佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

しーちゃんのひとりごと 3

2012-03-29 | 童話

わーっ、まぶしい!

東の山からこぼれ出たオレンジ色の光が、みるみるうちに空や雲を茜色に染め

地上を照らし始めました。

 

わー、ちっちゃなかわいい田んぼがいっぱい!

まるで階段みたい!

 

あれは棚田というんだよ。

この辺は平地が少ないから、

昔から山の斜面の土地を耕して、米を作ってきたんだよ。

 

あ、あれは何?

黄色い帯のようなものが・・・

 

黄色い帯?どれどれ?

ああ、あれは菜の花じゃよ。

ほれ、その横に川が見えるじゃろ?

石木川というんじゃ。

石木川のほとりにはこの時期、菜の花がいっぱい咲いておるからな。

流れに沿ってくねくねと、帯のように見えたんだね。

 

石木川?

ほんとだ!きらきら光ってる!楽しそう・・

しーちゃんもあそこを走ってみたい!

 

あれ?

向こうに見えるのは湖?

 

あれは、大村湾といって、海なんだよ。

石木川の流れも、川棚川という大きな川と出会って、一緒に流れてゆき、

最後は大村湾に辿り着くんだよ。

 

わー、いっぱいお友だちと出会えそう。

早く行きたいなぁ。

ねぇ、スダジイ、

石木川へ行くにはどうすればいいの?

 

そうさな・・

それほど簡単ではないぞ。

川の滴になるには、まずこの山の地下深くを旅するんじゃ。

歩いて歩いて歩きまわるうちに、

しーちゃんの体内に森の恵みが溜まってくる。

そうすると体が自然と川に向かっていくんじゃよ。

 

森の恵み?

 

そうじゃ。

その恵みが、きれいな花を咲かせたり、

美味しい米を作ったり、元気な魚を育てたりするんじゃから。

 

え?そうなの?

海の魚は海の餌を食べて育っているんじゃないの?

 

そのとおり。

じゃが、その餌がたくさん元気に育つには、森の栄養分が必要なんじゃ。

その役目を果たしているのが川の滴の一滴一滴じゃ。

 

そうかぁ・・

わかった!スダジイ。

しーちゃんは、これから虚空蔵山の地下の旅に出かけます。

そしていつか石木川の滴になれるよう頑張ります。

 

そうかい、そうかい。

しーちゃんなら、やれそうだな。がんばるんだよ。

 

ああ、もう完全に夜が明けたようだ。

ほら、鳥たちの鳴き声が聞こえてきただろう?

喉の渇いた小鳥たちに飲み込まれないうちに、そろそろここを降りた方がいい。

 

はい!

スダジイ、いろいろ教えてくれてありがとう。

元気でね。

いつか石木川の滴になれたら、

川を流れていきながらスダジイに手を振るから、

ここから見ていてね。

 

わかった。待っているよ。

 

じゃあ、さようなら~~~~~~~~~~~~~~

 

しーちゃんは、葉っぱから葉っぱへ、

ポロン、ポロン、ポロ、ポロンと歌うように降りていきました。

 

                                                    (つづく)

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