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about him

俳優・勝地涼くんのこと。

『蜉蝣峠』(2)-5(注・ネタバレしてます)

2013-09-16 06:57:26 | 蜉蝣峠
・第二幕。ふたたび蜉蝣峠。なんか岩に刀で縫いつけられてる人が。と思ったらその人物のモノローグが始まる。
なんとこの人物、一幕で登場した領主(田丸善兵衛)で、「無念だ」「一言も言葉を発しないうちに殺されてしまった」のだそう。だから死んでから喋ってるんですかね(笑)。
しかしここにいるということは蜉蝣峠でやられたのか。なぜ闇太郎はわざわざこの場所でやったんだろう。

・田丸いわく、農民から年貢を取り立て公序良俗に勤めるのが使命だった。「そして二幕ではとにかく動かないという使命を背負っている」。
まさか二幕の間中このままなんてことないですよね?と思ったら「空しい、あまりの空しさにすっかり幽体離脱だー」、と三角巾つけた田丸が岩(大木?)の影から現れる。
もう動かないの終了ですか。結局さっきの死体は俳優さんでなく小道具だったんですね。

・そこへ「こっこっこっこ」とシャモリさんが現れる。「なあおっさんわし独立しようかなーと思ってんねん」。
今の動物プロにこのままおってもやりたいことがでけんのじゃないかと思うとシャモリ。「仕事が限定されるやんか」「いっそフリーになって自分を見つめ直そうかと思うねん」。中二病的発想ですがこれ天晴の願望だったりするのかも。
「けどなー仕事せんと子供生まれるしなー、ぼっこぼこ生まれるしなー」「フリーになると産休もとれんしやなあ」と軍鶏は悩む。なんともシュールな光景だ・・・。

・この愚痴に対し、領主は真面目に進退をアドバイスする。相手は軍鶏なのにいい人だな!しかし幽霊だけにシャモリには声が聞こえず、彼が死体だと気付いて「キモッ」というと「鼻にどんぐりつめたろ」。何つうばちあたりな。

・領主が軍鶏に(鼻にどんぐりつめるのを)やめろと叫んでいると、どんどんと太鼓の音がして「こっちでございまーす」と人がどやどややってくる。物音に軍鶏はどこかへ逃げる。
入れ替わりに現れたのは変態な格好のままの蟹衛門と配下らしい男たち、やじうまの遊女たち。蟹衛門は服くらい着ようよ。

・「むごい、なんとむごい」と死体を見た蟹衛門は言い、「おい下手人はまだか」と部下に問うと流石が引かれてくる。
「領主善兵衛殺しの下手人に相違ないな」と詰問すると「違います」と意外に流石は平静な対応。しかし刀に流石の名前住所緊急連絡先まで書いてあるといわれて顔色が変わる。
さっきの媚びた態度はどこへやら、こんな器の小さい男は斬らんとさんざん善兵衛の悪口を並べる。流石こそは器の小さい男だと思うのだが。刀に緊急連絡先書くくらいの細かさだし。

・怒った善兵衛(幽霊)の顔がすごく接近してきてるのに、見えてない設定の流石は全く笑わない。粟根さんお見事。
蟹衛門は昨日田丸の敵娼だった女に田丸について聞くが、彼女の領主評は「一言でいうと、ストレス ?」。以下こっちも悪口三昧。どれだけ嫌われてるんだ田丸。

・流石は闇太郎が下手人だと主張するが、お寸は闇太郎はずいぶん前に街を出た、がめ吉がお弁当も持たして送り出したと証言。ヤクザらが血まみれで戻ってきた闇太郎を見たと主張しても、お寸は知らないと言い張る。
なぜかお寸は上客のはずの田丸を殺した闇太郎をかばう気になってるらしい。もともと弟が書いた筋書きだからか?

・結局ああだこうだ紛糾した末、下手人が見つかるまで流石が牢に入れられることに。この人完全にとばっちりですね。しかし濡れ衣のわりになんで一幕最後であんなに挙動不審だったんだろ。

・皆が去ったあとに蟹衛門が「こんなもんでどうだ天晴」というとシャモリが出てきてサングラスを外し、「見事な裁きでございます」。
えっ、シャモリ=天晴なの?これまでは天晴の無意識の願望が形になったのが軍鶏(シャモリの時は天晴の、天晴の時はシャモリの記憶がなく、別人格の行動は夢のように感じているだけ)と解釈してたんですが、これでは天晴が好んで軍鶏コスプレをしてるかのようです。

・「姉ちゃんも助かったよ」という天晴に「愛する弟とご領主さまのためですもの~」とお寸は蟹衛門に媚びてみせる。ああそういうことか。最初から田丸を無きものにして蟹衛門を領主にしようという計画だったわけか。
蟹衛門は領主の地位が欲しいし、天晴たちにはろまん街を潰そうとしてる田丸が目障り。利害が一致した結果共謀して田丸を殺害したんですね。それなら納得。もし闇太郎が断ってたら、天晴が下手人を引き受けたんでしょうか。

・自分が領主になれば天晴組の天下だという蟹衛門に天晴は「おれは縄張りなんかどうでもいい。でけえことやりましょうよ」といつになく陽気な口調で言う。
縄張りなんか、というのは案外彼の本音なんだろうと思います。前にも「なわばりがどうしたと言ってる自分がちっぽけに思えてきた」なんて言ってたし。
しかし天晴組の天下になっちゃったら立派の女房のお寸は困らないのか、と思ったら困ってなかったですね(笑)。

・ここで大勢の女たちが出てきて揃って踊る。中に女装の銀之助の姿も。彼女らが踊る背景が割れてろまん街の光景が現れる。この舞台の転換場面はどれも粋です。

・並んで座ってる婚礼衣装の闇太郎とお泪。一幕のラストでの脅えたような様子に反してお泪は幸せそう。あんないきさつで所帯を持てるようになったとはいえ、やはりお泪にはやっと手に入れた幸せと感じられるのかもしれません。
かえってお泪との結婚を望んだはずの闇太郎の方がなんかむっつりした顔をしています。

・めでたいムードの中、立派はなぜかお寸にしっしってやられて追い出されてる。せっかくサルキジが帰ってきたのに。
というかサルキジ帰ってきた時点ではすぐ立派を呼んだくらい普通の夫婦仲だったのに。お得意の急転直下の夫婦別れですか。

・立派の家にはこれまでの「りっぱ」の暖簾の代わりに「やみ」という暖簾が下がっている。
天晴主導の計画に乗って領主を殺した結果天晴の片腕になったとみなされた闇太郎が、新領主蟹衛門のもとろまん街の実権を握るに至った天晴の余光で、力を失った立派に代わり一家を構える形になったのがうかがえます。

・「闇太郎、約束通り所帯を持たせてやるぜ」といつのまにかいつものスタイルで登場する天晴。いいのか、となぜか躊躇いがちな闇太郎にお寸は「あんたはこのろまん街の救世主だよー」と言う。
蟹衛門が領主になってから金回りが良くなりどこも大繁盛だと男たちは喜び女たちも闇太郎を称える。殺された田丸以外と立派以外はみんな幸せになった感じですが、人を殺した上に成り立った繁栄だけに複雑なものがあるんでしょうね。

・同意を求められたお菓子ちゃん仕様の銀之助も「はいー闇ちゃんさまさまです」と明るく答える。しかし女たちがわーっと側に寄ってくるのを無表情で流しつつ、闇太郎は銀之助を見て「なんか、ごめんね、銀ちゃん」と詫びる。
なぜ闇太郎が銀之助に謝るのか。銀之助が二代目お菓子を襲名するはめになったのはいわば本人の自業自得のはず。要は闇太郎が田丸を殺したことで新領主蟹衛門体制ができるのに大きく貢献し、蟹衛門に気に入られたっぽい銀之助はお菓子として振る舞うことから逃れられなくなったって話なんでしょうか。
闇太郎のせいじゃないというように悲しげな笑顔で首を振る銀之助はすでに女の表情です。

・行き場のない立派は屋根裏でもなんでもいいからせめて雨露防げる場所をと訴えるが、サルキジは「みっともないぜ父ちゃん」と一蹴する。
立派は天晴に土下座して、自分は追い出されてもいいが息子だけは、江戸で盗み働いてこの街に逃げてきたのを受け入れてやってくれと頼む。しかしサルキジは「昔のおれとは違うぜ。おれは江戸で男になった」と主張、役に立つと思うと自分のことを天晴に売り込む。
なんという親の心子知らず。自分の立場がわかってないというか、わかってるからこそ弱みを見せないように強がってるというか。それこそ父親のようにみっともなくなりたくないという思いがあって、素直に助けてくれと頭下げるかわりに自分を売り込むという態度に出てるんでしょうね。

・しかし天晴は「雑魚どもは面倒みてやってもいいがサルキジだけは虫が好かねえ」「おれにとっちゃてめえは他人以下だぜ」とこれも一蹴。サルキジの安っぽい強がりを見透かしてるゆえの反応でしょう。
ここでサルキジが我を折って頭を下げればまた違ったかもしれませんが、あくまでプライドを保とうとするサルキジは天晴にピストルを撃つ。結局まるで当たらず天晴の子分に取り押さえられるわけですが。分相応ってものをどうしても認められない。
まあつくづく実力不足のようなので分相応の待遇を受け入れてしまうと下僕扱いに甘んじるはめになりそうではあります。

・サルキジは半べそで「組の跡目継がせるって言ったじゃねえかよ、母ちゃん」と母に呼びかける。やっと強がりの仮面が剥がれてきた感じ。
お寸は背をむけて「やくざもんが親のいうことを信用してんじゃないよ」と冷たくあしらう。先にサルキジが帰ってきたときはあれだけ喜んでいたのに。
サルキジのみっともなさに愛想を尽かしたというより、この子はつくづくヤクザに向かないと悟ったゆえに(本来は女の子でもあることだし)この機にヤクザの世界から遠ざけようと思ったのでは。
跡目を継がせるために男として生きることを強要してしまった、最初から女として育ててればこんなことにならなかったというサルキジへの罪悪感があるだけにお寸も突っ張った態度になってしまうのでしょう。

・そこへにぎやかに現れたのはお泪の幼馴染の二人。結婚祝いの米俵を持ってくるが、「祝ご結婚」の文字が「呪ご結婚」と間違えていたのが後から思えば彼らの先行きを暗示したかのよう。
立派がその米に飛びつくがお寸にすげなく突き飛ばされる一幕もあります。

・立派をすげなく追い出したお寸もサルキジにはちょっと情のある目をむける。仲間もあっさり天晴の下について見捨てられ一人ぼっちになったサルキジが膝を抱えて泣くのに近づく銀之助。
「俺は女は買わないぜ。一人前の男になるまではな」となおも強がるサルキジ。しかし現在の自分が一人前でないことを認めただけでも進歩か。しかし銀之助を「女」と言ったあたり、この時はまだ彼の正体に気付いてなかったんですね。

・うんうんと微笑んで頷きながら話を聞いていた銀之助は、サルキジが背を向けた後になって「! おれか!」。自分が女と間違われてることに気づかずサルキジが女全般に対する思いを語ってると思ってたらしい。
ということは銀之助は自分を女と勘違いしてるのが可笑しくて微笑んでいたわけではない。サルキジの変に潔癖なところを微笑ましく感じてたんでしょう。銀之助はこんな情けない男のどこに惚れたのかと思ってましたが、こういう妙な可愛げの部分ですかね。
自分が男にも女にもなれない半端な立場だけに、居場所を失ったサルキジの寄る辺なさに共感したのもあるだろうし。

・お菓子という名前がおかしいという話題で盛り上がる?ものの、どうも二人の会話がかみあわない。ついにサルキジが「やーめーてー!もっと中身にある話をしてー!」と叫びだす。
それに対し銀之助は「やべえ、もっとも苦手な」と口走っていますが、中身がある会話が苦手ってことでしょうか。どれだけふわふわ生きてきたんだ。

・かくて話の内容は闇太郎は何者かに移る。闇太郎を大通り魔事件の生き残りと話す銀之助に「妙だな、おれにも似たようなことがあった」「空き巣と食い逃げ専門のけちな泥棒なんだが・・・」と自分があった闇太郎(やみ太郎)の話をする。
一幕の終盤でサルキジが「闇太郎?」と呟いたときには、彼がこんなネタを持ってるとは思わなかったなあ。しかしやみ太郎、そんなもんに落ちぶれちゃったのか・・・。

・闇太郎が二人いるとはどういうことなのかと頭をひねる銀之助に「簡単なことよ、どっちかが偽物ってこった」と羽ばたきするようにマントを広げてジャンプしてから走り去るサルキジ。
なんだこのアクションは。銀之助も「なにその去り方」とツッこむのかと思いきや「かっこいいー!」。
格好いいか!?無駄な強がりを並べ立てるサルキジらしい見た目ばかり派手な、でもスベってるパフォーマンスだと思ったんだが。これを格好いいと思うあたり銀之助の気持ちが相当サルキジに傾いてきてる証なんでしょうね。
しかし声の出し方とか素振りとかすでにおねえ化が大分進行してます。


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