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ベン・シャーン絵、アーサー・ビナード構成・文『ここが家だ ベン・シャーンの第五福竜丸』その2

2013-01-02 08:23:00 | ノンジャンル
 鶴田法男監督・脚本の'12年作品『POV~呪われたフィルム』をスカパーの日本映画専門チャンネルで見ました。「私たちはこの恐怖体験を上映することに、いまだに不安を感じています。この記録を多くの人にお伝えするのは、彼女の思うつぼになると思えるからでえす。特に本編終了後に語られることについては、皆さんだけの秘密にしてください。志田未来 川田春菜」「本作は、携帯電話向け番組『志田未来のそれだけは見ラいで!』の収録映像とメイキング映像を編集した作品である」という字幕で始まるこの映画は、1人称カメラだけで撮った『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の手法を使って撮られた映画で、音響効果で怖がらせるものでしたが、ラスト、赤いドレスの女の幽霊が出て来るのに、鶴田監督のこだわりを感じました。

 さて、昨日の続きです。
「医者は みんなの 病気を 『放射能病』とよんだ。 しかし かぜをひくのと ちがって その病気は ひとが つくった 爆弾が 原因だ。 遠くまで とばされる 放射能。」「みんなの 鼻の穴と 耳の穴と 爪のあいだ へそのごまの中にも 放射能は もぐりこんだ。 からだを じりじりと こわしていく。」「3月16日の朝 新聞の いちめんに のった。『邦人漁夫、ビキニ原爆実験に遭遇』『死の灰』『水爆か』 科学者たちが しらべようと 焼津に やってきた。 第五福竜丸の23人は 海で見たことを かたった。 マグロの からだに カツオの からだに サメのからだに 放射能が もぐりこんだ。 空高く とんだ 放射能は 雲を よごして 雨と いっしょに 畑の キャベツや ニンジンに ふった。 なにを 食べたら いいのか。」「23人の中で いちばんの せんぱいは 久保山愛吉だった。 第五福竜丸の 無線長で 焼津の 家には おくさんと かわいい むすめが 3人 かれを まっていた。 東京の 病院に はいった 久保山さんは 8月に 放射能病が きゅうに わるくなった。」「医者は かれを たすけようとし 久保山さんは 生きようとした。」「そして ひとびとは かんがえはじめた―― いっぺんに なん百万人も ころせる 爆弾を いったい どこで つかおうと いうのか。」「9月23日 久保山さんの 心臓は とまった。『原水爆の 被害者は わたしを 最後に してほしい』といって かれはなくなった。 ひとびとは わかってきた―― ビキニの海も 日本の海も アメリカの海も ぜんぶ つながっていること。 原水爆を どこで 爆発させても みんなが まきこまれる。」「『久保山さんのことを わすれない』と ひとびとは いった。 けれど わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる。」「ひとびとは 原水爆を なくそうと 動きだした。 けれど あたらしい 原水爆を つくって いつか つかおうと かんがえる ひとたちもいる。 実験は その後も 千回も 2千回も くりかえされている。」「わすれたころに またドドドーン! みんなの 家に 放射能の 雨がふる。」「どうして わすれられようか。 畑はおぼえている。」「波も うちよせて おぼえている。 ひとびとも わすれやしない。」
 「『久保山さんのことを わすれない』と ひとびとはいった。 けれど わすれるのを じっと まっている ひとたちもいる。」という文に、戦慄が走りました。また、「わすれたころに またドドドーン! みんなの 家に 放射能の 雨がふる。」というのは、まさに福島第一原発事故のことを予言していた訳で、東日本大震災の5年前に、ビナードさんは現在の日本の姿を、“既に見ていた”ことになります。ベン・シャーンさんはビナードさんのあとがき“石に刻む線”によると、1898年、リトアニアのコブノ生まれ。7歳のときに家族といっしょにアメリカに渡り、ブルックリンに住み着き、幼い頃から絵の才能に恵まれ、修行を積んだ後、'71年に『死刑台のメロディ』として映画化もされたサッコとヴァンゼッティ事件についての23点からなる連作の展覧会を1932年に開いてから、その才能を開花させ、終生、社会の語り部の役割を果たし続けたのだそうです。そのシャーンさんが最後の連作で取り組んだのが、第五福竜丸事件で、その無線長の久保山愛吉さんを主人公にして描いた“Lucky Dragon Series”の絵に、その連作以外の2点も加えて、この本が作られたということでした。シャーンさんの絵も本当に素晴らしいものなので、是非実際に絵本を手にしてお読みください。公共図書館でも借りられると思います。

 →Nature LIfe(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto