佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

がんばる

2011-04-10 | 雑感

「がんばる」とは

もともと「眼張る」と書いていたらしい。

歌舞伎役者が見えを切るときに大きく見開いて、ものを見据えているあの眼のことだそうだ。

藤川幸之助さんの詩「眼張る」から知った。

 

母はほとんど一日中目を閉じているが、ときどき「眼張る」時がある。

看護師さんが「お熱を測らせて下さいねー」と言って、体温計を入れたのに、

耳の遠い母には聞こえていなくて、急に脇の下に冷たい物があてられてビクっと驚いたとき。

私が、はずれかけた酸素チューブをきちんとはめようとして鼻の穴に入れたとき。

天井に現れた幻覚、鳥や人の姿を追っているとき、などなど。

いつもは細い眼が、パッチリ見開かれて、顔が急に元気に見える。

 

でも、昨日からほとんど目は開かない。

開いても「眼張る」のではなく、半開きといった感じ。

もう眼に力が入らないのだろう。

まさに「がんばれ」なくなってきたのだろう。

 

その分、いま鼻が頑張っている。

昨日は息づかいが荒く、口は開けっぱなしでとても苦しげだったが、

今日は落ち着いていて鼻で呼吸していた。

目覚めると、鼻をふんふん鳴らし、まるで何かしゃべっているようだ。

 

薄いタオルケット1枚しか着てなかったので、「寒くない?」と耳元で大声を出してもングングとしか言わない。

もう言葉が出なくなったのかしら…と思っていたら、

オムツを替えた後、看護師さんにお尻を洗ってもらっているとき、石鹸水が浸みたようで、

「なにするのー、痛いよー、痛いよー」と、突然明瞭な言葉を発した。

看護師さんが退室してからも、「痛いよー、痛いよー」と、10回くらい繰り返していた。

なだめながら、

「な~んだ、お母さんたらしゃべれるんじゃない。さっきのングングはなんだったの?」と文句言ってやった。

 

しかし、しばらくして落ち着くと、また、フンフン、ングング、ウンウンとなる。

そこへ今度はお口のお掃除が始まった。

モアブラシで痰などを除去して、ジェリー状の保湿剤を塗ってくれるのだが、これもなぜか痛がる。

「やめてー、やめてー」と叫ぶ。

その保湿剤の効果をこれまで確認しているので、私も母の手を押さえ協力する。

母はすごい力で私の手に爪を立てて抵抗した。

終わると、今度は10分くらい「やめて~やめて~」を、小さな声で繰り返していた。

その後は再び、鼻歌ならぬ鼻言葉でしゃべる。

ウンウン、フンフン、ングング・・・

 

ねえ、お母さん、

眼張らなくてもいいから、明日はお口を開けてお話してね。

何が言いたいのかさっぱりわからないんだもの・・

 

 

コメント
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