ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ミスター・ケリーズの想い出

2023年05月27日 | 随想録

【Live Information】


 西梅田のジャズクラブ「ミスター・ケリーズ」が7月いっぱいで閉店するんだそうです。
 思わず「ええっ⁉️」です。


 1990年9月1日に開店して以来、今年が33年目。
 大阪駅から歩いて10分ほど、曽根崎新地の「ホテル・マイステイズプレミア堂島」の1階にあります。
 ちなみに、さらに徒歩で5分ほど南へ向かって渡辺橋を渡ると左手に建っているのが、大阪フェスティバルホールです。
 シカゴにあったジャズ・クラブ「ミスター・ケリーズ」が店名の由来だそうです。


 今は亡きトランペッターの奥田章三さんに「大阪に来ることがあったら寄ってよ」と声をかけていただいたのがきっかけで、時々行くようになりました。
 当時はその奥田さんがお店のプロデュースされていました。
 落ち着いた雰囲気の店内、関西のトップ・ミュージシャンはもちろん、国内外のミュージシャンの素晴らしい演奏を間近で見聞きできるぜいたくさ。
 出演者はもちろん、スタッフの方々もみな感じ良いし、料理も美味しくて、音楽を楽しむだけでなく、音楽を楽しみに外出したその夜そのものが思い出になるような、素敵なお店です。
 閉店するのを惜しむ方は、きっとたくさんいらっしゃることでしょう。


     


 当時は、よく「グレイビー・エイト」の出演日に大阪へ行ったものです。
 奥田さんや北野タダオ(piano)さん、宗清洋(trombone)さん、津田清(tenor sax)さん、古谷充(alto sax)さん、石田浩正(baritone sax)さん、村松泰治(bass)さん、中嶋俊夫(drums)さん。。。これら8人の錚々たる顔ぶれがそろっていた「グレイビー・エイト」が出演する夜は、いつも満席でした。
 たいていひとりでブラリとケリーズへ行ったものでしたが、そんな時は顔なじみの奥田さん、宗清さん、津田さんらが入れ替わり立ち替わり話の相手に来てくださって、いろんな話を聞かせてくださいました。
 とくに津田さんは、音楽をするうえで気をつけねばならないこと、ステージに対する気構えなど、たくさんの大事なことを、いつも厳しく、そして温かく教えてくださいました。閉店時間がきたら、そのまま近くあった梅田のドンショップへ行って始発まで付き合ってくださったり。


     


 ケリーズの入口に、オブジェのように置かれているコントラバスには忘れられない思い出があります。
 じつはぼくは、一度だけケリーズのステージに立ったことがありまして。
 時はまだ20世紀じゃなかったかな。
 当時はライブのあと、23時からだったか0時からだったか、ミッドナイトのステージがありました。
 ある夜、グレイビー・エイトの出演日だったと思うんですが、演奏が終わったあと津田さんと話をしていました。
 すると、そろそろミッドナイトが始まろうかという頃になって、突然津田さんが「どや、弾いてみるか?」と言い出したんです。
 え?いきなり?
 アウェイだしあんないい演奏のあとで自分みたいなヤツが・・・いいんだろうか
 思わず固まって「え?え?」と聴き返すと
 「弾いてみたいか、言うとんねん」
 「でででもがが楽器がありま
 「楽器なら店の入口にあるがな」
 「ぼぼぼぼくなんかがいいんで
 ここで津田さんがコワい顔で
 「弾きたいんかどうか聞いとんねん💢
 津田さん気が短い・・・😂
 ここで腹をくくって「ありがとうございます❗️行ってきます‼️
 「おぉ、勉強させてもろてこい」
 入口に置いてあるコントラバスを、スタッフの方が急遽お店の中に入れてくださいました。
 遅い時間だけど結構お客さんもおられたし、コントラバスの弦高も自分にはとても高くて、いろんな緊張の結果、手のひらといい脇の下といい冷や汗だらけになりながら、必死で弾いたものでした😅
 その時のピアニストさんは、今も活躍中の吉尾敬彦さんでした。
 演奏が終わって津田さんに「どうでした?」とおずおず尋ねると、ニヤッと笑って一言。
 「まだまだやな」
 ケリーズといえば、真っ先にこのことが思い出されます。


 20年以上前のスケジュール表、まだ取ってあります。
 自分が出演したわけでもないのに、なんだか捨てられないんですよね。
 やっぱりなくなるのは寂しいなあ。
 たくさんいい演奏を聴かせていただいて、今はもう「ありがとうございました❣️」しかありませんね。


 

 

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