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天下り(01、天下りは例外なく禁止せよ)

2009年08月17日 | ア行
           ジャーナリスト・若林亜紀さん

 私はかつて中央省庁から「天下り」を受け入れる団体で10年間働き、湯水のような税金の浪費を目の当たりにしてきました。

 理事長に天下りしてきた元次官は、毎月のように海外旅行に出かけました。視察と称して観光、グルメにショッピング。時には、本省から呼んで部長に据えたお気に入りの女性も同伴です。飛行機はファーストクラス、ホテルは五つ星。彼は7年間で延べ73ヵ国へ行き、旅費の繚額は3億円でした。

 こんな無駄遣いが続けば国がつぶれてしまう。そう思って2001年に退職し、ジャーナリストになったのです。その後の取材でも、海外視察は減ったようですが、高給で天下ってくる官僚の数はむしろ増えた。天下り団体には、業務の発注や補助金で年に12兆円の公金が投じられ、その多くは無駄に使われているのです。

 衆院選のマニフェストを見ると、各党とも天下りの廃止や根絶を掲げています。しかし、よく読むと「原則」というような官僚言葉を付けて逃げている。官僚たちは安心しているはずです。

 私なら「例外なき天下り禁止」を掲げたい。天下りを受け入れた団体・企業には、国の補助金や事業の発注を一切やめる。どうしても官僚OBを雇いたいのなら、補助金や受注がゼロでよければご自由に、です。

 「例外なき禁止」の代わりに、65歳までの雇用は進めるべきでしょう。それでも給料は引き下げます。国家公務員の給料の実支給額を計算したところ、2006年度は諸手当を含め平均814万円でした。民間だと資本金10億円以上の企業の平均が616万円。大企業と同程度まで下げてもよいのではないでしょうか。

 日本の政治は、ずっと「官僚内閣制」でした。政権は官僚の手のひらの上で動いてきた。議員の中には、国会での質問づくりを官僚に頼んでくる人もいるぐらいです。でも、官僚たちの無駄遣いは国民に知れ渡りました。今回の総選挙で選ばれる議員たちには「今度こそ中身のある改革を」と期待しています。

   (朝日、2009年08月10日。聞き手 本山秀樹)

 メモ

 20O6~08年に中央省庁が課長・企画官級以上の退職者に天下り先をあっせんした数は1901件。所管省庁OBが公益法人の幹部職など特定のポスト(指定ポスト)に天下る例は338法人で422もある。