チームのトップとして部下を守りたい、というより人として目の前で知り合い(しかも女性)が危険にさらされてるのを放っておけないという、ヒューマニスト・フェミニスト的観点からの行動のように思います。
「揺れが収まるまでみんな机の下から出ないでください」と指示するあたりはリーダーらしいですが。
・美雪の悲鳴に「森ちゃん!」と叫ぶ浅野の声にはいつにない緊迫感が。しかし彼が助けに出る前に里中が飛び出していったため、すごすごと机の下に戻る。
毎度おいしいところを里中に持っていかれる浅野ですが、これは痛恨の出遅れですね。もともと里中に憧れるところのあった美雪はここでかばってもらった事で完全に里中に落ちてしまいましたから。
・机の下から携帯で幼い我が子に連絡する近くん。「おとうちゃんでちゅよ」ほか幼児語オンパレードのテンション高い会話は微笑ましい通り越して不気味ですらあります。
しかし近くんの子供って何歳くらいだろう。電話に出て話が出来る&言葉使いが「でちゅよ」(で話しかけられる)レベルとなると2歳~3歳か。
浅野くんが近くんに子供がいるのを知らなかったあたり、近くんもあまりプライベートは見せない人のようです。
・同じく携帯でお姉さんにカブト虫の幼虫の安否を尋ねる浅野くん。やっと彼の虫好き設定が(一応)生かされる日が。
お姉さんが一緒に住んでるということは実家通いの可能性大。そしてお姉さんは平日休みの人みたいですね。地震をきっかけにマーケティング課の面々のプライベートが少しだけ明らかになっていきます。
・机の下から里中に電話する東海林の腕に黒岩がしがみついてる。
気づいて慌てて手を離して机に頭をぶつけてるあたり、東海林に特別の好意を持っているゆえにしがみついたわけではなく(しがみついたのがわざとでもたまたまでも、彼を好きなのならもうちょっと照れた顔とかするんじゃないか)日頃強がってる自分が地震にビビッたところを見せてしまったのが恥ずかしかったのだろう、と当初は思ったんですが、後の言動のあれこれを見るとやはり東海林に気があるみたいですね。
東海林が春子が地震の時どうしてたか尋ねるのを聞いて不愉快そうに彼の方を振り向くのも、彼の心に真っ先に春子が浮かぶことが気に入らなかったようにも思えます。時折見せる黒岩さんのこうした可愛げはなかなか好きだったりします。
・「やっぱああいう奴はこういう時に電話する相手もいないんだろうな。寂しいねえ」と東海林は言うが、マーケティング課の面々がまず身内に電話してる(小笠原の電話先はわからないがやはり家族っぽい)のに対し、東海林が電話するのは親友の里中である。
彼にも電話するような家族が、少なくとも地震の揺れが及ぶ圏内にはいないんじゃないんですかね。
・春子は地震の中でも仕上げた書類を桐島のデスクへ持っていき、「ずいぶん揺れたね~」などと言いながらお茶をすする桐島に「部長、定時で帰れなくなりますので早くご確認を。」と言い放つ。
桐島は息を呑みつつ一言「はい」。地震は終わったのだからスムーズに仕事に復帰すべき、不必要に職員を残業させるべきでないのはその通りなんですが――。
桐島も地震にも全く動じずマイペースを貫く春子にロボットを見るような不気味さを覚えているみたいです。
・「残業は仕事のとろい社員がお給料を水増しするためにするものです」と言い放つ春子。こりゃ社員激怒するわ。
しかしホッチキス対決だの東海林が春子にガツンと言えるかを販売二課総出で覗いてたことなど思うと、「今日もたくさん仕事残ってる」のは春子の言う通り「仕事がとろい」もしくは「仕事してない」せいな気も。この時も春子の暴言に怒って東海林はじめ大勢で(残業ほっぽらかしで)春子追っかけてますし。
春子は残業しないと言っても途中の仕事を放り出して帰るのでなく、時間までに仕事を終えて帰ってるわけですから。しかも仕事の中身もきちんとしてる。
本来会社の利益(残業代削減)を思えば春子方式が最善。実のところ社員たち自身それがわかってるから、わかっててもできない事を可能にしてる春子にむかつくんでしょうが。
・18時ジャスト、里中が皆のコートを取り出してハンガーラックに移しかえようとしている。時間から行くと定時きっかりにあがる春子のためなんでしょうが――主任、あなたそんなことまで・・・・・・。
・オフィスを出る春子の後をわらわらと追ってゆく販売二課の面々。
春子の言い草に怒って追いかけてるのだが、春子があまりにマイペースを貫いているゆえに、彼女が彼らを従えて歩いてるように見えてしまう。格の違いが歴然、とでもいうか。
・「賢ちゃん見ろ、瞬間移動してるぞ!」 東海林の台詞もさることながら、本当に瞬間移動としか思えない早さで移動している春子に笑った。いろんな意味でスーパーすぎる(笑)。
そして「天パ主任」という春子の表現に「天然パーマ主任だ!」とえらくずれたところで怒っている東海林にも笑った。第一回では「くるくるパーマ」と言われて「これは天パだ!」と反論してたんだから、「くるくる主任」でないだけいいじゃないですか。
・イベントのため臨時で来たハケンのおばさまたちに、挨拶するなり「可愛い~」などと言われてしまう里中主任30歳。外見だけでなく雰囲気、照れたような笑顔とかも含めての「可愛い~」なんでしょうね。
30男が可愛いと言われてしまうのもどうかという気もしますが、まああの人そういうの気にしなさそうだし。
・掻き集めのハケンたちの教育不行き届きを低姿勢で詫びまくった一ツ木さんが直後「どうぞお話しください」というように里中の方にちょっと手を出してみせる、その仕草と妙に重々しい表情がなんだか可笑しい。
・あの春子に面と向かって「人使い荒くてすごい感じ悪いのよ」と言い切ってしまうハケンの女性(アリガさん)。なんと大胆な。
ハケンとしての教育が行き届くかどうか以前に常識に欠けた発言でもある。若い子ならまだしも。
・「ハケン35歳定年説」なるものがここで登場。
「ハケンにハケンの面倒を見させようとする正社員に問題はないのか」「ハケンは3ヶ月に一度リストラの恐怖にさらされる」などその回の焦点となる「派遣社員とその周辺が抱えている悩み・問題」をよく十回分探してストーリーにまとめあげたものだと改めて感心。
・「人間の死亡率って100%よ。」 ごく当たり前のことなんですが、人はしばしばそれを見落としがち。人間の一生、多寡の知れた時間を生きるには過剰なほどのお金や健康や安心・安全を求めようとする。
刹那的に生きろというのではなく、無駄に将来を思いわずらって臆病になりすぎるなという事ですね。シンプルだけど含蓄のある言葉です。
・義理チョコを配る相手に無意識に里中を含めない美雪。もちろんあげる気がないのではなく本命だからですねえ。
「一人抜けてない?」と冷静にツッコむ春子は、彼女の気持ちを見抜いてるんでしょうね。
・ウグイス嬢のムラセさんに東海林が原稿についての指示を与えるが、彼女の目は東海林の背中越しに熱く里中を見つめている。後の告白→玉砕の伏線ですね。
・東海林は春子の脇を通りざま彼女が詰めてるチョコに手を出そうとしてばしっとはたかれる。このあたりほとんど夫婦のノリですね。
・「去年は姉貴にもらった1個だけだけど、今年は義理でもいいから欲しいなあ~」と目を細める浅野の視線は当然美雪を捉えている。「欲しいなあ~」と伸ばす語尾のへろへろした感じがいかにも情けない侘しい感じです。
しかし浅野くんがそんなにモテないとは意外。彼だって外見も言動も女子から「可愛い~」って言われそうなタイプだと思うけど。オタクなのが悪いのか(設定によればメカ大得意の昆虫マニア)。
・・・いや、「去年は」って言ってるから一昨年以前はたくさんもらってたのかもしれないぞ?
・一個のチョコの価値を競い合う浅野と近くんの会話に「レベルの低い話をしてるね君たちは」と割り込む東海林。
まあ仮にも販売二課主任となれば義理チョコの一つや二つ・・・と言いたいが、同じ課に女子は義理チョコなどくれそうもない黒岩のみ、ハケン差別者の彼はハケン女子から嫌われるだろうから、これは一個すら危ういか(と思ってたら後で意外な展開に)。
男三人がそんな話をするところにウグイス嬢ムラセが里中に「一目惚れなんです!」の激白とともに本命チョコを。ここに圧倒的勝ち組が一人います。
・「シルスマリオ」の社長(もたいまさこさん)にチョコの扱いについて抗議されると、自分が命じたくせにチョコを並べた美雪を「何やってんだ君は!」と叱り飛ばす東海林。
「何も知らないハケンが申し訳ありません」という台詞はハケンならずとも事情を知るものなら怒りを覚えるでしょうが、美雪はともかく春子までが大人しく「申し訳ありませんでした」と頭を下げる。それは会社組織のためを思えば正社員よりハケン・アルバイトが罪をかぶる方が被害が少なくて済む―東海林もそう考えたうえで自分のためでなく会社のためハケンに罪をなすりつけたのだ(少なくとも東海林はそう主張するはず)―と考えたからでしょう。
しかし一度二度はなすりつけに成功しても、相手の商品や仕事スタイルへのこだわりを本当には理解していない東海林の化けの皮はやがては剥がれてしまうはず。マグロ解体師のツネさんの時がそうだったように。
チョコ一つ一つを大切にするゆえにこれまで大量販売をしないできたと想像される「シルスマリオ」を口説いた東海林の手腕は大したものですが、アフターケア、商売相手を真に思いやる気持ちに欠けているため確固たる信頼関係を築けないのが彼の弱点ですね(今回はそれ以前の段階で騒ぎが起きてしまいましたが)。
逆に里中は相手の信用を得ることには絶大な能力を発揮しそうな気がします。この二人が補いあうとちょうど良さそうなんですが。
・「特Aクラスでも所詮あんたもハケンね。世間ではハケンなんて全く信用されてないのよ。」と言うアリガさん。
しかし初対面で春子や美雪を「アルバイトじゃ話にならない」扱いした社長は、春子に娘を助けられてハケンにも関わらず春子を信頼するようになる。最終的にモノを言うのは正社員かハケンかの肩書きでなく、もちろん35歳前か後かでもなく、その当人の実質(能力・人柄)なのを春子はわかっているから、東海林の身勝手にも、アリガの言葉にも特に口を挟むことはしなかったのでしょう。
・里中に振られたムラセが職場放棄するにあたっての台詞が「失恋したショックで、ハートの被り物なんてかぶりたくない」だったとか。
失恋してなければ、あれかぶるの抵抗なかったのか。実は単に被り物が嫌で逃げたんだったり?
・「失恋したからっていちいち仕事を放棄されたらたまらないよ!だからハケンは信用できないんだよ!」と言い出す東海林。そのハケンを使って今から仕事しようとするって時に、彼女たちのモチベーションをどん底まで下げてどうするのか。
一営業マン、個人プレーヤーとしてはなかなか優秀な東海林ですが、マネジメント能力に置いては最低ランクですね。それではこの先の出世は危ういんじゃ。
そして春子にキスしてから「ハエ」呼ばわりされる前までの間はハケン全般に対する態度も柔らかくなってた感のある東海林が、このところまたハケンに対する敵意を強めているのは春子にフラれた恨みのように思えるのですが。自分だって「失恋」で仕事に差し障り出してますよねえ。
・「東海林主任、ここの全員、敵に回しましたよ」と呟くように浅野が言う。
浅野としては場の空気に居たたまれなかった&さすがに東海林の状況を考えない暴言に呆れたというばかりでなく、美雪の手前も気にかかったんでしょうね。
「浅野おまえ、社員がビビるな」という東海林の返しにも「社員枠で俺まで巻き込まないでくれ」って感じだったのでは。
・「大前さん、あなた選挙演説のウグイス嬢やってて、代議士三人当選させましたよね。」
これはまた意外な資格(特技?)が。ここまでの話の流れで春子がウグイス嬢の代役をやるという展開を読んだ人はどれくらいいたのか。助産師の資格を予告で出したのは一つにはこの「隠し玉」があったからなのですね?
しかし代議士の当選ってウグイス嬢の功績なのか。そりゃウグイス嬢の声の魅力も皆無じゃないだろうけど。実際このバレンタインイベントも春子の声で客が殺到してましたからね。
・東海林にハートのかぶりものを示された春子は「お断りします」と言うが、いつものような切口上のきつい言い方でなく空気の混ざったソフトな、要は鼻で笑ってるような声。・・・本気で嫌がってるんだな。
なのに東海林の「ふーん、かぶるのやなんだ」で説得されてしまったのは、「嫌だと言ったら東海林に負ける」ような気がしたんでしょうねえ。ああ意地っ張り。
・かくてハートをかぶった春子。篠原さん女優魂だ。そしてその声の可愛らしさには一瞬吹き替えを疑いました(笑)。
春子が語り出すと皆がうっとりと聞きほれ、梅の蕾も花開く。このくらい思い切って嘘っぽくやってくれると清清しささえ覚えます。
「人生いろいろな人に贈る、島倉チヨコ」のところで春子の目がきっと鋭く(いつもの春子の目に)なるのも笑いどころ。
・「6時までに売り切らないと定時に帰れませんので」。売り切れようと売り切れまいと定時に上がるのではなく、定時に上がる以上は売り切って帰るという考え方。
オープニング前に、終わらない仕事は残業して片付けるのを当たり前にしている社員を批判しただけのことはある。
・シルスマリオに追加の注文を頼みに行くという東海林に里中が自分も行こうかと同行を申し出るが、東海林は「大丈夫、あそこの社長とはツーカーだから」と断り、代わりに浅野を連れていく。
実際には「ツーカー=自分が頼めば二つ返事で引き受けてくれる」どころか、必死に頭下げてお願いしまくりだったわけですが。プライドの高い東海林としては、親友であると同時に同期の(恋も?)ライバルでもある里中に格好悪いところを見せたくなかった、かばってもらいたくもなかったんでしょう。ただでさえマグロ解体ショーの時の借りがありますから。
・6時上がりでも契約通り7時までの分の時給が出るのかと応援ハケンたちに問い詰められた美雪は、答えられなかったことで「ほんと頼りにならないんだから」と聞こえよがしに嫌味を言われる。
里中がいてくれたからフォローしてもらえてよかった(これが東海林なら7時までの時給は出さなかっただろうけど)。
しかし裁量権のない美雪を置いて正社員が二人揃って現場を離れるつもりでいた(東海林が賛成すれば里中も同行してた)ことがそもそも問題だ。
・春子の忘れ物を発見する里中。中を確認するに当たって誰が見てるわけでもないのに「失礼します」と謝るのが実に里中らしくて微笑ましい。こういうとこ真性のいい人なんですよね。
ここで彼が春子の免許証(生年月日が書いてある)を見たことが、いきなり翌日夜のお誘い(春子の誕生パーティ)に繋がるわけですね。
・バレンタインデーの夜に里中から誘いを受けたことで、すっかり舞い上がった美雪がぼーっと歩いていて木にぶつかる。ベタすぎるのもドジっ子の彼女らしく、またその心中のどきどき感を伝えていて可愛らしい。
なのに実際には里中は春子の誕生祝いを考えているわけで・・・。どちらもほんわか系お人よしの美雪と里中、美男美女でもあり結構お似合いだと思うんですけどね。頼りないカップルになりそうではあるけど。
・シルスマリオを訪ね、あと50個の追加を懸命に頼む東海林は浅野を指して「こいつの事こき使ってください」などと言い出す。
このために新入社員で言うこと聞かせやすい浅野を連れて来たか(笑)。里中同様子犬系で年上女性の同情引きそうですし。
無理やり頭下げさせられる浅野くん、思い切り迷惑顔です。すまじきものは宮仕えか。
・春子に免許証ファイルを入れた袋を届けにきた里中は、誰のかわからなかったので中を見てしまったと平謝り。いや善意で届けてあげたんだからそこまで小さくならなくても。
・「私は就業時間外は社員の顔も見たくないんです」と言い放ったあとで、春子は「では」と笑顔を作ってその場を出て行く。
春子の場合怒鳴るとか無表情とかより、笑顔の方がある意味最後通牒という感じで怖いです。
・カンタンテを出た里中は2階に電気がついたのを見て、足を止めて物思わしげに窓を見上げる。
あそこにはオフィスともカンタンテで踊る時とも違う、自分の知らない春子がいる。そんなことを思っているのでしょうか。
・シルスマリオでチョコの搾り出し(全くの素人に任せるには結構重要パートな気が)に励む浅野を社長が「あんた手先器用だね。S&Fクビになったらうちにおいで」と誉める。やはり年上女性に受けが良いらしい。
手先が器用なのは(設定上)メカ好きだからですかね。浅野も誉められて素直に嬉しそうな顔してますが、東海林に「よかったな浅野」と言われると複雑な表情に。上司格の人に言われたんじゃ肩叩きみたいですからねえ。
・「あんた、あたしたちにここまでさせたんだから、売れ残りなんて承知しないからね」。いかにも不吉な伏線めいたこの台詞。しかしまさかあんな形で売れ残りが出るとは。
・黒岩は東海林にチョコを渡し、「お返しは、三倍返しでお願いします」と冗談めかして言うが、「義理チョコ、ありがとうございます」だの「本気チョコ買うんだったら割引してやるぞ」だの言って去ってゆく東海林を見てふっと溜息をつく。
何と本当に東海林に気があったのか?最初に「東海林くん!」と呼び止める声も妙に緊張してる感じがあったし。
(つづく)