行き過ぎて尚連翹の花明かり 中村汀女
はるか昔の学生時代、ドイツを旅していた時、あちこちで黄色い小花が咲いて
いて、街中が黄色く見えるようでした。道行くおばさんがGold Regenよと教えて
くれました。「黄金の雨」、ちょっと仰々しい名前です。ギリシャ神話でゼウス
が見初めたダナエーに会うために、黄金の雨に変身して塔に忍び込むという話
がありますが、それとは関係なく、ただ黄色い雨のように見えるから付けられ
た名前でしょう。日本に帰ってみると、何のことはない、そこここに咲いている
3月の花でした。それ以来、連翹は私には青春を思い出させてくれる花です。
春に咲く黄色い花の代表のもう一つはこの黄水仙でしょう。水仙の花言葉は、
あのギリシア神話のナルキッソスからきた「うぬぼれ」や「自己愛」ですが、
こんなにきれいだったら、ちょっとうぬぼれてもしょうがないと思う美しさです。