マキペディア(発行人・牧野紀之)

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失業しにくい協同組合、モンドラゴン

2018年06月04日 | マ行
     
 スペイン北部バスク地方にある労働者協同組合の企業グループ「モンドラゴン・コーポレーション」。雇用の維持を重視し、従業員の給与格差に制限を設けて最大6倍に抑えるなど「職場での人間らしさ」を理念にした経営を貫く。経済格差が広がる欧州で注目され、その哲学を取り入れようとする動きが出ている。

モンドラゴンは、従業員約7万4000人を抱える協同組合形態の企業グループ。1956年に最初の協同組合ができ、事業を次々と拡人。今では工作機械や自動車部品の製造から小売業や銀行業、大学運営まで広げ、計102の協同組合と計140の海外子会社を持つ。2016年の全体の売上高は約120億ユーロ(約1兆6千億円)で、スペイン企業ではトップ10に入る。

協同組合は、従業員である組合員の出資で成り立つ。組合員になるには1万5000ユーロ(約200万円)ほどの出資金が必要で、元手がない人は給料から分割で支払う。出資金は勤め先の企業の利益に応じて積み増されるが、倒産すれば失うおそれもある。

 モンドラゴンが注目されるのは「働き手の尊重」にある。各企業はそれぞれ独立経営だが、グループ内の失業者には、余裕のある企業が必ず手を差し伸べることが決まりだ。余裕がなければ賃下げで痛みを分け合い、雇用を確保する。

 太陽光発電パネルの生産装置などを手がけるモンドラゴン・アセンブリーで営業を担当するイゴール・エラルテさん(40)もその一人だ。勤め先のグループ内の家電メーカー、ファゴール家電が13年秋に倒産したが、2ヵ月後に今の仕事が決まった。同じく失業した妻(41)も出産や子育てを経て今年2月にグループ内の別の企業で働き出した。「倒産しても路頭に迷う心配は全くなかった」とエラルテさん。ファゴール家電の従業員約1900人のうち、早期退職者を除き、希望者のほぼすべてがグループ内で再就職したという。

 こうした取り組みは欧州企業で解雇が相次いだユーロ危機の時も関心が集まった。最近は英国の国際NGO「オックスファム」が所得格差の報告書で取り上げるなど、格差是正の面でも注目されている。

 モンドラゴンの企巣では原則として、従業員の最高と最低の給与格差は最大6倍と定めている。ロンドンの主要株式市場に上場する主要100社の最高経営責任者(CEO)と従業員平均の給与格差は約130倍で、違いは鮮明だ。グループ企業の代表者らでつくる理事会トップのイニゴ・ウシンさんは「6倍ルールは、従業員の連帯を保つうえで重要なことだ」と話す。

 格差問題が課題になる英国ではモンドラゴンをモデルに協同組合の企業グループをつくろうという動きも出始めた。英中部プレストンでは昨年、市議会メンバーや大学などが連携して「協同組合開発ネットワーク」を立ち上げた。ネットワーク代表でセントラル・ランカシャー大のジュリアン・マンレイ研究員は「地域の中で支え合うモンドラゴンのようなグループをつくり、地域経済の再生につなげたい」と話す。

 ただ、協同組合もすべてバラ色ではない。組合員になる以上は勤務先と運命共同体でもある。

 モンドラゴンの地元では、ファゴール家電の元組合員が毎週、倒産前に追加出資したお金の返還を求めて抗議デモを続ける。「会社側は経営は大丈夫と言っていたのに、だまされた気分だ」と元組合員のミケル・オラベさん(69)。モンドラゴンを相手取り、出資金の一部の返還を求める集団訴訟を起こすという。組合員と経営をめぐるリスクをいかに共有するかの課題も浮き彫りになっている。(モンドラゴン=寺西和男。朝日2018年5月5日)

感想

1、封建制社会から資本主義が出てくるには、経済的に、あるいは経営的に資本主義的な経営が「事実上」生まれて、それが大きくなり、社会の「主たる形態」(唯一の形態ではない)に成っていったからでした。それに反して、社会主義的生産方法は資本主義社会の中で少しずつ出てきて、大きくなって、最後には「主流」に成る、というのではなく、社会主義を奉ずる政党が政治権力を握って、一気に私的所有を廃止し、全体を社会主義的「計画経済」に変える、と考えられてきました。

 しかし、資本主義社会の中では経営の自由がありますから、個々の会社が社会主義的経営をして成功し、その「模範の力で」他の会社が追随して、それが広がり、社会の主流に成るというやり方は、なぜ考えられないのでしょうか。原理的には可能ではないでしょうか。現に、我が日本国においても「ワーカーズコレクティヴ」とかいう社会主義的な会社があるのではないでしょうか。ただ、それが大きくならず、他に対して影響を与えることが出来ていないだけではないでしょうか。

2、ここで紹介されていますモンドラゴンは相当大きな組織のようですが、やはりスペイン社会の「主流」には成っていないようですし、自分たちの政党を持ってもいないようですし、最近のカタローニャ州の独立やその他の問題では存在感を示していないようです(推測ですから、間違っていたら、誰か本当の事を教えてください)。

3、最近、NHKのテレビで「世界プリンス・プリンセス物語」とかいう番組がありました。モロッコとかベルギーとかイギリスとかリヒテンシュタインとかドバイとかで、プリンセスあるいはプリンスが優れたリーダーシップを発揮して、自国を発展させている例が紹介されていました。

 司会者の池上さんは「君主制というと直ちに民主的でないから悪いというイメージを持ちがちだが、民主制の国では争いが絶えず、国が混乱している例も多いのに反して、これらの国では君主制だからこそかえって内容的には民主的な政治が行われている、あるいは民主化しつつある、という事実を見ると、民主主義についてももう1度考えてみる必要もあるのではないか」といった趣旨(牧野が相当「忖度」しましたので、池上さんの実際の言葉とはかなり違っています)の事を述べていました。

 ホッブズの「リバイアサン」も、「一般意思」は「万人の意思」とは必ずしも一致しないという経験に基づいて、自然法が実行されるには必ずしも民主制でなければならないということはなく、「リバイアサン」的な独裁者が必要ではないか、という趣旨だったと思います。私はそう取りました。

 平成天皇と皇后については多くの国民が、いや、ほとんどの国民が支持と尊敬の念を持っていると思います。少なくとも、大多数の国民は、歴代の総理大臣よりは平成天皇の方が偉い、と思っているのではないでしょうか。日本の憲法は天皇に政治的行為を禁じていますから、それはできませんが、最近の政治の混乱と、それにも拘わらず安倍自民党に代わる政治勢力が出てこない状況を見ますと、一時的にでも天皇に主権を渡したらどうかと、考えてしまいます。

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