手ぶくろを買いに (日本の童話名作選) | |
黒井 健 | |
偕成社 |
新美南吉の童話はどれも、言葉が美しく、可愛く、底にそこはか
とない悲しみが流れていて、いつ読んでもじんと来ます。特に
知られている『ごんぎつね』は、子どもの教科書に載っているの
を読んだ時涙が出ました。『手ぶくろを買いに』は『ごんぎつね』
ほど、辛く悲しい気持ちにならず、ほんわか優しい気持ちになれ
るお話です。「おかあちゃん、おててが冷たい、おててがちんちん
する、、、」と子ぎつねが、母ぎつねに訴えるとところなんか、あ
まりの可愛らしさに、思わずそばにいるきつね色の柴犬なっちゃ
んを胸に抱きしめたくなったほどです。色々なバージョンが出てい
ますが、『ごんぎつね』も『手ぶくろを買いに』も黒井健さんの絵の
版が秀逸です。きつねの手を出したのに、赤いかわいい手袋を
売ってくれたと聞いた母ぎつねがつぶやきます。「ほんとうに人
間はいいものかしら、ほんとうに人間はいいものかしら」ここには、
作者新美南吉自身の人間に対する不信感、でも信じたくてたま
らない気持ちが投影されているのだとか、こんな美しいお話を書
くことのできる純真な人だからこそ、人を信じられなことが人一
倍辛かったのでしょうね。
てぶくろ―ウクライナ民話 (世界傑作絵本シリーズ―ロシアの絵本) | |
エウゲーニー・M・ラチョフ,うちだ りさこ | |
福音館書店 |
手袋を題材にした『てぶくろ』というウクライナ民話があります。
おじいさんが落とした手ぶくろに、ネズミ、カエル、キツネ、クマ、
どんどん入ってぎゅうぎゅう詰め。ありえないんですけどね。暖か
そう!これも絵がいいんです。それぞれの動物がとても個性的。
絵本の手袋に負けない、きれいな赤いチェックの手袋を友人
からクリスマス・プレゼントにいただきました。病気のお見舞い
の意味も込めてくださったのでしょう。手も心も暖かくなりました。