読書感想文15 ~制服捜査~

2009-06-27 20:50:59 | 
佐々木譲氏の作品は、初めて読みました。

きっかけは氏の作品『警官の血』を書店で見かけたことです。
ビンビンと琴線に触れるタイトルに興味を持って、
手に取ろうかと思ったのですが、
氏の作品の金字塔のように宣伝された作品だったので、
これより前に書かれた作品を一読しておきたいと思い、
なんとなく『制服捜査』を手に取ったのでした。

北海道の田舎町を舞台に、駐在勤務の川久保巡査部長を主人公とする短編集です。
密閉された田舎社会、暗躍する地元の実力者、その中で隠蔽される事件の数々。
どの短編も、田舎独特の閉塞感の中で、
かつて強行犯係に所属した川久保の活躍が丁寧に描かれています。

田舎町という異種独特の社会構造に巣食う隠蔽主義。
それは事件を起こさないという自治ではなく、
事件にしない、もしくは事件を表沙汰にしないための自治なのです。
そんな社会と川久保が対峙するわけですが、
胸のすくようなスカッとした話ばかりではありません。
むしろ、そんなハッピーエンドはほとんどなく、
どの短編も、どこか心にしこりが残ってしまう、現実的な結末です。
駐在勤務という【捜査】する立場でない川久保が、
腐った捜査しかできない捜査本部や、
事なかれ主義の地元有力者の圧力に屈することなく、
彼なりの正義を通そうとする姿は、共感を呼びます。

警察小説を読みたい、という場合はちょっとNGかも知れませんが、
ちょっと変化のある硬質な警察小説として、かなり楽しめる部類の作品だと思います。

現在、氏の作品『笑う警官』を読んでいるところです。
この作品には続編があるので、
それを読み終えれば、いよいよ本丸の『警官の血』に突入です。
楽しみ、楽しみ。
では。