていく。最後にハルオが階段下りて楽屋へ向かうとき、さっきとうってかわって冷たい目付きのGOAが「やっぱああはなりたくないっつうか」「年寄りの冷麦っつーか」などと話すのを聞いてしまう。
ハルオは足を止めて振り向いて聞いているがヤングに促され楽屋へ向かう。メンバー中随一の常識人でありつつ先の回想シーンで示されたように凶暴性を内に秘めているハルオですから、ただではすまないんだろーなと期待と不安が高まっていきます。

・GOAのステージが始まる。女の子たちの歓声。楽屋でまだ荒い息をついてるメンバーにかんなはアンコールをやるかと尋ねる。「私は出ないほうがいいと思います」。
しかしアキオは「久しぶりに暴れるか」とヤングにメリケンサックを投げる。驚くヤングに「おめえガキどもにあそこまで言われて我慢できるのか」。実はみんな聞こえてたのか。一気に不穏な空気が流れてます。
やめてくださいよというかんなに「うそだよばーか」とアキオは言ったものの、そこへ女性スタッフが「おたくのギターの人が」と呼びにくる。そういえばハルオの姿がない。さっきの様子からして相当ヤバいのでは。

・ステージに上がりGOAのボーカルをそばでじっとにらみつけてるハルオ。何をするでもないですがこりゃ嫌だ。しかもどんどん近づいてくし。さすがにボーカルが「なんですか」と聞くといきなり頭突きをかます。さらにギターの青年を「さっきなんつった、ステージ出るときはもっとマシな服着ろや」と罵倒して殴り倒す。機材も倒す。その光景に目を見開くかんな。
これは止めないと、となんかはずんだ声で言いながらメリケンはめてステージに駆けていくアキオ。アキオとヤングはメンバーに狼藉を働き、ハルオは客席にずかずかと歩いていく。
アキオに殴られて舞台袖まで転げ落ちてきたメンバーをジミーがマイクスタンドで殴る。まさかのジミー参戦。かんなに「ジミーさん」と鋭い声で叱られましたが。しかしジミーだけ叱ってもどうにもならない状況ですね。

・夜。新大阪駅前にたどりついたマサル(髪の毛がバイト仕様のまま)は「ねーねーねー何食べるー」と電話口ではしゃぐが、「ごめんまーくん、ちょっと今日、ムリかも」とかんなは泣きそうな声を出す。かんなはまだ楽屋。彼女のそばではメリケン、GOA両方のメンバーに警察が事情聴取中。
「急に、取材入っちゃって」。素直に警察沙汰になったって言えばいいのになあ。マサルに隠すことないんじゃあ。「そっか。仕事じゃしょうがないね」とまじめな顔で受けるマサル。状況知らない彼の「がんばって」と言う言葉に半泣きで「がんばる」と答えるかんなが悲しくも可笑しいです。

・かくて次の土地へ向かう一行。GOAとのトラブルにもかかわらずツアーはやはり続行。もはや社長的にはなまじテコ入れしようとしてケガ人増やす気にはなれずひたすら違約金払わないためだけのツアー続行なんでしょうね。ちなみに運転はまたハルオ。かんなにいちいち急ブレーキかけられちゃたまらんということでしょうか。

・BGMはかんながイヤホンで聞いてるマサルの歌声(「自信」)。かんなは後部端の席で思いつめたような顔で押し黙ったまま。二つ隣りに座ったアキオが強引にイヤホンとipodを奪う。「マー君のデモ?彼氏か?」「ちがいます」。否定するのは知られるとうるさいと思ったんでしょうか。
「チンコでけえのか」「ちがうっつってんじゃないですか」「ちがうんだったらゆっとけよデモくんに。お前才能ないからさっさとあきらめて牛丼屋の店長になっちまえって」。
妙にマーくん情報にくわしいアキオ。睨むかんなにへっへっへとこれみよがしに笑ってみせる。「メールみました?」と問い詰めるかんなに当然見ると全く悪びれない。プライバシーも何もあったもんじゃない。一緒に旅するには最悪の相手ですね。

・ジミーがせっぱつまった顔でハルオの袖を引っ張り「WC」の文字を示したため「はいトイレ休憩」。確かにハルオに運転させた方がいろいろとスムーズですね。

・アキオは「ヒモだろ。女に食わしてもらってよ。あわよくばコネでCD出そうって腹だ。見え見えなんだよ」「今は年下の可愛い彼氏でもハゲて太って屁くさくなるぞ」と言いたい放題。なんかマーくんの未来予想図はユーキ43を彷彿とさせます。
アキオの言葉に目の下をピクピク引きつらせてたかんなは「マサル君のは臭くないの」と変な反論を。それに対しアキオは「だからやってる音楽も無臭なんだよ」と何げに奥が深い気もする発言。重ねて「チンコでけえのかよ!」と詰め寄るアキオにかんなは泣きそうな怒り顔で黙ったまま答えない。
この一連のシーンのかんなの怒りの表情がすごい。よくあんなに顔面筋の動きをコントロールできるものです。

・コンビニに車を止めメンバーはアイスを購入し再び出発。あれ、かんな乗ってないんじゃ?出発直後からジミーが何事か訴えているのもそれなんでは?
しかし皆には通じてないというか気にも留めてない。ヤングが「あっ」と声をあげるので気づいたかと思いきや、「アイスのスプーンが入ってない」。ジミーは重ねて訴え続けヤングが再び「あっ」。「栗田さんは ?」 おおやっと気づいた。ジミーが親指立てて見せてるのでやっぱりこれが言いたかったんですね。
その頃一人歩道を歩くかんな。あれだけいろいろあっても最終的には逃げなかったかんなをついに切れさせたのはマサルの悪口だった。やっぱり愛、ですかね。

・そこへメンバーが車で戻ってきて、ハルオが「栗田さん」と声をかける。杖で早足に歩いてくるジミー。ずいぶい回復したなあ。ツアーがいいリハビリになってるのかも。アキオが「おめえなにやってんだよ」と怒鳴りますが、ふくれた顔でしばしにらみつけたかんなは勢いよく駆け出す。ヤングとハルオは後を追って走り、アキオも遅れて走る。追いかけるヤングたちをハンディカメラ的揺れる画面で捉える。
しかしかんなはバスに乗りこんで逃げきる。後部席の窓ごしにメンバーに舌を出しながら中指立ててみせるかんな。その表情といい行動といいしっかりパンクに染まってます。「職場放棄だなありゃ」「兄貴のせいだぞ」と言い合う兄弟。やっぱり彼氏をバカにしすぎたのが原因とは思ってるらしい。その頃ジミーは車の中で一人例の雑誌を揺らしながら凝視してる。ドアも開けっ放しだってのに。

・明るくおしゃれなカフェ?でセーター姿でギターを弾いているマサル。そこへドアが開いてかんなが入ってくる。「あれーかんな?」「来ちゃいました」とにっこりするかんな。マサルも笑顔に。ホッとするワンシーンです。

・そのころメンバーは夕暮れの街をライブハウス目指して進むが道に迷い中。ジミーが地図を広げてる。誰かが屁をこき「アキオさん臭いすよ」といった会話が。車の中で消臭スプレーしたりして混乱は拡大。さらにガソリン切れで車まで止まる。かんながいないとボロボロですね。

・夜、さっきのカフェでマサルは弾き語りする。旅先でついて早々にステージを(無料出演にしても)確保してるのは、マサルも意外とやり手です。歌うのは「自信」。ところどころ音外れてますが結構上手いような気も?公園のとき同様お客は誰も聞いてないですけどね。

・テーブル席でマサルの歌を聞きながらかんなは憮然とした顔でアキオの言葉、ヒモとかやってる音楽が無臭だとかを思い返している。「なにも言い返せなかった」とかんなは心で思いますが、それは音楽的なことに対してだけかヒモ発言についてもなのか。
「君を幸せにする自信が、ない」という歌詞の部分で席を立って自販機に向かったかんなは、財布から大量の500円玉(みんなが車内でおならするたびに徴収したお金)が出てきたのをしばし見つめ、暗い、どこか決意を秘めた目でマサルを見つめる。「行かないで行かないで、席を立たないで」という歌詞をバックに(状況がそのまますぎて笑える)少し涙ぐんだ顔になると表へ飛び出し一目散に走リ出す。
あの500円徴収のエピソードがこんな風に生きるとは。くだらないいきさつのお金なのに、だからこそほろっとさせてくれます。

・その頃メリケンのメンバー(すでにメイク済み)もライブハウスを探して走っている。通りすがりに花屋のバケツを蹴倒し水をこぼして怒鳴られたりしてます。ジミーはヤングに背負われてる。一番若くて力もあるヤングは常にこういう役させられてるなあ。
「ここさっきも来ましたよ」と言いつつ商店街を走り続ける一同。一方かんなはタクシーを止めて息切らしながら指差しポーズで「広島!」。ここ岡山なんじゃあ。お金も時間も相当かかるんじゃあ。なお走りつづけるメンバーはまたも花屋のバケツを倒す。同じとこぐるぐる回ってんじゃん。この調子じゃ案外かんなが着く方が早かったりして。

・「最後の歌は一番大切な人のために捧げます」と言って弾きだそうとしたマサルは、かんながいないのに気づき暗い表情で「やめます」とギターをおく。まばらな拍手が。
かんなもステージ中のマサルに断りようがなかったのはわかりますが、手紙残すとか即メール送るとかのフォローをなぜしなかったんだろう。この後のマサルの浮気騒ぎはこのときのかんなの仕打ちに理由がある気がします。

・さんざん走ってまた花屋の前を通るアキオ。今度は蹴られる前にさっとバケツどかした花屋とアキオがしばし無言でにらみあう。そこへ追いついてきたハルオたちは路上でへたりこんでしまう。
ハッパかけるアキオに、行ったってどうせろくな演奏もできず客もしらっとしてるし走って行く意味がないとなまり全開で訴えるハルオ。アキオは「いいライブも悪いライブもねえべや」とそばの看板を蹴倒す。じゃあなにしに行くんだと問われて「どうせおれらは笑われもんだろ。若いときは大人に笑われて今はガキに笑われて、いまさらかっこつけてどうすんだ」「やらないでおさまんねえよ」。このシーンを見るとやっぱりアキオがメリケンのリーダーなんだなと思います。
今日やれなかったらおめえらのことぶっ殺すかもしんねえぞ。立て!とアキオが怒鳴るとなんとジミーが自力でいずこかへ全力疾走。ええ~!なぜ走れる!?「そっちでねえこっちだ」というハルオの声にジミーは引き返し、ハルオを先頭に皆走り出す。ジミーは再びヤングの背中に。走れるならもう背負う必要ないんじゃん?

・走ってライブハウスに駆けつけたかんなは無人のワゴンが止まってるのを見つけて自分のバッグ゛を投げ込むとあわててライブハウスの階段を駆け下りる。あの車はガソリン切れで動かないはず・・・ということはこの近距離にもかかわらずさんざん道に迷ってたってことなのか。

・なんと客席は総立ちの大ノり。ジミーさんもニューヨークマラソンと聞こえる程度にちゃんと歌えてる。「やればできんじゃん」と笑顔になるかんな。ジミーは歌の途中でかんなに気づいてアキオに知らせ、アキオはちょっと微笑んで指立ててかんなに合図。ハルオもちょっと笑う。かんなも満面の笑顔で両手の中指を立てて見せる。無言のうちに和解が成り立ってます。
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