- 松永史談会 -

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「内包」「外延」? 高島平三郎「師範学校教科用書・心理綱要」、明治26

2013年08月28日 | 教養(Culture)
高島平三郎29歳のときに上梓された最初期の著書だ。この「師範学校教科用書・心理綱要」国会図書館のデジタル図書として閲覧可能だ。


「概念の性質」として内包(intension)と外延(extension)とをあげている。わたしはバルト記号学の翻訳書の中で これらの語(connotation/denotation)を知り、以前は好んで使っていたものだが、明治前半期には、むろん意味合いに時代的な違いがあるかもしれないが、すでに流通していた言葉(翻訳語)だったとは。
 西周の訳語;外延extension、内包comprehension, intension

内包的意味・外延的意味 connotative meaning・denotative meaning

 [ I ] 言語学,言語心理学においては, 外延的意味は,文脈や状況から独立した概念的,辞書的,明示的意味を指す。たとえば,「母」は,{女性,一世代上,直系,..}という意味特徴からなる。内包的意味は情緒的(affective),連想的,含意的,暗示的意味であり,言語文化,個人のイメージや経験に依拠する。たとえば,「母」に対して,{やさしい,愛情深い,...}等の意味特徴があるが,必要不可欠の特徴ではない。しかし,「母のような愛」といった比喩表現は内包的意味に依拠する。外延的意味は分類法,内包的意味はセマンティック・ディファレンシャル法,連想法で測定できる。

 [Ⅱ] 論理学,認知心理学においては,外延は,概念に包括される指示対象を指す。したがって,内包によって決定される。一方,内包は概念内容を指す。外延から共通性を帰納することによって決定される。たとえば,「哺乳類」の外延は{ヒト,ウマ,...}などの個々の事例,内包は{胎生,肺呼吸,...}などの定義的(defining)あるいは特徴的(charactaristic)特徴である。


高島は明治20年に東京に転居し東京高等師範学校の教授掛補助に就任するのだが、その後の猛勉強の跡が好く感じられる内容的にもなかなかの教科書だ。


この本は心理漫筆とともに高島平三郎著作集・第一巻に所収されている。

100年以上も前の本だが、手垢のついていない、よほどの勉強嫌いが購入したか、ほとんど保存状態のよい古書だ。





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