「おおきな おおきな やなぎの きの したに、ちいさな ちいさな むら
がありました。その むらは やなぎむらと いいました。」こんなひらがな
の分かち書きの紹介で始まる、
カズコ・G・ストーンさんの「やなぎむらの
おはなし」シリースは4冊あります。それから、おとなりの「しげみむら」
のお話も1冊あります。
登場人物はアリやクモやトンボなど昆虫たち、そこにカタツムリやトカゲなど
小さい動物も加わります。カズコさん、大の昆虫好きで、今住んでいるアメリ
カへ行った時、知らない昆虫に会えるかと期待して行ったら、全然昆虫がい
なくてがっかりしたとか。多雨で緑の多い日本は昆虫の宝庫のようです。
ほとんどのページが草原や草花で埋めつくされ、その中に小さな昆虫たちが
かわいらしくもいきいきと描かれています。たまにわがままなやつもいるけ
れど、みんなとても仲良し。それそれが自分の得意なことを生かして、協力
して生活しています。たとえばクモは糸でベッドを作る、トンボはお手紙を
届ける、ハチは蜜を集める。何もしないようなカタツムリでさえ、ぬるぬるし
た足跡を残して、帰り道を教える。嵐が来てもみんなの知恵で切り抜けます。
理想郷ですね。ちょっと住んでみたいな。
絵本なので、擬人化されていて、昆虫たちがパーティーを開いたり、ホテルを経
営したりしますが、そこは昆虫に詳しいカズコさん、昆虫の生態をさり気なく教
えてくれます。チョウチョの羽化や、冬ごもりや。
やなぎむらの冬を描いた「ふわふわふとん」は他の緑の4冊に比べて、背景が白
い雪で、また格別の美しさがあります。昆虫たちは
ガガイモの大きな種を見つけ、
中に詰まっていたふわふわの綿毛に大喜び。この布団にくるまれば、寒い冬も
へっちゃらです。このガガイモというの、なかなか面白い植物です。夏の季語に
なっているくらい日本でもおなじみで、神話では、オオクニヌシノミコトを助け
るために、ガガイモの種を2つに割って作った船に乗りスクナヒコノミコト(一寸
法師の起源らしい)が天からやって来たことになっています。やなぎむらから古
代神話にまで空想が広がります。絵本は楽しいね。