・校舎の窓から放たれ、校庭に落ちる紙飛行機。鮮烈であると同時に後への伏線となるシーン。
・問題児揃いのバスケ部員のうち4名が一クラスに集中(のちにバスケ部に加わる三上も同じクラス)。このクラスは「落ちこぼれ組」なんだろうか。
ところでワンコ=勝地くんは、バスケ部唯一の一年生のためクラス内の場面には登場しない。『六番目の小夜子』といい、そんなポジションが多いような気が。
・辣腕銀行員が逮捕を経て高校教師へ転身、という驚きの展開を、アメリカを舞台にゴージャスに見せる。
第一話の半ばを費やして銀行員時代を描くことで、小津先生の教師離れした洒落たキャラクターと、この作品が普通の「教師が生徒を教え導く」ドラマではないことを視聴者に提示している。
・同じフレーズを繰り返し畳み掛けるような小津の口調は、どこまで脚本でどこからが田村さんのアドリブなのかわかりませんが、小津というキャラを端的かつ見事に成立させていると思えます。
・酔ってたとはいえ、たまたま遭遇した小津に向かって「刑務所入った人」と大騒ぎするカトケン(ユースケ・サンタマリアさん)。この時点では彼も他の先生もほとんど印象最悪。
学内のシーンより先にまずプライベートでの(ダメダメな)先生たちを描き、普通の弱い人間としての彼らの姿を見せる。
小津先生の赴任前のいわば前日談を長々見せたのと同様、このドラマの方向性を示しているシーン。
・失職、離婚の危機、娘・絵理(水川あさみさん)の反逆にも涙を見せなかった小津が、教員になることを承知したとき初めて号泣する。
これまで再起を、自分自身を信じていた小津が、ついに現実の前に膝を屈した場面。
彼の「転落」がじっくりと描かれたことに、この先の「生徒を教え導く」というより「ともにどん底から這い上がってゆく」物語のスタンスが表されているように思います。
・井本(森山未來くん)の口から発せられる「あんた幽霊みたいだな」という言葉。
絵理と同じ台詞を発したこととキャプテンという立場が、バスケ部メンバーの中でも彼を一際特別な役柄へ押し上げている。
・「子分かよ!」「しかもうちに来るかよ!」といったカトケンのツッコミの連続。二人の関係が早くも確立している。
そして勝手に眠り込む小津の「疲れた・・・」という呟きが、さんざん我が儘したあとだからこそ痛々しく響く。
・激昂して小津に掴みかかり携帯を取り戻すコモリ(池田貴尉くん)。「僕のです」と口調が丁寧なのが逆にヤバい感じ。
〈第二回〉
・それぞれのクラスの授業風景。各先生のキャラクターをわかりやすく見せている。
・バスケ部5人の停学問題をめぐっての先生たちのぶつかり合い。門外漢ならではの小津先生の倫理観が生きる。
第一回での銀行時代の描写から、企業利益のためには倫理など構わない人物と見えていただけに、その真っ当さが意外かつインパクトあるものになっている。
・みんなが廃部を喜ぶなかで一人わけありげな表情の井本。
目線と表情で、小津が井本の内心を見抜いているのがわかるようになっています。
・松沢(忍成修吾くん)と一葉先生(京野ことみさん)のロマンス(?)。忍成くんの顔立ちは、こういうちょっと妖しく色っぽい雰囲気にはまるなあ。
・カトケンがみゅー先生(瀬戸朝香さん)の服を単純に誉めるのに対し、小津はもっと派手な方が彼女にはふさわしいと言う。女心のツボの突き方が絶妙。
このタラシ的言動からしたら銀行時代に愛人の一人や二人いても不思議じゃありませんが、意外に奥さん一筋だったりしそうな気が。
〈第三回〉
・「いじめられるのは君の問題だ」と言われて小津を見つめるワンコ。いじめられっ子としては強すぎるくらいの目の光は、のちのち垣間見えてくる彼の意外な芯の強さを思わせる。
こういう強い眼差しを見ると「やはり勝地くんだなあ」と感じます。
・ひきこもり経験があり、小津から携帯を取り戻したシーンでも自閉的な印象だったコモリが父の倒産を機に?少なくとも小津には結構口を聞くようになっていく。
働かねばならない状況に陥って、否応なく外の世界と関わらざるを得なくなったためもあるでしょうか。
・「二学期だけでも(バスケを)やらないか」と言われてコモリは泣き出しそうな顔になる。
彼がまず小津に心を開いていったことがバスケ部と小津の間に絆を生み出してゆく。前半のキーパーソンですね。
・「俺を見るな」と小津を睨むピカ(脇知弘くん)の顔に一種の甘えと悲しみがうかがえる。
・大人しいワンコでさえカトケンには結構ズバズバものを言う(一応敬語だけれど)。カトケン生徒に舐められまくってます。
・コモリとの会話をきっかけに小津が辣腕銀行員としての自分のやり方を振り返る。小津もまた生徒によって変えられていっているのですね。
・体育館で小津の前に現れた5人の中でコモリだけが微笑んでいる。彼と小津先生との距離がぐっと縮まっているのがわかる。
(つづく)