ある音楽人的日乗

「音楽はまさに人生そのもの」。ジャズ・バー店主、認定心理カウンセラー、ベーシスト皆木秀樹のあれこれ

ローマの休日 (Roman Holiday)

2005年09月17日 | 映画


 映画の魅力のひとつは、観客を別世界に連れて行ってくれるところだと思うんですが、その意味では最高に魅力的な映画のひとつが「ローマの休日」です。
 公開から50年以上もたっているのに、ちっとも色あせていない、みずみずしい作品ですね。名作中の名作です。  


 とにかくオードリー・ヘップバーンが演じる「アーニャ」のなんて可憐で、愛らしいこと! 溌溂としていて、爽やかで、無邪気で。
 「アン王女」を演じている時は、わがままで、毅然としていて、高貴で、気品があって。
 もう、オードリーの魅力満載の作品ですね。
 とにかく、観ているうちに虜になってしまいました。
 

 

      
 新聞記者ジョー(G・ペック)、ジョーの友人アーヴィング、アーニャことアンの三人が巡る名所の数々も、映画の見どころと言えるでしょう。自分の部屋にいながら、ローマの雰囲気をたっぷりと味わうことができます。 
★サンタ・マリア・イン・コスメディン教会…有名な「真実の口」があります。ジョーのいたずらでびっくりするアーニャが、また愛らしい。 
★トレヴィの泉…アン王女が髪を切る美容室がこの泉の横にある、という設定です。映画では子供たちが噴水の中で遊んでいますが、現在は水の中に入ると罰金を取られるそうです。 
★セプティミウス凱旋門…ジョーが、道端で眠りこけているアン王女を見つけたところです。 
★スペイン広場…この映画で有名になった場所です。アイスクリームを食べるアンに、偶然の再会を装ったジョーが声をかける場面でしたね。 
★そのほか、コロッセオ、サン・ピエトロ寺院、サンタンジェロ城、ヴェネツィア広場、共和国広場、ブランカッチョ宮殿などを見ることができます。BRAVO!


 


 


 


 アーニャとジョーの掛け合いも、楽しい。 
 アーニャの、気の強さと素直さが同居しているところが、また可愛いんです。 
 市井に通じていて抜け目のないところがいかにも新聞記者らしいジョーですが、アメリカ人らしく陽気で、紳士で、何よりスマートですね。
 このふたりのやりとりが、なんとも愉快で微笑ましい。


 

        
 物語りの筋立ては明瞭で、エピソードも面白い。
 髪をカットしてもらうアーニャ、ベスパの二人乗り、ダンスパーティでの大立ち回りなど、有名なシーンがたくさん出てきます。 
 いつの間にか恋におちる二人ですが、アーニャはある刻限までには帰らねばならない。これは「シンデレラ」のバリエーションであると見ることができるかも。


 
 
             
 そしてなんといっても、別れ際のキスシーンと、クライマックスの記者会見のシーン。
 何度見ても感動します。 
 アン王女として記者会見に現れたアーニャは、ジョーとアーヴィングの姿を見た瞬間、さすがに少し動揺します。
 ジョーのまっすぐな眼差しが印象的です。
 きっと、新聞記者としてではなく、ジョー自身として一緒に過ごした自分の気持ちに悔いがないからでしょう。 
 アンは、記者団の「一番心に残った都市は?」の質問に、型通り答えようとします。ところが不意に晴れやかな顔つきになり、きっぱり答えるのです。
 「ローマです」と。 
 アンが記者たちと挨拶を交わす場面の、ジョーの振る舞いも小粋で洒落ていますね。そして、ジョーとの握手を終えた瞬間のアンの表情、胸を打たれます。二度と顔を見ることがないであろう寂しさに耐えているんでしょう。 
 最後にアンは、全員を見渡して満面の笑みを浮かべますが、それは何かを強く自分に言い聞かせているような、何かに踏ん切りをつけているかのような、そんな笑顔です。
 近づけば触れられる距離にいる二人なんですが、その間には、目に見えず、破ることのできない厳然とした隔たりがあるのがもどかしいです。


 

      
 最後までじっと会見場にたたずんでいたジョーの胸のうちは、ほんとうは彼にしかわからないのかもしれません。


 この物語の後日譚、どんなふうなんでしょうか。今だったら、王族と一市民が結婚することも珍しくないんですがねぇ。 このまま、というのは話としては美しいんですけれど・・・。
 自立した考えを持つアン王女ならば、自分の意思を通して欲しいなあ。
 でもジョーは、高貴な世界に自ら喜んで入るような人物には見えませんよね。
 むしろアンが、王族を離れてジョーの元にゆく、と考えた方が自然かもしれませんね。 


 ジョーの友人の気のいいカメラマン、アービングを演じたエディー・アルバートは、今年5月26日に亡くなりました。ご冥福をお祈りします。


 
 左からエディー・アルバート、オードリー・ヘップバーン、グレゴリー・ペック



◆ローマの休日/Roman Holiday  1953年アメリカ映画
  ■公開
    アメリカ1953年 日本1954年
  ■配給
    パラマウント映画
  ■監督
    ウィリアム・ワイラー
  ■脚本
    ダルトン・トランボ、イアン・マクレラン・ハンター、ジョン・ダイトン
  ■原案
    ダルトン・トランボ
  ■音楽
    ジョルジュ・オーリック、ヴィクター・ヤング
  ■撮影
    アンリ・アルカン、フランツ・F・プラナー
  ■出演
    グレゴリー・ペック (ジョー・ブラッドレー)
    オードリー・ヘップバーン (アン王女=アーニャ・スミス)
    エディ・アルバート (アービング・ラドヴィッチ)
    ハーコート・ウィリアムズ (大使)
    マーガレット・ローリングス (ヴェアバーグ伯爵夫人)
    パオロ・カルリーニ (理髪師マリオ・デラーニ)
    トゥリオ・カルミナティ (プロヴノ将軍)
    ハートリー・パワー (ヘネシー支局長)
    クローディオ・エルメリ (ジョヴァンニ)
    アルフレッド・リゾ (タクシー運転手)
    パオラ・ボルボニ (アパートの家政婦)
    ローラ・ソラリ (ヘネシー支局長の秘書)
    ゲレラ・ゴリ (靴屋)
                     ほか
  ■上映時間
    118分


コメント (4)
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