佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

しーちゃんのひとりごと 2

2012-03-26 | 童話

ここは虚空蔵山(こくぞうさん)の森の中じゃ。

 

コクゾウサン?

 

虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)が祀られた山という意味じゃ。 

 

コクウゾウボサツってなぁに? 

 

仏教の世界で「覚りを求める人」を「菩薩」というんじゃが、

その中の一人が「虚空蔵菩薩」。

虚空蔵とは、宇宙のように広い無限の智恵と慈悲を持っておるという意味じゃ。 

 

ふーん、よくわかんない。 

 

わからんでもいい。

人間の考えることは、わしにもようわからん。

賢い動物のようで、とてつもなく愚かな生きもののようで…

 

ところで、虚空蔵山は日本中にいくつもあるが、今では名前だけのところがほとんどじゃ。

しかし、ここは違う。

今も山頂に虚空蔵菩薩を大切に祀っておってな、

里に住む人間たちはこの山を「こくんぞう」とか「こくんぞさん」と、親しみを込めて呼ぶんじゃよ。 

 

「こくんぞさん」かぁ、おもしろいね。

わたし、今日から「こくんぞさんちのしーちゃん」になる!

おじいさんは「こくんぞさんちのスダジイ」だね。

嬉しい?

 

そりゃあ、嬉しいよ。

今は、あちこちの山が、人間によってズタズタにされておる。

高速道路やトンネルやダムを造るために、わしらの仲間は簡単に切り倒されてきた。

だが、この山で生まれ、「こくんぞさんちのスダジイ」になったおかげで、

その心配をせずに安心して暮らせるから、それは嬉しいさ。

 

どうして心配しなくてもいいの?

 

この山の麓には本当に賢い人間たちが住んでおるからじゃ。

本当に大切なものは何かを知っておる者たちじゃ。

 

本当に大切なものってなぁに?

その人たちには、どこに行けば会えるの?

 

本当に大切なものが何か・・それは自分で見つけるんじゃよ。

誰かに教えてもらって見つかるものではない。

 

その人間たちは川原(こうばる)という里に住んでおる。

しーちゃんも元気で旅を続けていたら、きっと会える。 

楽しみにしているがいい。

 

そのとき、東の山の尾根の向こうから、オレンジ色の光がこぼれ出しました。

 

                                                  (つづく) 

 

 

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