私、しーちゃん。
本名、雨野滴(あめのしずく)です。
高い空の上で、たくさんのお友だちと雲のお船に乗って旅をしていたんだけど、
急に冷たい北風が吹いてきて、
あまりの寒さにお友だちと抱きついて震えていたら、
先生が大きな声でこう言ったの。
皆さん、大丈夫ですよ。
周りのお友だちとしっかり体を寄せ合って、肩を抱き合っていてください。
あなた方の体は一つに溶け合って、雨粒となって地上に降りて行くのですよ。
今まで空の上から見てきた素晴らしい地球、
あなた方のふるさと、水の惑星、
そこに帰って行くのです。
怖いことは何もありません。
地上でもたくさんのお友だちに出会えるでしょう。
どうか元気で、それぞれの旅を続けて下さいね。
また会える日がきっと来ます。
その時、それぞれの旅の話を聴かせてもらうのを私は楽しみに待っていますよ。
さあ、お行きなさい。
その声が終わるか終らないかのうちに、私たちは次々と落ちていったの。
地上へ、地上へ・・・風に乗って
海が見える、森が見える、街も見える、
私はどこに落ちてゆくのか不安だったけど、
それよりも、風さんがあんまりびゅんびゅん飛ばすので、くるくるくる~ん
アレ~~~~~~~~~~~~~~
目が回る~~~~~~~~~~~~
どのくらい時間がたったのか・・
気がつくと、私は、高ーい木のてっぺんにいたの。
あたりは真っ暗で、空にはお星さまとお月さま。
やっと目覚めたようだね。
あなたはだあれ?
私はスダジイ。シイの木じゃ。
お前さんは今、私の葉っぱの上にいるんじゃよ。
落ちたのが、ビルのてっぺんや石ころの上じゃなくてよかったのう。
寝心地がよかろう?ゆっくりしていくがいい。
ありがとう、スダジイのおじいさん。
ところで、ここはどこ?
ここかね、ここは虚空蔵山という山じゃよ。
(つづく)