キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

椿と花水木

2011-03-18 16:52:40 | 季節の花々
椿と花水木―万次郎の生涯 (津本陽歴史長篇全集)
クリエーター情報なし
角川書店


            

        『椿と花水木』は、津本陽の長編歴史小説です。主人公はジョン万次郎こと仲

        浜万次郎です。最近出たジョン万次郎を描いた児童書を訳してみたいと思って、

        今ジョン万次郎関係の本を読み漁っています。これはそのうちでも大変な力作

        です。ただこれは伝記ではなく小説なので、史実に基づいた部分がほとんどな

        がら、脚色された所もあると考えてよさそうです。特に捕鯨船の船長ホイット

        フィールドに連れられて行ったニューイングランドのフェアヘイブンで、万次郎

        はキャサリンという娘と出会い結婚したことになっていますが、ほかの資料は

        全く彼女に触れていないか、ほんの顔見知りだとするか、せいぜい万次郎が

        あこがれていた女性としてチラッと現れるだけです。この本の中ではキャサリ

        ンは海で不幸な水死を遂げ、万次郎の妻になれなかったことになっています。

             

      題名の椿は日本を、花水木はアメリカを象徴するものですが、それはまた万次郎

      の愛した二人の女性、後の愛妻鉄とキャサリンを表しているのかも知れません。


      漁船で遭難し、約五ヶ月鳥島でアホウドリを食べて生き抜き、やがてアメリカに

      渡って大変な刻苦勉励の末帰国して、日本の夜明けに貢献した万次郎の不屈

      の精神、またその謙虚で愛に満ちた人となりを、今こそ私たち日本人は思い出

      さねばならない時なのではと思います。
コメント
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