- 松永史談会 -

   こんにちは。ご機嫌如何ですか。

『山本瀧之助全集』の元版・復刻版の印刷状態の比較

2015年02月25日 | 教養(Culture)
山本瀧之助(一八七三~一九三一年)を”青年団運動の母”にしたのは内務官僚田澤 義鋪(よしはる)らだった。田澤は内務官僚丸山鶴吉の知己であり、青年団結成の必要性を説いて全国遊説(出前授業or講演活動)していた山本を「青年団運動の母(先覚者)」として敬意を払った人物だった。山本の死後、彼の著作集を熊谷辰治郎編として​​山​本​瀧​之​助​氏​功​労​顕​頌​会より出したのも田澤の助力の賜物だったろ。
山本の顕彰碑が故郷に建立されているが、その建設にも、名義上、田澤と丸山が大きく関与していた(中心的に関わったのは村田露月)
山本瀧之助の著書は十数作品あるが、『山本瀧之助全集』にはそのうち、『田舎青年』『地方青年団体』『模範日』『早起』『尐年団研究』『一日一善』『青年修養着手の個所』『幹部の修養』など11冊を収録。

これら山本の著書の多くを出版面で支援したのは同郷の河本亀之助(東京・洛陽堂経営者)だった。

復刻版が(近代社会教育史料集成, 2)日本青年館, 1985.12として不二出版から刊行されている。この復刻版と昭和6年刊の元版を印刷状態を比較してみると・・・・・





復刻版では掲載写真を元版よりコントラストを大きくし、シャープネスを強調気味。相当に画質が劣化


肝心の活字部分は復刻版では普通にかすれている。国書刊行会はよいが不二出版などはこの程度。状態の良い元版を入手し、経費はかかるが改装(製本しなおす)のがよいかもしれない。元版の古書価格は現在1.5-2.0万、改装には神奈川県の三栄社(技術的にはナイス)の場合2万程度かかる。


山本はライターとしても中々の人だったが、「青年団運動の母」(まともな学校教育が受けられない農村青年たちの啓蒙活動=社会教育活動の先導者)という形で祭り上げられた部分もあり、山本自身が危惧していたように、大正3年段階には国家主義的に再編成されていたプロシアの青年団運動の実情に明るかった田中義一らの路線(青年団・青年教育運動を徴兵制導入に利用する路線)に引き込まれ大正-昭和初年の国策に沿った形で動いている。日露戦争後、地方改良・国民感化事業が開始される訳だが、この時期には山本タイプの”伝道師”(説教師or講演活動家ら)は宗教家・社会主義者・農民啓蒙家など多士済々だった。
長志珠絵「青年団イデオローグ山本瀧之助に関する一考察」、歴史評論494,1991,15-42頁など読んでも、私的には山本に関してなんの感慨も湧かなかった。わたしが山本に興味を覚えるとしたら居村の民俗誌的記述に関する部分限定かな~。

コメント

大串隆吉「農村青年会運動発生に関する一考察ー徳富蘇峰と山本瀧之助を巡ってー

2015年02月18日 | 教養(Culture)
まあたいした論文ではないが、こんなものが見つかった。
山本瀧之助が福沢諭吉と徳富蘇峰の影響の下、青年会運動のイデオローグになったと言う話はアカデミズムの人間を納得させるのに好都合な筋書き。浅知恵だな~と思う。



田舎青年の教育の重要性を指摘した。また「青年会を設くべし」と全国を巡講して実際を指導、各地の青年団の結成及び全国的な組織化に尽力。これらの活動は日本青年館の建設、大日本連合青年団結成を促した。山本の長年の功労に報いるため、財団法人日本青年館に設けられた顕頌会によって死後まもなく『山本滝之助全集』が刊行されている。

日本青年館の設立や山本瀧之助=「青年会運動の生みの親」イメージの醸成はひとえに内務官僚田澤義鋪や丸山鶴吉らの尽力によるところ大。
青年会運動の伝道行商家山本をこの方面でのイデオローグとして偉人化したのはこう言ったら罰が当たるやもしれぬが「担ぎ屋」丸山による演出の見事さの結果という一面を看過すべきではない。

広島県沼隈郡神村栄光誌
この古書はさいきんまで広島の「あき書房」で¥30000で売り出されていた(あき書房の売出し本は現在わたしの手元にある。改装が非必要だ)。あまりの朽ち損じ状況に購入はしなかったが、昨日問い合わせたら売れたとか。多分、神村在住の郷土史家が入手したのだろ。
昨年神村の岡田久司宅で見かけたものも昨日電話したら行方不明のようだ。岡田はこの古書が随分、高額で売り買いされているといった風のことを言ったので、購入した郷土史家(高齢者)はBだと思う。

この本は神村青年団発足の契機と高島平三郎のアドバイスの中身に言及している。
コメント