ジェフ・ベックも気がつけばもう60歳を超えてるんですね。でも写真を見ると、とてもそんな歳だとは思えない若々しさです。相変わらずのジェフの姿を見ると、やはりうれしいものがあります。
ぼくはとくにジェフ・ベックのファンというわけではありませんが、それでも彼のアルバムの中には好きでよく聴いていたものが何枚もあります。その中の一枚が、「ベック、ボガート&アピス」です。
ティム・ボガート(Bass)とカーマイン・アピス(Drums)のコンビは、ヴァニラ・ファッジやカクタスを通じ、ロック界有数の強力なリズム・セクションとして活躍していました。ジェフは早くからこのふたりとのジョイントを考えていたようですね。
ベック、ボガート&アピス
ロックでのトリオ編成といえばギター、ベース、ドラムスというのが一般的です。1970年代までの主なロックのギター・トリオといえばクリーム、グランド・ファンク・レイルロード、ジミ・ヘンドリックス・エキスペリエンシスなどがあげられます。これらに共通しているのは、個々のソロ・プレイのスペースを大きく取っているところでしょう。
このアルバムに収められている曲は、歌モノとして楽しむこともできますが、やはりライヴにおいて充分にアドリブを行うことを目的としているものが多いみたいですね。
BB&Aというグループは、ベースとドラムスがアメリカ出身だから、というわけでもないのでしょうが、どちらかといえばサウンドにアメリカン・ロックっぽさが感じられます。スリー・ドッグ・ナイトのメンバーがゲストで参加していたり、スティーヴィー・ワンダーやカーティス・メイフィールドの曲を取り上げていたりするので、よりアメリカナイズされているような気がするのでしょうね。
このアルバムは、一部ではあまり評価が高くないらしいのですが、ぼくには、ブルース一辺倒だった頃と比べてサウンドが広がっているように感じるのです。
このアルバムで驚いたのは、やはりティム・ボガートのプレイです。ティムはすぐに、ジャック・ブルースと並ぶぼくのアイドルになりました。
初めてこのレコードを聴いた頃のロック・ベースは、そのほとんどが非常にベーシックなパターンだったので、ティムのプレイには驚きとともに憧れを抱いたものです。「黒猫の叫び」「迷信」などでのリフを生かしたメロディックなプレイや、卓越したテクニックをフルに発揮した「レディー」でのスピーディーなプレイは幾度となく繰り返して聴きました。
ただし、一緒にプレイしてみると、ジェフには、ティムの奔放なベース・ラインが「やりすぎ」にしか思えなくなっていったようですね。そのへんが、このトリオが早々に分解してしまった理由のひとつだったみたいです。
ぼくらの間でさえ、演奏上の「相性」ってなかなか難しいですからね。
◆ベック、ボガート&アピス/Beck Bogert & Appice
■歌・演奏
ベック、ボガート & アピス/Beck Bogert & Appice
■リリース
1973年2月
■プロデュース
ドン・ニックス/Don Nix ①⑧、ベック、ボガート & アピス/Beck Bogert & Appice ②~⑦⑨
■収録曲
[side-A]
1.黒猫の叫び/Black Cat Moan (Nix)
2.レディー/Lady (Appice, Beck, Bogert, Bogert, French, Hitchings)
3.オー・トゥ・ラヴ・ユー/Oh To Love You (Appice, Beck, Bogert, Bogert)
4.迷信/Superstition (Wonder)
[side-B]
5.スウィート・スウィート・サレンダー/Sweet Sweet Surrender (Nix)
6.ホワイ・シュッド・アイ・ケアー/Why Should I Care (Kennedy)
7.君に首ったけ/Lose Myself With You (Appice, Beck, Bogert, Bogert, French)
8.リヴィン・アローン/Livin' Alone (Appice, Beck, Bogert, Bogert)
9.アイム・ソー・プラウド/I'm So Proud (Curtis Mayfield)
■録音メンバー
☆ベック・ボガート&アピス
ジェフ・ベック/Jeff Beck (guitar, vocals, lead-vocals①)
ティム・ボガート/Tim Bogert (bass, vocals, lead-vocals④⑥⑦)
カーマイン・アピス/Carmine Appice (drums, vocals, lead-vocals②③⑤⑧⑨)
★ゲスト
デュアン・ヒッチングス/Duane Hitchings (piano, mellotron③)
ジム・グリーンスプーン/Jim Greenspoon (piano⑤)
ダニー・ハットン/Danny Hutton (backing-vocal⑤)
■チャート最高位
1973年週間チャート アメリカ(ビルボード)12位、イギリス28位、日本(オリコン)22位