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鶴とちゅら

2018-03-19 23:01:59 | お芝居演劇
 1年鶴は演技が下手くそ。夏休みの時点で顧問に宣言されてたのでこれは陰口ではない。どれぐらい下手くそか詳細は割愛するが、土日の1日稽古の場合、2分に1回ダメが出る(演出コスモ談)として稽古が7時間、つまり420分、割る2で軽く…、100回は超える計算。演出だけでなく台詞忘れ、間を外す、気を失う、目が泳ぐ、芝居を自分の都合で止めるなどやらかした場合、横にいる先輩女優たちから「おまえ~!」なんて罵声が浴びせられ、これが30回、私生活における突っ込み「寝るな」「聞いてんの?」などが20回で合計150回程度のダメが彼女を襲うわけだ。
 考えてみてほしい。学生は教室で、社会人は職場で、1日150回のダメ出しをもらったらどうなるかを。おそらく3日で自害する。ところが鶴は今日のミーティングでこう言った。「部活楽しい…。」しょえ~~~~。あんだけダメ食らっても出来なくて楽しいのか。しかもこっち向いて演技では出来ない満面の笑顔で(笑えてるじゃん)。これは彼女がおかしな嗜好を持っているという訳ではない。

 演劇部には目的がある。いいものを創りたいのだ。お前、出来ねえからって排除してすむならとっくの昔に鶴はいない。僕たちの目標はいかに鶴を舞台に上げるかなのだ。だから諦めない。ぶち切れつつも出来ない彼女と向き合い続ける。だんだん、本当にゆっくりだんだん、鶴の出来ることが増えていく。出来なさを笑い飛ばす。突っ込む。許さない。
「鶴がいてくれるから、チーム力が上がってんだよ」 今日はそんなこと言ってみた。いや、出来ない鶴を甘やかすつもりなんて毛頭無いんだよ、僕もみんなも。でもチームにはいろんな奴がいていいんだと思った。

 もう一人、悩んでる女優さんがいる。ちゅら。もらった役が自分と違う。いつも足りないって言われる。自分でも分かってる。でもどうすればいいか分からない。だから、一歩前に出られない。演出に放置されるの地味な悪循環。目の前にはダメ出されのプロみたいな鶴がボコボコにやられてる。その後ろで静かに目立たないもんだから放置され続けるのだ。気がつけばいつまでたっても目立たないまま、変わらないまま。
 このまま誰にもダメ出されず引退してくのかい? とんでもない。ちゅらのハートはもっとずっと熱いんだから。改めて現実を突きつけられたちゅらの目から汁が出た、ちょっとだけ。
 分からないときは何も出来ない。これ普通。でも舞台では分からないとき何かしてみる。最低限ダメがもらえる程度。それが自分を変えるきっかけになる。暗闇の手探りに手を差し出したい仲間はちゃんといる。

 帰り道、バネットで二人を偶然追い越した。はじめは鶴。窓開けて「お疲れ!」って言ったら満面の笑みで「お疲れ様でしたぁ」が返ってきた。こいつは大丈夫。明日もボコボコにしてやる(笑)
 100メートルぐらい走ってちゅらに追いつく。「お疲れ!」って言ったらこっちも笑顔で「お疲れ様でした」が返ってきた。ん? まだ堅いぞって思った僕はちょっとだけいじめてみる。「明日は泣くなよ!」 途端に全身から恥ずかしさと負けん気が炎のように立ち上がるのが見えたのね。「泣きません!」その声は車道を飛び越え、バネットの運転席までちゃんと届いた。

こいつも大丈夫。明日こそボコボコにしてやる(笑)
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